高齢者の住まいの種類と介護制度を利用して自宅に住むメリット
今が元気であればあるほど、家族の介護の問題を考える機会は少ないだろう。今後、介護が必要になったらどうしたらいいのか、そして自身が年を重ねて高齢者になったときにはどうすればいいのだろうか。
国民の約2.6人に1人が65歳以上の高齢者である一方で、施設や高齢者用住宅の需要に供給が追いついていないともいわれている。その改善策のひとつとして、高齢者が地域で自立した暮らしを続けられるようにする「地域包括ケアシステム」の構築が、2025年をめどに推進されている。
今回は、その要ともいえる在宅介護に関する制度や、相談窓口について紹介していこう。
高齢者の住まいの選択肢の種類は大きく3つに分けられる。
ひとつは、特別養護老人ホームや養護老人ホーム、軽費老人ホームなどの公的な高齢者向け施設・集合住宅。
もうひとつは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間の高齢者向け施設・集合住宅。そして、上記2つのような介護サービスの付かない一般的な賃貸住宅だ。特に、身体的にも経済的にも自立した生活を送るシニア層には、3つ目の選択肢である賃貸住宅のニーズが高く、シニア向けの住宅を取り扱う不動産会社も増えつつある。
しかし、身体の不自由が利かなくなったり、認知症を発症したりしたら、いよいよ一般的な賃貸住宅での生活は難しくなるだろう。高齢化が進み今や高齢者施設数は頭打ちの状態ともいわれている今、増え始めているのが“自宅で介護サービスを利用して住む”という方法だ。
自宅で介護サービスを受けて暮らすメリットは、
・住み慣れた自宅や地域で生活できる
・専用住宅や施設に入るより費用の負担が少ない
・必要に応じた介護サービスを利用できる
という点が挙げられる。
高齢になればなるほど、引越しや住み替えといった物理的な移動は心身だけでなく経済的にも負担がかかる。また、比較的入居しやすい民間の高齢者向け施設・集合住宅は、費用が高い、身元引受人の審査が厳しいという難しさもある。
自宅での介護であれば、慣れた環境下でケアマネジャーがその人に必要な介護の内容を細かに設定するため、過分のないサービスが自立した生活を支えてくれるだろう。介護サービスは持ち家に限らず、一般的な賃貸住宅でも受けることができる。
介護を受ける側が活用できる保険や補助制度
介護に関する制度は、国主体のものから自治体主体のものまで多岐に渡る。今回は、国が行っている“介護を必要とする人に向けたもの”と“介護をする家族に向けたもの”に分けて見ていこう。
まずは、介護を受ける側が利用できる制度だ。ここでは、介護に関する制度の根幹を担う介護保険と、介護の費用負担を軽減するための高額介護サービス費について触れていく。
介護保険
介護保険とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして運用されている保険制度。満40歳以上の人は加入が必須で、65歳未満は健康保険料と合わせて保険料が徴収される仕組みだ。65歳以上は年金から天引き、または普通徴収という形で、保険料を納めることになる。
介護保険を利用できる条件は次のようになっている。
・40歳以上65歳未満は16の特定疾病に罹患している場合
・65歳以上は地域包括支援センターを介して要介護認定または要支援認定を受けたとき
介護保険を利用することで、居住介護支援、居宅サービス、施設サービス、住宅改修、福祉用具に関するサービス、地域密着型サービスなど、多くの介護サービスを受けることができるのである。
なかでも介護補助のために実施される住宅改修は、全額自己負担後に申請すると、支給限度基準額(20万円)の9割(18万円)を上限として払い戻しされるため、“介護リフォーム補助金”とも呼ばれている。これは介護度が3段階上がるたびに給付されるシステムで、介護の状況に応じたリフォーム工事を行うことができるだろう。
介護保険の利用にあたり注意しておきたいのが、手続きの流れだ。介護保険料を納めているからといって、すぐに利用できるわけではない。家族に「介護が必要かも?」と感じたら、まずは住まいのエリアの地域包括支援センターで相談をしよう。チェックリストに基づき、対象者の状況を地域包括支援センターの職員が給付の判断をする。診断結果から介護や支援が必要と判断されたら、要介護認定の申請を行う。介護認定審査会にて調査・審査ののち、要介護1~5に認定されれば、介護保険サービスを利用することができるようになる。
要介護認定とならない場合でも、ホームヘルパーの訪問や施設への通所などの介護予防サービスや生活支援サービスを受けることはできる。
高額介護サービス費
高額介護サービス費の区分と負担の上限額
介護保険を利用して介護サービスを受けた際、自己負担割合に応じた利用料を負担することになる。
たとえば、要介護1の人がデイケアに通って7時間のリハビリを行った場合だと、8,402円の費用のうち841円が自己負担になる。
