ノリタケの森の隣に誕生「イオンモールNagoya Noritake Garden」
2021年10月27日、名古屋市に「イオンモールNagoya Noritake Garden」がオープンした。名古屋駅から北に約1km、徒歩で約12分と、都市型の大規模モールとなる。
以前取材させていただいた複合施設「ノリタケの森」(「ノリタケの森」日本の洋食器を発展させたノリタケの歴史遺産と地域貢献の施設を見てきた)に隣接しており、モールの東側には同施設の緑地が広がる。都心部にありながら豊かな緑に包まれた地の魅力を生かし、自然体になれる場所であるようにと、「自然と自然になれる場所」をコンセプトに掲げている。
商業フロアには総合スーパー・イオンスタイルを核店舗に、約150の専門店が入る。そのうち、ベーカリー&カフェの「THE CITY BAKERY」や「コミカミノルタプラネタリウム満天NAGOYA」など東海エリア初出店が41店舗。近隣住民を対象にした10月21日~26日のプレオープン期間には約14万5,000人が訪れ、期待の高さが現われていた。
このイオンモールNagoya Noritake Gardenは、商業施設にオフィスを併設した新たな事業フォーマットの第1号店としても注目される。今回の記事では、「BIZrium(ビズリウム)名古屋」と名付けられたオフィス施設についてご紹介したい。
イオンの新オフィス事業「BIZrium(ビズリウム)名古屋」
BIZrium名古屋は、モールのグランドオープンよりも1週間早い10月20日にオープン。その前日にマスコミ向け内覧会が行われた。
BIZrium名古屋ゼネラルマネージャーを務める高須賀大索さんは、内覧会冒頭のあいさつでこの日までに決まっているオフィスの内定率が70%と説明。コロナ禍の影響で企業の決定が中止や延期があったものの、共用機能を進化させ、目標水準まで達しているとのこと。「このコロナ禍で、これからのオフィスは何のために行くのか、場所の意味を問われていると考えました。家でも働けるようになったのに、なぜ会社に行かなければいけないのか。そうしたなかで、“行きたくなるオフィス”を目指しました」と語る。
そんなBIZrium名古屋がコンセプトとしたのは「ワークライフブレンドオフィス」。入居を決めた会社のほとんどは、そこに共感してもらえたという。
自分らしい働き方、暮らし方を選べるライフスタイルオフィス
商業施設とオフィスを融合させるきっかけはどんなことだったのだろうか。高須賀さんに聞いた。
「私はもともとモールの企画をしていたのですが、商業だけで人のライフスタイル全体を本当に豊かにできるだろうか、開拓するべきところがほかにあるのではないかと思っていました。私たちの事業はオフの時間がメインとなりますが、インタビュー調査を行ったとき、オンとオフがなぜこんなにうまくつながらないんだろうという問題意識を強く感じていました。
イオンモール株式会社の社員は入社すると初めにモールに配置となります。そのときにモールの近くに住んで働ける環境に、暮らしやすさを肌で感じることができました。そんな経験もあったなかで、2015~2016年ごろからヨーロッパやアメリカの自由度の高い”横”に伸びる複合施設を見学し、日本でできないかと考えていました」
今回取り組む”横”に伸びるオフィスは、”キャンパス型オフィス”と呼ばれ、世界的IT企業が取り入れていることで知られる。BIZrium名古屋の資料によると、「オフィススペースを上に積み上げるのではなく、横に広く保つデザインにすることで、社員同士の交流が生まれやすいワークプレイス」とのこと。緑豊かな環境や買い物、レクリエーション施設などのライフサポート機能などが一体で整えられている。そんなときに現在のイオンモールNagoya Noritake Gardenの土地を取得する機会を得て、構想が同時に進められていくことに。
2017年ごろ、100社ほどにヒアリングを実施。この土地にオフィスがあったらどうかという質問には、緑のある環境については非常に好評だったが、駅から徒歩約12分という距離が微妙だという声が。ただ、そこがイオンモールの上にあるオフィスだったら?という問いには、「すごく便利」という回答を得ることができた。「例えば仕事帰りに髪を切りたくても営業が終了してしまっていることも多いですよね。そういったちょっとしたことなんですけれど、土日のオフの時間を使うことなく、平日に済ませられることが望まれているようでした」と高須賀さん。
そうして、ライフデザインディベロッパー=地域とともに暮らしの未来をつくることを経営理念とするイオンモールの、新しい“デザイン”がオフィス複合型という新業態となった。また、ヒアリングで得たヒントを、BIZrium名古屋の機能に詰め込んだという。
オフィスワーカーの希望に沿った機能を展開
4~6階に設けられたオフィスフロアは、1フロア約2,000坪という広さ。各オフィス区画は100坪前後を標準とし、55~216坪で設けられている。
