カスタマイズ賃貸「TOMOS」とは?

交流会の様子。左からゲストスピーカーの水上氏、石井氏、司会の株式会社グッドルームの田村氏交流会の様子。左からゲストスピーカーの水上氏、石井氏、司会の株式会社グッドルームの田村氏

ありきたりな賃貸の部屋ではなく、自分らしい家に住みたい。
しかし賃貸物件では、自分で壁に穴を空けるといったリノベーションをすることはなかなか難しい。やはり不動産を購入して、自分好みにリノベーションするしか方法はないのか…
そう思っている方も多いのではないだろうか。

そこで、賃貸で「自分らしい家」を実現する一つの方法が、最近よく耳にするカスタマイズ賃貸だ。東京・大阪・名古屋を中心に、デザイナーズ賃貸物件を取り扱うグッドルーム株式会社のオリジナルリノベーションブランド「TOMOS」では、ある程度規格化されたリノベーションパターンの中から、スキルが無くても素材を選ぶだけで自分好みの部屋をつくることができる「カスタマイズ賃貸」のサービスを提供している。
工事費用を支払うのは物件のオーナーで、入居者は通常の賃貸物件と同じく家賃を支払うだけでありながら、自分好みの部屋に住むことができるというわけだ。また、これから工事をする部屋も紹介しており、工事前に申込をすれば自分好みのアレンジを加えることも可能。この「カスタマイズ賃貸」を開始して5年を迎え、およそ1000組を超える入居者がいるという。

その「TOMOS」では、築年数や外観、駅徒歩分数といった一般的な条件よりも、部屋の内装を重視したい、賃貸でも自分らしい住まいにしたいと考える入居者が多く集まっているそうだ。
こうしたアイディアを入居者同士で共有するとともに、「TOMOS」の入居者や、入居を希望する方々の交流会が開催されることになった。今回はその第一回がグッドルーム渋谷店で開催されたので、その様子をレポートしたい。

ゲストスピーカーのこだわりの部屋を紹介

交流会には、実際に「TOMOS」のカスタマイズ賃貸物件に暮らしているお2人がゲストスピーカーとして登場した。

まず一人目は水上氏。多趣味で新しいコトやモノもどんどん生活に取り入れるライフスタイルという水上氏。
それゆえ「ライフスタイルの変化にゆるやかに寄り添ってくれるような、できるだけニュートラルで柔軟な空間を目指しました。」という。
まずはなるべく玄関を広く。寝室は寝るだけなのでできるだけ狭くとオーダー。広くなった分、下駄箱はオープンで見せる収納が駆使されて豊かに見え、土間のようなスペースもできた。たくさんモノを買うので見せる所と隠す所に、水上氏の収納のセンスが光る。
さらに水上氏の部屋の特徴は、大きなダイニングだ。コーナーによって仕事をする面、ダイニングの面、お風呂や洗面用の面とそれぞれ収納の機能も兼ね揃えており使い勝手も抜群。無印良品の棚やホームセンターでDIY用の板材を買ってきて、既成のものを組み合わせて作っただけだというが、その空間は部屋のスペースにとてもマッチしていて水上氏のライフスタイルそのままを表しているように見えた。

2人目のゲストスピーカーは、石井氏。これまでに引っ越しを12回したというエキスパートだ。「TOMOS」に出会う前の12回目の引っ越しは、中古マンションを買おう!と実は思っていたという。
職業がパッケージデザイナーという石井氏は、既製品は使わず、全部自分で作るというこだわりようだ。この部屋のリノベーションも、空間のデザイン画を書き、会社と一緒にオーナーに提案をし、実現させたのだという。1LDKの予定だったところを1ルームにし、寝室との部屋の仕切りは、オリジナルの本棚で。この本棚も、本の高さ、部屋の広さに合わせた寸法で設計し、部屋のイメージをデザイン画におこし、ホームセンターで買ってきた板材で手作り。広々と開放的なオープンキッチンも石井氏の設計。この部屋のアイデアをほとんど提案したとあって、すべてが計算されたようにこの空間にとてもよく合っている。そして、石原氏という人物を物語る。

ゲストスピーカーの話の後は、交流会の時間が用意されている。会場内には軽食や飲み物が用意されており、和やかな雰囲気でスタート。ゲストは皆、TOMOSの入居者や入居検討者など色分けされたネックストラップに、受付時に自分の部屋の間取り図を書いており、それを元に話を弾ませる人も。ゲストスピーカーのお2人も会場に残り、来場者からの質問にもざっくばらんに答えていた。希望者にはグッドルームの社員の方がその場で部屋の相談にのったり、募集中のお部屋の紹介もしてくれる。

石井氏のデザイン画。この部屋の顔ともいえる広々としたキッチン石井氏のデザイン画。この部屋の顔ともいえる広々としたキッチン

カスタマイズ賃貸に住むためには?

左から、グッドルーム株式会社代表取締役 小倉弘之氏、ゲストスピーカーの石井氏左から、グッドルーム株式会社代表取締役 小倉弘之氏、ゲストスピーカーの石井氏

グッドルームの「TOMOS」では、リノベーション工事前に申し込んで、さらにこだわりを追求する人と、工事後に申込む人の割合は半分ずつくらいだそう。入居希望者の要望に合わせてグッドルームで図面を作って提案もしてくれ、渋谷店のショウルームをみながら決めていくことも可能。

「どうしても賃貸といえば、買うまでの仮住まいのような認識をされがちで、あまりグレードがよくない物件も多いです。それをあえて分譲住宅と同じくらいのレベルまでひきあげたいと思いました。一方、中古物件では空き家が増加しています。そこをうまく活用して、新築にお金をかけるのであれば、中古物件をもっとうまく使って、賃貸住宅でも“自分らしい”暮らしを実現していったら良いのではないかと思いました。」
そう語るのは株式会社グッドルームの代表取締役の小倉弘之氏だ。

しかし無垢の床板や、壁紙も選べたり、使い勝手のよいオリジナルのキッチンが完備されていたりと、分譲住宅と同じくらいかそれ以上のグレードで工事費もかかっている分、家賃が高いのではないか、と筆者は思ってしまう。確かに周辺の同じ築年数の物件よりは高いが、同じグレードの新築の物件に比べれば断然安いのだそう。「TOMOS」のカスタマイズ賃貸は、貸す側、借りる側、どちらにもメリットが高い仕組みだと言えそうだ。

「買う方がいいか、賃貸がいいか。よく議論されますが、僕はそういうのを乗り越えて、心地よく住めればどっちでもいいと思います。これまで12回引っ越してきましたが、今の家は引っ越したくないです。」石井氏は言う。
自分らしい暮らしをしたいというニーズや空き家問題が注目される最近の住宅事情。このカスタマイズ賃貸が、そうしたニーズや課題の対策として有効な仕組みになるのではないだろうか。

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