金利タイプは変動型が減少、全期間固定型の利用割合が増加

住宅金融支援機構が2015年9月に発表した「民間住宅ローン利用者の実態調査」の「フラット35利用者編」に引き続き、今回は「民間住宅ローン利用者編」。
民間住宅ローン(フラット35含む)を選択した人はどの金利タイプを選択し、今後の金利の変動はどうなると考えたのだろうか?まずは選択した金利タイプから見てみる。

前回調査と比較して、「全期間固定型」の利用割合は38.0%で増加し(前回:27.1%)、「変動型」は35.8%と減少(前回:41.7%)、「固定期間選択型」も26.3%と減少(前回:31.3%)となった。
今回調査で減少した「変動型」は50歳代以外の年代(20代・30代・40代)全てで利用割合が減少した。50歳代のみ前回の32.2%から39.0%に増加しているが、年齢から推測して返済期間を10~15年程度と短い期間で設定し、金利が低いうちに完済する計画でローンを組んだ可能性がある。

なお、選択した金利タイプを年収別(※)に見ると「全期間固定型」は、全ての年収層で増加。「変動型」は、年収400万円以下の層で前回の36.9%から37.6%と微増ではあるものの増加した。それ以外の、401万円以上の年収層では全て減少となった。
※年収のレンジは400万円以下、401~600万円、601~800万円、801~1000万円、1001~1500万円、1500万円超


住宅金融支援機構「民間住宅ローン利用者の実態調査」<br>民間住宅ローン利用者編を参照して作成 
金利タイプ別利用状況住宅金融支援機構「民間住宅ローン利用者の実態調査」
民間住宅ローン利用者編を参照して作成 金利タイプ別利用状況

金利が上昇したときの対応は「検討がつかない」が変動型で24.1%

住宅ローンを組む時にやはり一番気にかかるのは金利が今後上昇するのかどうかという点だろう。金利についてはどういった回答が多かったのだろうか。

今後1年間の住宅ローン金利見通しは、全体では「ほとんど変わらない」が50.6%、前回の55.2%と比較し減少した。
「現状よりも上昇する」と回答した人は前回調査と比較して、「全期間固定型」31.9%と減少し(前回:42.6%)、「固定期間選択型」は33.6%と増加(前回:30.57%)、「変動型」も26.3%と増加(前回:21.7%)となった。

金利上昇時にリスクの発生する変動型と固定期間選択型を選択した人のうち、金利が「現状よりも上昇する」と考えている人の割合が増えていることが気にかかる。

では実際に金利リスクを把握したうえで金利タイプは選択されたのだろか?

返済中に金利変動の可能性がある「固定期間選択型」と「変動型」を利用した人に住宅ローンの特性や金利リスクへの理解度について聞いたところ、「理解しているか不安」または「よく(全く)理解していない」との回答が合わせて約4割から5割を占める結果となった。

特に「理解しているか不安」または「よく(全く)理解していない」と回答した割合の高かった内容は、「将来の金利上昇に伴う返済額増加の対応策」だった。
「固定期間選択型」で「理解しているか不安」が37.0%、「よく理解していない」が10.6%、「全く理解していない」が3.0%だった。
変動型は「理解しているか不安」が36.6%、「よく理解していない」が10.8%、「全く理解していない」が3.9%と「固定期間選択型」と近しい結果となっている。

住宅ローンの商品特性や金利リスクへの理解度(固定期間選択型・変動型利用者)<br>
固定期間選択型n=265 変動型n=361<br>将来の金利上昇に伴う返済額増加の対応策住宅ローンの商品特性や金利リスクへの理解度(固定期間選択型・変動型利用者)
固定期間選択型n=265 変動型n=361
将来の金利上昇に伴う返済額増加の対応策

固定期間選択型・変動型を選択して金利が上昇したらどうする?

住宅ローンを選択するときは、とかく金利が低いものに目が行きがちになってしまうが、固定期間選択型や変動型を利用した人は、金利が上昇したらどう対応する予定なのだろうか?

金利上昇に伴う返済額増加への対応については、「金利負担が大きくなれば、全額完済する」が「固定期間選択型」で26.0%と増加した一方、「見当がつかない、わからない」は、変動型で24.1%と増加した。
金利が上昇した際には借り換える、完済する、一部繰り上げ返済する、そもそも資金に余力があり返済の継続が可能などの回答をした人が固定期間選択型で86.4%、変動型で75.4%おり、それぞれ固定期間選択型や変動型のデメリットも理解しリスクへの対応方法も検討したうえでの選択であったことが分かる。

一般的な変動型のプランは、5年間は返済額が一定だが、半年ごとに金利の見直しが発生する。例えば、金利上昇により返済額が10万円から15万円となったとしても、見直しがされる返済額はもともとの返済額の上限1.25倍という上限規制がついているのが一般的なので、最大で12.5万円まで上がる可能性がある。
またその5年後の見直しのタイミングで金利が上がった場合は、さらに12.5万円の1.25倍である15万6250円が返済額の上限となる。
その結果、支払に利息が占める割合が大きくなり、返しても返しても借入残高がなかなか減らず、場合によっては返済額を超える未払い利息が発生するケースもありえる。

固定期間選択型の場合は返済中に金利が低下したとしても、固定期間中は借入金利の見直しがないため、返済額が減ることはない。固定期間終了後は契約したローンの条件次第ではあるが変動金利か固定金利かを選択することになる。ただしそのタイミングで変動、固定ともに金利が上昇している可能性がある。

金利が上昇した場合は利息をいかに支払わずに済ますかがポイントとなり、資金に余力があれば可能な限り繰り上げ返済で元本を減らし総利息を軽減させる方法が望ましい。
借換えという方法もあるが、変動型から固定金利に借り換えようとする場合は、金利変動のタイミングに注意したい。
固定金利の住宅ローンは将来の物価上昇率や経済の状況などの影響を反映しやすく、変動型の金利より先に上下の変化が起きやすい。
変動金利で借りていて、いざ金利が上昇したら固定に借り換えようと思っていると、すでに固定金利は自身の返済可能な上限を超えるほど上がってしまっていたということもありえる。

固定金利は借入後に金利が低下してもその恩恵をうけることが出来ないが、変動型、固定期間選択型は返済額が減少するメリットがある。当然メリットがあればデメリットもあるわけで、それについてもよく理解しリスクに対する対応策も考えたうえで金利タイプを選択したい。

金利上昇に伴う返済額増加への対応(固定期間選択型・変動型の利用者)<br>
固定期間選択型n=265 変動型n=361金利上昇に伴う返済額増加への対応(固定期間選択型・変動型の利用者)
固定期間選択型n=265 変動型n=361

調査概要

調査方法:インターネット調査
調査対象:民間住宅ローン利用者n=1,009
・2015年3月から2015年6月までに民間住宅ローンの借り入れをされた方
・全国の20歳以上60歳未満の方(学生の方及び無職の方を除く)
調査時期:2015年3月~2015年6月

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