4階のラウンジは共用スペースとなっており、屋内と屋外テラスで約200席を用意する。BIZrium名古屋は、働く人の健康に焦点を当てた建物・空間の評価システム「WELL認証」の予備認証を東海地区で初めて取得。このラウンジを含む共用スペースでは、ランチタイムに入居企業へ弁当の販売を予定しているが、野菜と果物をそれぞれ2種類ずつ以上入れるなど、WELL認証の規定に従ったメニューになるという。また、屋外テラスはノリタケの森の緑のほか、名古屋城や名古屋駅の高層ビル群などが見られる開放的な空間になっている。
「屋内、屋外ともに気をつけたことは、一人用の席を設けること。マーケット調査を見てみますと特に今の20代の方は、一人になる時間が欲しいという声が非常に多くありました。また、屋外テラスにはWELL認証対応として、横になってくつろげる椅子もあります。仮眠が仕事の効率を高めるというお話もありますし、この環境を活用していただけたら」と高須賀さんは語った。
もう一つ共用スペースとなるのが会議室。4階と5階で約40室を完備。採用面接などにも対応できる70席ほどの大会議室のほか、オンラインミーティングにもぴったりな個人ブースもある。「大きいサイズの会議室は各企業さまで利用頻度が減った状況があり、それを共用にすることでオフィス面積のスリム化ができます」と高須賀さんは説明した。
会議室は、各オフィスからアクセスしやすいように中央部分に配置。1時間単位で利用でき、専用アプリで予約ができる。
名古屋外国語大学のサテライトキャンパスも入居
6階は1フロアすべての区画に、名古屋外国語大学のサテライトキャンパスが入る。コロナ禍で密を避けるために教室のスペースを考慮しなければならなくなったことがきっかけで、新キャンパスとして入居した。38の教室のほか、読書施設、多目的ラボなど全55室がそろう。コロナ禍の影響とはなるが、新たな学びの場としてイオンモールと直結した環境は、学生にとっても過ごしやすそうだ。各企業と学生のつながりも生まれるかもしれない。
オフィスと商業施設の連携で働く場をより豊かに
BIZrium名古屋は施設全体で、目的やシーンに合わせて最適な時間と場所を選ぶことができる、ABW(Activity Based Working)を実現することを目指す。それは働く人にとって快適な機能を持ったオフィスフロアだけでなく、仕事前後の時間も有意義なものにすることだ。
商業施設には、買い物ができるスーパーマーケットやファッションショップなどのほか、郵便局、フィットネスジム、ヘアサロン、そして20科目の診療科を持つ大型のクリニックが入り、充実している。
クリニックは健康診断・人間ドックの検査ができる健診センターも併設しており、オフィスフロアに入居する企業との連携も考えられているそうだ。
働く環境をよくするための商業施設との連携だが、空間設計で工夫したことについて高須賀さんに伺うと「いかにシームレスにつなぐか」ということだったという。
オフィスの動線と商業の動線がぴったりと合っていることで快適さが増すが、そこには配慮が必要だった。
「BIZrium名古屋は1階のメインエントランス奥とオフィスフロアに上がるエスカレーターのある3階から、扉一枚で商業施設へと続きます。難しかったのが、ダイレクトにしてしまうと買い物客の方もオフィスゾーンにアクセスしやすくなってしまうこと。そのため10歩分ほど廊下で距離を設け、もちろんセキュリティもしっかりとしました」
また、もう一つのシームレス化が駐車場。オフィス専用の駐車場は、4階の部分に車寄せスペースを設けた。これにより荷物の搬入がしやすくなる。
商業施設の枠組みを超えた価値を提供する
綿密なリサーチによる意見を取り込み、そしてこれまでのモール運営の知識を生かした施設造りを行い、オフ時間とオン時間をつなげて暮らしを充実させるサービスが始まった。高須賀さんは地方での展開や、既存店のリニューアルなどで「BIZriumを全国に広げていきたい」と今後の展望を語った。
また、グランドオープン日に開催された記者会見では、イオンモールの岩村康次社長が「商業施設とオフィスの2つをイオンモールであれば融合できるのではと、新たな価値の提供として取り組みさせてもらっています」と話した。
そして「われわれが目的に掲げていることは、ライフデザインディベロッパーとして商業施設の枠を超え、地域にソリューションを提供していくカンパニーになること。今回はオフィスと商業の融合でしたが、本当に地域に必要なもの、そしてイオンモールならではの価値をライフデザインプロデューサーとしてしっかりと考えていきたい」と続けた。
イオンモールNagoya Noritake Garden
https://nagoya-noritake-garden.aeonmall.com
BIZrium名古屋
https://nagoya.bizrium.com
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