外国籍の方の部屋探しをサポート

外国で暮らしてきた方が海外から日本へ移り住むとき、日本での生活をどの程度イメージできているだろうか。実際のところ、外国籍の方の部屋探しは難航しやすく、暮らすうえでも何らかのトラブルに見舞われる人が多いようだ。
そこにはどんな問題があるのか。賃貸事業を中心に、外国籍の方に特化した生活総合支援を行う株式会社グローバルトラストネットワークス(以下、GTN)。今回は、GTNのなんばマルイ店で店長代理として営業に従事する劉木木(リュウ・キキ)さんにお話を伺った。

――GTNのお客様はどの国籍の方が多いのでしょうか。

GTN全体でみると、中国と韓国のお客様がそれぞれ20%、ベトナムとアメリカのお客様がそれぞれ10%ほどいます。その他の国籍の割合は店舗によって異なっています。
東京の店舗では中国や韓国、ベトナムの方が多く、私の勤めるなんばマルイ店へ直接来店されるお客様はインドネシアの方が10%以上いらっしゃって非常に目立ちます。というのも、インドネシア本国のエージェントとのつながりがある語学学校が近くにあり、インドネシアからの学生のご来店が多いんです。在留ステータスでいうと、留学生が6割、就労者3割、特定技能生が1割くらいです。

私自身も高校卒業後、大学に進学するタイミングで日本に来ました。来日当初は留学生会館に住んでいて、半年そちらでお世話になった後、自分の名義で部屋を借りることにしたのですが、そのときはいろいろと大変でした。

外国籍の方の部屋探しは難航しやすく、暮らすうえでも何らかのトラブルに見舞われる人が多いようだ。そこにはどんな問題があるのか、外国籍の方に特化した生活総合支援を行う株式会社グローバルトラストネットワークスに話を聞いた。

来日間もない外国籍の人が、探しているときと住んでから直面する困りごと

――外国籍の方の賃貸契約に生じる難しさや、発生しやすいトラブルとはどのようなものでしょうか。

一口にトラブルといっても、お部屋を探している段階と入居後でその内容は異なります。お部屋探しの段階でよく伺うトラブルは、大きく分けて4つほどあります。
まず、初期費用に関するものです。日本では、契約書を取り交わす前に、管理会社への手数料や敷金・礼金、火災保険や鍵交換代、保証料といったものを支払います。海外にはない慣習なので、「このお金は何のために支払わないといけないのか?」と、言葉が通じるからこそいろいろ尋ねられることが多いですね。
私自身も初めて引越しをした際、保証人を立てることや家賃保証会社への支払いが理解できないまま料金を支払って、わだかまりが残りました。

次に、日本の賃貸物件には家具や家電などが付いていないことで、齟齬が生じることがあります。海外では、家具家電は備え付けられていることが多いのです。私の出身地北京でも、オーナーさんのデザインが各部屋に施されていて、家具家電付きというのが一般的です。

3つ目が、水道・ガス・電気の支払いを自分でする認識があまりないことです。日本の場合、その各所に自分で手続きをしなければならないことを知らず、入居してから半年も水道・ガス・電気が通っていなかったお客様や、払込票の意味が分からないまま捨てているお客様もいらっしゃいました。

4つ目は、住所の変更に関する認識が薄いことです。たとえば、郵便局へ行って郵便物の転送手続きを行ったり、役所へ行って在留カードの住所変更をしたり、銀行で住所変更手続きをしたり、といったことをする認識がない方が多いですね。特に中国では本籍しか管理されないので、GTNでは「日本では各自で変更手続きが必要だ」と案内しています。家賃督促の手紙が届いていなかった、自動引き落としの手続きがうまくいかない、といった問題はここに起因しています。

外国籍の方から見れば、日本にはなぜ仲介会社があるのか、管理会社があるのか、保証会社があるのか理解できず、手続きが面倒に感じるんでしょうね。中国では、管理会社はなく、仲介会社も日本ほど多くありません。オーナーさんと直接交渉をして、紙に契約内容を書き留めて、賃料と交換に鍵を受け取っておわり、ということがほとんどで、5分もあれば終わります。私も日本に来てからしばらく経っても、手続きや金銭のやりとりが分かっていませんでした。

