共同管理、共同利用で不動産を使う「セカンドハウスシェア」

現在住んでいるまち以外に住んでみたい、大好きなまちで生活してみたい、月に何度も仕事で訪れるならホテルではなく自宅を借りて寛ぎたい、荷物を置いておきたいその他、いろいろな理由から我が家以外の場所で暮らしたいというニーズが高まっている。

だが、セカンドハウスを買うとなるとそれなりの費用が必要だし、もし、買った後に「ここじゃない」となったら困る。賃貸で借りるにしても契約には初期費用が必要で、一般的な賃貸借契約で借りると2年間などある程度の期間借り続けなくてはいけないこともあり、退去時には原状回復が求められる。

それよりももっとお試しで気軽に借りられる手があればと始まったのが建物所有者と入居者が全員で共同管理・共同利用をしながら不動産を使う、旅館、民泊でもないという使い方。セカンドハウスシェアという新しい手である。

セカンドハウスを借りるならその土地らしい物件と思う人もいるだろう。京都ではこんな部屋を借りられる(写真提供/株式会社SuiTTe)セカンドハウスを借りるならその土地らしい物件と思う人もいるだろう。京都ではこんな部屋を借りられる(写真提供/株式会社SuiTTe)

5年間の構想を経て試行錯誤しながら仕組みを生み出してきたのは、株式会社八清の代表の西村直己さんと弟で弁護士の西村啓さん。

株式会社八清は京都で1956(昭和31)年に創業、京町家の再生で知られた不動産会社である。八清の兄弟会社である株式会社SuiTTeのプラットフォーム事業としてシステム開発を行い、八清が再生した京町家で手探りで運営を行い、事業としての可能性を探って来たそうだ。幸い、京都は一度は住んでみたい人が多い、観光で訪れる人も多いまちであるのはご存知の通り。実験の場としてはうってつけである。

「他のまちに住んでみたいニーズの一方で私たちを通じて京都にセカンドハウスを取得したものの、それほど頻繁に使っているわけではないので使っていない時には貸したいというニーズもあります。であれば、その2つのニーズを一度に満たせる仕組みはないかと考えたのが私たちが進めているセカンドハウスシェアです」と株式会社八清と株式会社SuiTTeの両代表を務める西村直己さん。

時間で不動産をシェアする「セカンドハウスシェア」の考え方

自分が使っていない時に貸すというやり方で思いつくのは旅館業、あるいは民泊というやり方だが、セカンドハウスシェアはそのいずれでもない。この2種類のやり方で貸そうとすると地域によっては制限があったり、日数が限定される、近隣の理解が得られないなどの障壁もあり、所有者にとってはなかなか貸しにくい。借りる側にとっても既存と同じ仕組みの場所に泊まるのでは「我が家」にはならない。

「それ以外にマンスリーという月単位で貸すやり方もあり、弊社でもセカンドハウスの貸し方のひとつとしてマンスリーもやっています。でも、この場合、貸す期間が1ケ月と長くなってしまい、長期休暇の取りにくい日本ではあまり使い勝手がよくありません。実際の利用者も長期出張で使う方が多く、好まれるのはマンション、ホテルのような部屋。私たちが多く手掛けている戸建てで暮らしを楽しむという使い方にはなかなかなりにくいのが現状。そこで違う仕組みがないかと考えて生まれたのが現行のセカンドハウスシェアです」

セカンドハウスシェアでは一般的なシェアハウス同様、家具・家電は備えられている(写真提供/株式会社SuiTTe)セカンドハウスシェアでは一般的なシェアハウス同様、家具・家電は備えられている(写真提供/株式会社SuiTTe)

仕組みとしては時間で使い分けるシェアハウスをイメージすると分かりやすいのではないかと思う。一般的なシェアハウスは1棟の中の各部屋をその部屋を契約した特定の人が使うもので、ひとつの空間の中のそれぞれの空間をシェアしている。

これに対してセカンドハウスシェアは1棟を利用する契約をした特定の数人がその1棟をそれぞれ違う時間に利用する。空間ではなく、時間をシェアしているといえば良いのかもしれない。家具家電は備えられているが、寝具などは利用する人が用意するというあたりも一般的なシェアハウスと同様である。

具体的には物件所有者は自分が所有する物件の情報を公開。それを見て利用したい人が手を挙げて所有者と利用者がひとつのプラットフォームを利用して入居者共同体を作る。以降はその中で共同利用、共同管理をしながら物件を使っていくことになる。

セカンドハウスシェアでは一般的なシェアハウス同様、家具・家電は備えられている(写真提供/株式会社SuiTTe)セカンドハウスシェアの仕組みを解説した図。時間でシェアする、共同で利用、管理する点が特徴。実際の利用に当たっては契約、決済が簡単である、断続利用しやすい、他の利用者とゆるいつながりが生まれるなどもあげられる(資料提供/株式会社SuiTTe)

プラットフォーム上で所有者と利用者が入居者共同体を作って運用

旅先ではずっと外食になりがちだが、「我が家」なら滞在先で地元の産品を使った料理を楽しむことも(写真提供/株式会社SuiTTe)旅先ではずっと外食になりがちだが、「我が家」なら滞在先で地元の産品を使った料理を楽しむことも(写真提供/株式会社SuiTTe)

そのためのツールとして同社はSym Turnsというプラットフォームをつくっており、物件所有者はそこで利用料、滞在予約ができる最大日数などの条件を設定する。加えて利用者を募集、契約条件やハウスルールを決めるなどができるようになっており、利用者が決まってからは予約や清掃の管理を行うことができ、メンバー間でのチャットができるようになっている。所有者、利用者はそのプラットフォーム上でやりとりしながら共同で物件を使っていくのである。

