マンションリフォーム・リノベーションの費用。1,000万円以上も2割超に
住宅価格の高騰などの影響から新築着工数は減少しているが、リフォーム時期を迎えたマンションのストック数は増加している。中古のマンションを自分の好みに合わせてリフォーム・リノベーションするケースも多くみられるようになってきた。
パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社が開催したリノベーションセミナーの中で、水廻りシステム事業部マーケティング統括の窪井健司さんは「住宅金融支援機構の調査でも、中古住宅(戸建・マンション)購入時のフラット35利用は伸びています。マンションストック数が増加する中、中古住宅を利用する方、リノベーションを検討する方への提案を改めて考えていく必要があると思っています」と話す。
中古住宅に手を加え暮らしやすい空間を生み出すリフォームやリノベーション。それらの言葉の定義は曖昧な部分もあるが、何かしらの改修・改善を含むリフォームに比べ、リノベーションはより快適性を高めた空間を実現する場合を指すことが多い。パナソニック ハウジングソリューションズがリノベーションを実施した400名に対して行った「リノベーション実態調査」から、マンションリノベーションの実態をみていこう。
まず、リフォーム・リノベーションの費用の平均は614万円。しかし、高い比率なのが「1,000万円以上(21%)」。次に「500万円以上~700万円未満(19%)」、「700万円以上~1,000万円未満(17%)」が続く。
今回の調査対象の居住地は、東京都が31.8%、大阪府は17.0%、神奈川県(横浜市・川崎市)が11.5%と都市部に居住する方が多いため、若干高額になっている可能性もあるかもしれないが、1,000万円以上が多いことに関して窪井さんは「自分らしい住まいを作るためには、ある程度、予算をかけてでもリノベーションを実施したいという人が多くなっていると思います。また、最近では、マンションリノベーションは、都市部だけでなく、地方でも住まいづくりのひとつの選択肢になってきていると感じています」と話す。
リノベーションで重視したのはデザイン性。選択に迷いが
では、リノベーションで重視したポイントは何か。
トップが「デザイン性」で45.8%の方が重視している。次に「間取りや生活家事動線」が30.7%となり、3位は「耐久性」の21.9%。耐久性や機能性などは、基本的で備わっているものと認識しているのか、より暮らしやすさ、使い勝手のよさ、居心地が重視されてきているようだ。
しかし、重視したいと思っているが、具体的な計画段階になると「自分がこうしたい、こういうデザインにしたい」ということを表現できない、という方も多いようだ。
調査からも、「希望するデザインやスタイルを見つけるのが難しかった(34%)」「予算とのバランスが難しかった(32.5%)」「リフォーム業者やデザイナーとの意思疎通がうまくいかなかった(26.8%)」という方が多く、「自分が完成後にどう暮らしたいのか、見つけるのが難しかった」「自分の希望を伝える情報・画像を集めるのが大変だった」などといった声が聞かれ、自分のイメージを明確にすること、伝えることの難しさが見えてくる。
窪井さんは、「以前は、耐久性、メンテナンス、お手入れのしやすさ、などが挙がったが、商品の選定のポイントも最近では変わってきている」と話すように、設備機器や建材を選ぶ際の困りごとにも、デザインやバランスというキーワードが挙がっている。
困ったことは、「デザインやスタイルの選択に困った(34%)」「ピッタリおさめるために特注などで対応できるメーカーが分からなかった(31.3%)」「設備と床材など空間全体のバランスを考えるのが難しかった(26.8%)」など。
マンションリフォームでは、限られた空間の中でいかに希望を取り入れて、きれいにおさめることが必要だということだろう。
リノベーションを実施後、後悔していることは、デザインやカラーリング
リノベーションを実施後の後悔している点はどんなことだろうか。
「デザインやカラーリングの選択に後悔している(22.3%)」「予算をオーバーしてしまった(22%)」「自分の思い描いていた完成(提案)イメージと違った(20.8%)」「間取りに対して暮らし方があわなかった(20%)」など。設計段階であれこれと悩んで選んだデザインでも、完成後に納得できない部分があるということが分かる。
また、もう少しお金をかけておけばよかったと後悔した場所はどこか、という質問に対してトップは「キッチン」で26.3%。次いで「バスルーム(お風呂)」が25.5%、「トイレ」も25%となっている。
「予算をかけておけばよかったのは、トイレ、バスルームなど水まわり設備。もう少しこだわっておけばよかったと後悔する人も多く、設備機器のコストバランスは重要でしょう」と窪井さんは話す。水まわり設備の納得度がリノベーションの大きなポイントとなっていることが読み取れる。
自分のイメージを明確にするために手助けが必要か?
調査結果からも、好みのスタイルやデザインを明確にできる方は多くないことが分かる。
SNSなどによって、さまざまな住まい、インテリアやスタイルを見ることができるが、かえって自分の好みが分からなくなるケースもあるかもしれない。メーカーや施工業者など、提案する側としては、プランニング、設備機器や建材を含め、空間づくりのイメージを明確にするための手助けなど、よりきめ細やかに提供する必要があるかもしれない。
インテリアコーディネーターなどのアドバイスも重要だが、ユーザー自らが行うことができるツールなども求められているようだ。調査でも、「リビングやキッチン、バスルーム設備、ドアや床材などを無料でユーザー自身がカラーコーディネートできるソフトがあれば使いたいと思うか」という質問に対して、86%が「はい」と答えている。
パナソニック ハウジングソリューションズでは、どんな暮らしをしたいのか、どんなスタイルにしたいのか、自分らしさにフィットする暮らしの実現を手助けする「Life Style Fit」を提案している。開発に携わるイノベーション本部 デザインセンター所長の渡辺雅純さんは「6つのライフスタイルと7つのインテリアスタイルとの組み合わせから、ユーザーが好みのリノベーションをプランニングできるようにしたものです」と話す。
「いくつかの簡単な質問から好みやライフスタイルを診断し、おすすめの空間イメージや素材、カラー、小物などを言葉と写真などで確認いただけます。キッチンやバス設備機器、床材や建材のコーディネートも参考にしていただけるように工夫しました」と説明する。
※Life Style Fit 診断ツール
https://sumai.panasonic.jp/life-style-fit/lsf-navi/
膨大な情報の整理、伝え方がリノベーションで重要に
制限のある空間、限られた予算の中で進めるマンションリノベーションは、単なる改修改善ではなく、快適で心地のよい空間づくりが求められている。
多様な情報があふれる中、ユーザーも可能な限り希望に近いデザインやスタイルをイメージし、設計者に伝え、住まいづくりを進めているだろう。しかし、膨大な情報にかえって好みのイメージが分からなくなったり、どう進めていいのか、悩んでしまう方も多くみられることが今回の調査からも読み取れる。
間取りプランはもちろん、設備機器や建材が空間づくりの重要なアイテムとなっている。家具や照明、窓装飾も合わせ、空間全体をトータルに検討すること、デザインバランスだけでなくコストバランスも考慮してプランニングすることは重要なポイントだ。施工業者だけでなく、設備機器や建材メーカーも、商品部材の組み合わせ方、組み合わせによる空間イメージの違いなど、ユーザーに分かりやすく伝えるとともに、ユーザーのイメージを的確に読み取ることがより重要になってくるだろう。
■取材・調査データ協力
パナソニック ハウジングソリューションズ
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