私自身が日本で初めて不動産会社で部屋探しをしたときに困ったのが、保証人のことでした。日本人の保証人を求められたうえ、物件をいくつも見たにもかかわらず審査が通ったのが1つだけという状況でした。日本人の知人に保証人をお願いするのは、やはり責任が重いので頼みづらかったですね。なかなか日本人の方を保証人に立てられなくて、最終的に仲介会社の案内で家賃保証会社を使うことになったんですが、それがGTNだったんです。おかげで無事入居できました。

来日間もない外国籍の人が、探しているときと住んでから直面する困りごと

認識の違いが招く、住み始めてから生じるトラブル

――外国籍の方向けの仲介会社に相談できることで、直面する疑問や問題への対処法がだいぶクリアになりそうですね。では、入居してからはどんなトラブルが寄せられていますか?

最も多いのは「ゴミ出し」です。自治体によってはペットボトルだけでも3種類に分ける必要があり、住む場所によって異なるルールが複雑でトラブルになるケースが多いようです。私が留学生会館に住んでいたときは、ゴミ出しなどはすべて管理人さんが対応してくれていました。それもあって、自分の名義で部屋を借りた際、ゴミ出しのルールはまったく知りませんでした。服と生ごみを一緒に入れて捨てていたのを、隣室の方から「これはダメですよ!」と指摘されたりしました。当時はよく理解できなかったのですが、今ならありがたい指摘だったと思えます。

次に家賃の支払いです。日本は先払いがほとんどですが、後払いと勘違いをして滞納されてしまうお客様がいらっしゃいます。仕送りではなくアルバイトをしながら学校に通っている方だと経済的に支払いができない状態に陥っている場合もありますし、何ヶ月もためてから一括で払う、忘れてしまうという場合もあります。実は私も一人暮らしを始めた頃、毎月払うよりも数ヶ月分まとめて1回で払えば、銀行に行く手間と振込手数料が節約できると思っていました。

その次に、騒音です。自分の家なので自由に使ってもよいという価値観の方が多いように思います。夜にカラオケをしたり、パーティーを開いたり、突然楽器を弾きだしたり…なんてことがあります。日本の方は、夜11時~朝8時くらいまでの時間帯は、大きな声を出さず、テレビの音を抑える、洗濯機の利用を控えるといったことが習慣化されてますよね。日本の住居は壁が薄いことを知らない方が多い印象です。

最後は、ペットの飼育でしょうか。日本ではペットフレンドリーの物件はあまり多くありません。「自分の部屋なんだから自由にしていいじゃないか」と契約途中でペットを飼いたいと主張される方もいらっしゃいます。

認識の違いが招く、住み始めてから生じるトラブル

時間をかけて一人一人に向き合うGTNの取組み

――国の違い、文化の違いでこうしたトラブルが生じるんですね。その溝を埋めるために、GTNさんで行っている取組みを具体的に教えていただけますか?

海外から初めて日本に来るお客様は、日本での生活も初めてなので、みなさんゼロスタートの状態でGTNにお越しになります。事前にご自身で調べていらっしゃる方もいますが、慣れるまでには、相当な時間と手間がかかります。
GTNでは日本全国で外国籍の方向けの部屋探しと家賃債務保証サービスを提供していますが、結果としてGTNで仲介したお客様は、ほかの仲介会社で契約した方と比べてトラブルが少ないです。

それを裏打ちしているのが、しっかりとした説明を行っていることでしょう。先ほども触れましたが、GTNでは時間をかけて丁寧に説明するように心がけています。お客様が守らないといけないルールや、お客様の権利、トラブル時の連絡先などを理解してもらえるよう、一人一人と時間をかけて向き合っています。
それにプラスして、お客様向けのよくあるトラブルに関する考え方や注意事項をアニメや動画にして配信していたり、マニュアルを作成したりして、周知に努めています。こうした説明に尽きるのかなと思っています。

サポート部の存在も大きいです。サポート部は現在40名のスタッフで19ヶ国語に対応しています。日本語が分かれば直接管理会社に問合せる方法もお伝えしているのですが、不安な場合には、電話やメールでサポート部がいつでも相談に対応する旨をご案内しています。

そのほかにも、企業の外国籍従業員の生活のための多言語サポートサービスや、就業・定着支援、携帯電話サービス、クレジットカード発行サービスなど、外国籍の方向けに多種多様な支援を実施しています。特に直近では、入国後14日間の待機のほかに、さまざまな対応が必要とされるレジデンストラック対応や入国直後の生活環境立ち上げのための支援サービスをスタートしました。外国籍の方を雇用される企業や学校の皆様にご利用いただいています。

時間をかけて一人一人に向き合うGTNの取組み

スムーズな部屋探しのために大切な3つのポイント

――「これから日本で部屋探しをしたい」という人に向けて、劉さんからはどのようなアドバイスをされますか?

