ひとり親が自立した生活の基盤をつくるために
離婚、死別、未婚や非婚での出産など、ひとり親になる理由はさまざまだ。ひとり親が一番大変なのは、子育てと生計の維持を一人で担わなければならないことだろう。一人ですべてを賄うには大きな負担がのしかかる。
特に、出産・育児で社会から離れていた女性が、自立した生活の基盤をつくるのは容易ではない。子育ての責任を一人で担うひとり親家庭を支援するために、国や自治体による助成制度や機関がある。
今回はあまり知られていない、ひとり親家庭向けの助成と住まいについて伝える。
ひとり親の「お金の心配」に寄り添う助成
厚生労働省の2016年(平成28年度)全国ひとり親世帯等調査によると、国内に母子世帯数は123.2万世帯、父子世帯数は18.7万世帯と発表されている。
ひとり親世帯は経済難から貧困化しやすい傾向にあるという。先の調査によると、平均年間収入(母または父自身の収入)は母子家庭では243万円、父子家庭では420万円と報告されている。児童のいる家庭の平均所得707.6万円と比較して、極端に少ないことが分かるだろう。
子育てと仕事の両立が難しくてフルタイムの仕事ができない、給与や待遇面が充実していない、病気・ケガになると収入がゼロになるなど、ひとり親が経済的な困窮に陥りやすい要因は多数考えられる。そんなひとり親世帯の家計の負担を少しでも減らすための制度が施行されている。
所得と子どもの数に応じて手当が支給される児童扶養手当は、ひとり親に特化した手当だろう。0歳~18歳(18歳に達して最初の3月31日に至るまで)の子どもがいるひとり親世帯が対象で、支給者は地方自治体だ。
また、児童扶養手当の申請が通ると、コロナ禍で始まった低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金も支給されることになった。これは、児童1人当たり5万円が国から支払われる制度だ。
そのほかにも、就労に向けた教育訓練を受ける費用を一部国が負担する自立支援教育訓練給付金、子どもの就学や事業開始・継続のための貸し付け、母子父子寡婦福祉資金貸付金制度、国民年金保険料の免除や納付猶予など、家計の負担を軽減できる制度がある。
国だけでなく自治体が独自に制定している給付制度もある。たとえば、東京都で支給されている児童育成手当。これは、18歳(18歳に達して最初の3月31日に至るまで)以下の子どもを養育しているひとり親世帯で、所得が設定限度額内であれば、子ども1人につき月額1万3,500円が支給される。そのほか、健康保険の自己負担分の一部を東京都が助成するというひとり親家庭等医療費助成制度(別称・マル親)も施行されている。
賃貸物件を借りづらい? ひとり親の「住まい」の選択肢
ひとり親世帯は住まいが借りづらいという。
すでに持ち家があったり、身を寄せる場所があったりする人はそれほど心配ない。問題は家を追われて住まいがないケースだろう。東京都が2011年に都内のひとり親家庭を対象に行った住まいについてのアンケートでは、民間賃貸住宅に住んだことのあるひとり親世帯のうち、住宅を探すのに苦労した経験があると答えた人は62.5%もいた。
実際の不動産管理会社の入居審査では「安定して家賃を支払うことができるか」「子どもの騒音が周辺の迷惑にならないか」という懸念から、ひとり親世帯は審査に通りづらいことが多いようだ。
ひとり親世帯の住まいは、民間賃貸住宅のほかに公営住宅に申し込むという手段が挙げられる。また、経済的に困窮しやすい母子家庭であれば、母子向けシェアハウスや母子生活支援施設という選択もある。
公営住宅は一般的に家賃が低廉で、ひとり親世帯への配慮を行っている自治体もあるため、比較的入居しやすいといわれている。母子向けシェアハウスは、民間運営の入居者を母子家庭に限定した共同賃貸住宅だ。子育てと仕事を両立する人が集まるコミュニティとしても機能しているのが特徴だ。
関連記事:シングルマザー向けシェアハウスでひとり親の再出発を支援 ~ NPO法人全国ひとり親居住支援機構に聞く(前編)
母子生活支援施設は、子育て支援を進めながら母子の生活と自立を支援するための施設で、18歳未満の児童とその母親が入所対象だ。全国に272ヶ所ある施設は、母子家庭の総合的な自立支援とDV被害者支援を目的に運営され、母子シェルターの役割も担っている。頼る家がない、賃貸で部屋を確保することが難しい母子に向けたセーフティネットとして、身を寄せる場所になっている。
一般的に、無理なく支払いができる家賃は年収の25〜30%以内といわれる。収入が少ない世帯にとって家賃は大きな負担だ。子育てに適していて、その額内で収まる低い賃料の物件を探すのは至難の業だろう。
暮らしの要になる住まいを確保できるよう、所得の少ないひとり親世帯には国の生活困窮者自立支援制度による住居確保給付金が給付される。自治体によっては、民間の賃貸住宅の家賃や保証料や引越し費用の助成などが受けられるひとり親家庭住宅助成制度が用意されている。詳しい条件や該当するかの判断は自治体に相談してほしい。
不安に思ったらまず「窓口」で相談を
助成を受けるための相談はどこへ行けばいいのだろうか。
すでにひとり親で、今まさに生活に困っている人は、居住する市区町村役所の生活相談窓口、あるいは自立相談支援機関の相談窓口へ行こう。
現在離婚を考えている、家庭で問題を抱えている人は、自治体の福祉事務所とコンタクトを取ってみよう。「住んでいる市区町村名」+「福祉事務所」で検索すると調べることができる。母子生活支援施設の申し込みもここからできる。DVが理由であれば、女性支援NPOの相談窓口なども相談にのってくれるはずだ。
自立した生活を目指す職のない人は、自治体の生活相談窓口や、各都道府県に必ず設置されている母子家庭等就業・自立支援センターで情報を得ることができる。
「不安」「苦しい」「つらい」という声を上げて助けを求めることはかなり勇気のいる行動だが、耳を傾けて手を取ってくれる窓口はある。紹介した施設や窓口のほか、記事末にまとめたwebサイトも参考にしていただきたい。
生活の基盤を整えること、子どもを健やかに育てること、経済的にそれを維持していくことなど、一人ですべてを抱えるのは大変な苦労があるだろう。助成や給付の制度はそうした頑張りを支えてくれるものだ。必要な制度を利用することで、親子の安定した暮らしをかなえてほしい。
※本記事の内容は、LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL note2021年11月掲載当時のものです。
ひとり親支援に関する支援先
▼厚生労働省・ひとり親家庭の支援について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/shien.pdf
▼内閣府 子供の未来応援国民運動・国や自治体の支援
https://kodomohinkon.go.jp/help/area/
▼母子向けシェアハウスのポータルサイト「マザーポート」
https://motherport.net/
▼厚生労働省・福祉事務所(リンク先に全国の福祉事務所の一覧あり)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/fukusijimusyo/index.html
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
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