ヒートアイランド現象の緩和が期待される屋上緑化、壁面緑化

2003年開業の、大阪にある大型複合施設「なんばパークス」の庭園「パークスガーデン」。面積はガーデン全体で約11,500m2、うち緑地は約5,300m2と、商業施設の屋上としては国内最大級の規模である。樹木や草花などを含め、約500種類以上の植物が植えられている2003年開業の、大阪にある大型複合施設「なんばパークス」の庭園「パークスガーデン」。面積はガーデン全体で約11,500m2、うち緑地は約5,300m2と、商業施設の屋上としては国内最大級の規模である。樹木や草花などを含め、約500種類以上の植物が植えられている

2016年8月9日、国土交通省は、「平成27年全国屋上・壁面緑化施工実績調査」の結果報告を発表した。
屋上緑化と聞いて、身近なデパートや商業施設にある屋上庭園をいくつか思い浮かべる人も多いのではないだろうか。買い物に疲れたときにひと休みしたり、子供と一緒に遊んだりと、緑のある空間は私たちに癒しを与えてくれるが、それ以外にもさまざまな効果が期待されている。
都市部において気温が上昇する「ヒートアイランド現象」に屋上緑化は有効であるとされており、また、空気の浄化や屋上の断熱効果は省エネルギー化にも役立っているようだ。

東京都は、こういった効果を期待し屋上緑化を促進しようと、2001年に「東京における自然の保護と回復に関する条例」を公布している。敷地面積1000m2以上(国、および地方公共団体が有する敷地は250m2以上)の施設を新築・改築する際は、一定基準の緑化が義務化されているのだ。2006年には兵庫県や大阪府、京都府、埼玉県でも同様の条例が公布された。

条例の影響もあり、屋上緑化・壁面緑化は増加傾向にある。平成27年にはどれほど進んだのか、国交省の調査結果を見てみよう。

屋上緑化は東京ドーム約3.7個分、壁面は約1.2個分

平成27年に屋上緑化された面積は約17.6ヘクタール、壁面緑化は約5.5ヘクタールだった。東京ドームで換算すると、屋上緑化でおおよそ3.7個分、壁面緑化は約1.2個分創出されたことになる。(東京ドームは約4.7ヘクタール)

植栽のタイプ別に屋上緑化のストック量(累計面積)を見ると、平成27年末のストック量は、「庭園型の植栽(複合植栽)」が約122万m2(約28%)と最も大きい結果となった。次にセダム(多肉植物)主体が20%となっている。

庭園型の植栽が多く整備されている理由について、国土交通省は、「施設へのテナントの入居の増加、住居への入居者増加や施設利用の促進など、屋上緑化空間の活用による施設への様々な効果が期待されていると考えられる」としている。

主な植栽タイプ別の屋上緑化施工面積より、平成27年度の種類別面積を抜粋して作成主な植栽タイプ別の屋上緑化施工面積より、平成27年度の種類別面積を抜粋して作成

2015年の屋上緑化は大幅減、壁面緑化もやや減少

調査が開始された平成12年から27年の16年間の累計で、緑化された面積は、屋上緑化は約433.8ヘクタール、壁面緑化は約74.0ヘクタールであった。※平成26年、27年の屋上緑化、壁面緑化のデータは暫定値

年々、累計面積は増加しているものの、平成27年の新たな屋上緑化面積は約17.6ヘクタールと、前年の約28.6ヘクタールと比較し大幅に減少している。壁面緑化の面積についても、平成27年は約5.5ヘクタールで、平成26年の約5.6ヘクタールをわずかに下回る結果となった。

緑化が減少傾向にある背景として考えられるのが、建築着工数の減少である。屋上緑化、壁面緑化ともに、新設物件で多く施工される傾向にある。建築着工数は、平成21年以降増加しているが、平成25年から減少。屋上緑化の施工件数は、平成21年から平成24年まで増加したものの、平成25年、平成27年と減少している。特に、平成27年の減少幅は前年度の35.8%と大きい。壁面緑化の施工件数は、平成21年から平成23年まで増加したものの、その後減少傾向にある。

屋上緑化と壁面緑化の施工面積の8割ほどが新設物件における施行であることから、建築着工数の減少の影響により新しく緑化される面積が減少しているものと思われる。

屋上緑化・壁面緑化の施工件数と建築着工数との関係屋上緑化・壁面緑化の施工件数と建築着工数との関係

屋上緑化の面積は上位5都道府県で全体の76%を占める

屋上緑化の状況を地域別にみると、平成27年の屋上緑化面積の約40%を東京都が占めている。緑化面積の上位5都府県(東京、愛知、大阪、神奈川、埼玉)で全体の約76%を占めた。壁面緑化も同様の傾向で東京都が約42%、東京、神奈川、愛知、兵庫、埼玉で全体の約81%を占める結果となった。

国土交通省は、屋上緑化の好例として東急プラザ表参道原宿「おもはらの森」を挙げている。こんもりした森のような景観が特徴的で、緑化空間はカフェを併設している。庭園に魅力があるからこそカフェも賑わい、また下層階のテナントへの集客効果も発揮しているという。

商業施設の屋上庭園は、貸し菜園の提供や、子どもが遊べる設備のあるキッズスペースを設置したり、イベントを実施したりと、提供するサービスも多様化している。昭和30~40年代に多く見られた百貨店の屋上遊園地も、今はあまり見かけることがなくなった。少子化や娯楽の多様化もあり、屋上での過ごし方も変化を遂げているのだろう。

なお、屋上緑化は個人宅向けに独自に助成制度を設けている地方自治体がある。自宅の屋上や壁面を緑化したいと考えている人は、一度調べてみるといいだろう。

都道府県別屋上緑化・壁面緑化の施工実績の動向 屋上緑化施工面積割合都道府県別屋上緑化・壁面緑化の施工実績の動向 屋上緑化施工面積割合

全国屋上・壁面緑化施工実績調査の概要

<全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果報告>
調査方法:郵送によるアンケート調査
調査対象企業:全国の造園建設会社や総合建設会社
屋上・壁面緑化関連資材メーカーなど計489社
回答回収状況:回収236社(回収率48.3%)

配信元ページを見る

2016年 09月11日 11時03分