3つのポイントがあります。
第1に、家賃相場を知ること。ある程度でいいので、自分が住みたいエリアの相場を気にしておくといいです。そうすると不動産会社もご希望に沿うような物件を探しやすいですし、お客様自身も理想と現実のギャップを埋められて、スムーズにお部屋探しができると思います。探す方法としては、インターネットで希望するエリアの相場を調べていただくのがいいですね。たとえば「新宿 相場」で検索すれば、LIFULL HOME'Sさんの家賃相場のページが出ますよ。

第2に、日本の賃貸事情を知っておいてもらいたいです。たとえば先ほどお話しした、物件に家具家電が付いていないこと、インターネット・ガス・水道・電気は自分で手続きしないといけないこと、などですね。そういった事情を知っておけば、入居後に何が必要になるか、何を用意しておけばいいかが分かるようになります。

第3は、自分のライフスタイルを見通して条件を決めることですね。今後2人入居になるのか、ペットを飼うのか、楽器を使う予定があるか…そういったことを考えているなら、最初から仲介会社にしっかり確認を取ったほうがいいと思います。日本では“信用”が大事なんですよね。お金がある人になら貸すというのではなくて、“その人が毎月きちんと賃料を払えるのか”、“契約を守れるのか”ということが大切だと思っています。

日本人と外国籍の人が国の垣根なく言葉をかけ合える、そんな日本の暮らしを

――劉さんはGTNを通じて外国籍の方の住まいの環境がどのように変化したらいいと思いますか?

同じマンションや同じ地域に住む日本の方と外国籍の方が、お互いに対等な立場で言葉をかけ合える、そんな暮らしが実現できたらいいなと思います。「同じような経験をして私が大好きな日本を嫌いになってほしくない」という想いが、私がGTNで働く原動力になっています。私は、“外国籍の人”として対応されるのではなく、一人の人として受け止めてもらいながらこの先も日本で暮らしていきたいですし、日本の社会に貢献していきたいと思っています。将来自国の人たちに、「日本で素晴らしい経験をした」「素晴らしい人と出会った」と胸を張って言えるよう、私もがんばります。

外国籍の方は日本の言葉や文化をすぐに理解できないこともあると思いますが、日本の方にはぜひ愛をもって見守っていただけたらと思います。

日本人と外国籍の人が国の垣根なく言葉をかけ合える、そんな日本の暮らしを

「国籍の異なる人同士でかかわりあうと、生活がとても面白くなるんですよ」インタビューの終わりに、劉さんは異文化同士の交流の楽しさを笑顔で話してくださった。
文化は長年にわたって人が築き上げてきたものである。文化の違う場所での生活は、自国のようにはいかないが、違いを知ることやコミュニケーションを図ることで、受け取り方もだいぶ変わってるのだろう。これは日本人が海外で生活するときに気をつけておきたいことでもある。
日本に住む外国籍の方も、日本人も、互いに同じ気持ちで接することができたら、共に楽しい暮らしになるのではないだろうか。

Global Trust Networks https://www.gtn.co.jp/

※本記事の内容は、LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL note 2021年10月掲載当時のものです。

お話を聞いた方

お話を聞いた方

劉木木(リュウ・キキ)
1990年生まれ、中国・北京出身。中国にて高級中学を卒業後、2010年大学入学のために来日。語学別科と大学の計5年半の在学を経て十文字学園女子大学を卒業後、2015年よりGTNに入社。生活サポート部にて在留者のトラブル解決や翻訳業務などに1年間携わったのち、賃貸事業部に着任。現在は大阪のなんばマルイ店で店長代理を務める。

お話を聞いた方

【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。

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