サービスを使えば使うほど負担金が増えるわけだが、1ヶ月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えた際には、超過分が払い戻しされる制度が高額介護サービス費だ
2021(令和3)年8月より、負担限度額は所得の有無や非課税世帯など7つに区分され、それぞれに金額が設定されている。
一般的には自治体から申請書が届き、必要事項を記入して窓口へ提出という手続きで申請が行われる。
申請期間は、支給対象となったサービスが提供された月の翌月1日から2年間と定められているため、申請漏れのないよう申請書が届いたら速やかに手続きをするとよいだろう。
介護をする家族が活用できる給付制度
家族が同居して介護を担う場合にも、介護する側が受けられる給付金制度がある。代表的なものは介護休業給付金と家族介護慰労金だ。この場合の「家族」とは、被保険者から見た以下の範囲を指す。
・配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
・父母(養父母を含む)
・子(養子を含む)
・配偶者の父母(養父母を含む)
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫
介護休業給付金
介護休業給付金は、会社勤めの人が利用できる雇用保険の制度だ。雇用保険に入って1年以上経過している人が対象となる。額面上は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%を受け取ることができる。
申請は個人で行うものではなく、在職企業に介護休暇の申請をすると同時に、企業からハローワークへ申請が出される。
家族介護慰労金
家族介護慰労金は、住民税非課税世帯が利用できる制度。
介護サービスを利用せずに、要介護4~5の高齢者を通算90日以下の入院日数で、1年以上在宅介護した場合に自治体から給付されるというものだ。
年額10万~12万円が支給される。
家族内だけで介護をするのは心身ともに負担が高く、最悪は共倒れになるケースも考えられる。
家族介護慰労金の給付だけにこだわらず、介護サービスを積極的に活用して、介護疲れにならない工夫をしていきたい。
介護に関する相談や申請は“地域包括支援センター”へ
介護に関する制度はさまざまあるが、その相談窓口となるのが地域包括支援センターだ。地域包括支援センターとは、各市区町村の自治体が責任主体となって運営する地域の高齢者の問題に関するワンストップ窓口。2021(令和3)年4月の時点で、全国5,351ヶ所。ブランチ、サブセンターなども含めると7,386ヶ所で運営されている。
センター内には、保健師(看護師を兼務している場合もある)、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャーとも呼ばれる)が在席しており、それぞれの知見から相談を受けた高齢者にどんな支援が必要か、どんな制度を利用できるか判断してもらえる。
また、地域包括支援センターは、地域のケアマネジャー、介護事業者、かかりつけ医、NPO法人などと連携して、高齢者の地域での生活をサポートする要の役割も担っている。高齢者に関する困り事があれば、まずは住まいの最寄りの地域包括支援センターへ行ってみよう。当事者だけでなく、家族や近隣に住む人からの相談も受け付けている。
高齢の親と離れて暮らしている場合は、親が住むエリアの地域包括支援センターに相談を勧めよう。今はまだその心配がなくても、管轄の地域包括支援センターがどこにあるのかを把握しておくことは大切だ。
介護というと「難しそう」「大変」といった印象を受けるがが、地域に密着した介護支援は思ったよりも多く存在している。地域の中で安心した暮らしを無理なく続けていくために、介護制度を上手に利用していきたいものである。
まずは制度の内容を知ることから、始めてみよう。
▼厚生労働省 介護保険制度の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
▼LIFULL介護『介護保険サービスにはどんなものがある?その種類と内容』
https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/service/
▼LIFULL介護『地域包括支援センターとは?その役割と賢い活用法』
https://kaigo.homes.co.jp/manual/homecare/basic/center/
▼LIFULL介護『介護保険制度とは?しくみをわかりやすく解説します』
https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/about/
※本記事の内容は、LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL note 2022年8月31日掲載当時のものです。
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
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