ここで大事なのは利用者が自分たちで清掃や建物の管理を行うという点。旅館業は事業者がそうしたサービスを提供するものだが、セカンドハウスシェアでは建物所有者もユーザーも共同管理者である。建物所有者も自分が利用した時には清掃をするし、利用者ももちろん、自分が滞在した後は自分で清掃して次に利用する人が気持ちよく滞在できるようにしておく必要がある。自分にとってだけでなく、他の共同利用者にとっても「我が家」だからである。もし、そういうことは誰かにやってほしい、サービスを受けたいと思う人にはこの仕組みは向いていないかもしれない。

また、入居者を決めたり、契約をしたりという手続きは建物所有者と利用者の間で行われる。シェアハウスでも建物ごとにハウスルールは異なるが、セカンドハウスシェアも建物ごとにルールが異なることが想定される。そのあたりを事前によく理解してから利用を決める必要があるだろう。

同社ではこの3年ほど4軒の自社物件を実験的に運用、加えて現在では他のオーナー物件7軒も運用しているが、そこで利用者には4種類ほどのパターンがあることが分かってきたという。

「ひとつはデジタルで仕事が完結するような方々で、自分が住んでみたい他の場所で暮らしてみたいというもの。また、仕事や出張でしばしば来るので、プライベートでも楽しみたいという方々もいらっしゃいます。
それ以外では移住などを考えて試しに住んでみたい方、もうひとつは法人でワーケーションや合宿、福利厚生、出張時の宿泊先として使いたいというもの。いずれのケースでもホテルなどと違い、我が家に帰って来た感があるのが良いと評価されています。
当初は私たちの本拠地である京都で始めましたが、今後は大阪、沖縄や軽井沢などにも広めていければと考えています。セカンドハウスを利用する場合に大事なのは何度も行きたいと思う場所かどうか。また、利用料金が高すぎても利用しにくくなるでしょうし、滞在して生活するとなると不便な立地も難しい。どんなまちが良いか、考えながら進めています」

使わない相続した空き家を貸すというやり方も

ここまでセカンドハウスとして借りる立場から西村さんの話を伺ったのだが、ここからは貸す側の視点でご紹介していこうと思う。というのはこの仕組みを活用すれば相続した親の家などのようなたまに使うだけの不動産を活かせるかもしれないからだ。

家は使っていないと劣化が早まる。それを考えると大きな収益は上げられなくても自分が使っていない時に誰かが利用、清掃するなどしてくれれば定期的に手が入ることになる。状態によっては家具家電などをそのまま使えるかもしれない。自分が使いたい時はあらかじめ決めておく、あるいは共同利用者と交渉すれば良い。使いたい時には使えるけれどそれ以外の時は貸すというやり方ができるようになるのだ。

では、どんな立地、どんな不動産なら活用できるのだろう。

「ある程度収益を上げたいと考えるなら中核都市か、文化歴史、海や山など自然が近く、温泉などがあるリゾート地が理想的。旅ではなく、生活の場として選ばれるので周辺の利便性もある程度は必要です。これまでの利用者はカップルもいらっしゃるものの、単身者が中心なので、そうした人たちにとっての利便性ということで考えると良いでしょう。
広さとしては50m2以上。利用契約者の人数分の荷物を置けるように収納ロッカーが必要になるので生活スペース+αでそのくらいの広さからを想定しています。逆にそれほど広い必要はなく、利用人数のことを考えると80m2以下くらいが適当かと思っています。あまり広すぎても掃除その他が大変だからです。
間取りとしては寝室、リビングが分かれているのは当然としてちょっとした仕事スペースが設けられているようなものを想定しています」

特別な間取りというより、普通に住みやすい家であれば良いということらしい。また、収益で考えると多くの人に選ばれ、二拠点目として魅力がある立地であることは大事だが、相続した家に固定資産税分だけでも稼いでもらいたいと考えるなら、それ以外の立地でもあり得るのかもしれない。

ちなみに現在、利用者を募集している物件での月額利用料は5~7万円くらいが多く、1軒を利用するのは所有者も含めて5~6人。所有者は毎月入ってくる賃料のうち22%をプラットフォーム運営者にシステム利用料として支払う必要があり、別途水道光熱費も払う必要がある。

立地が違えば利用料も異なるので、実際には個別に検討していく必要があるが、気軽にセカンドハウスを試してみる、相続した家をたまに使いつつ貸す、どちらの手で考えるにしても新しい仕組みといえそうである。

■取材協力
セカンドハウスシェア Sym Turns
https://www.hachise.jp/buy/service/secondhouse-share/index.html

セカンドハウスには憧れるものの買うとなると大変だし、借りるとしても初期費用がかかり、しかもある程度の期間借り続けなくてはいけない。その面倒さから諦めている人もいるだろう。そんな難をカバーしてくれそうな仕組みがある。セカンドハウスシェアだ。利用者が私物を保管しておくための収納ロッカー。寝具その他の身の回り品を置いておけば移動が楽になる(写真提供/株式会社SuiTTe)
セカンドハウスには憧れるものの買うとなると大変だし、借りるとしても初期費用がかかり、しかもある程度の期間借り続けなくてはいけない。その面倒さから諦めている人もいるだろう。そんな難をカバーしてくれそうな仕組みがある。セカンドハウスシェアだ。オンラインで仕事をするという人が多いので、ちょっとした仕事スペースは欲しいところ(写真提供/株式会社SuiTTe)