福山駅前の衰退を印象づけた旧CASPAの閉館
広島県福山市は人口約46万人を誇る中核市。広島県南東端・岡山県境の地にあり、広島県南東部から岡山県南西部に至る「備後圏」の中枢都市だ。伝統産業である繊維業のほか、鉄鋼業など「ものづくり」が盛んな都市である。
同市中心部にあるJR福山駅は新幹線「のぞみ」も停車する、街の玄関口。福山城本丸の目の前にあることでも知られる。そのJR福山駅ならびに福山城本丸の南西にあたり、福山駅前ロータリーの西側に位置するエリアが三之丸町(さんのまるちょう)。その名のとおり、エリアの大部分がかつて福山城の三之丸だったことが地名の由来だ。
まさに福山駅前の顔であり、中心市街地の一角を担う三之丸町。2024年、福山駅前ロータリーのすぐ西側に巨大な建造物が現れた。2024年9月1日の正式オープンを目指して準備が進んでいる「NEWCASPA(ニュー キャスパ)」である。福山駅前・福山中心市街地の活性化の起爆剤として、地元で期待されている注目の複合施設だ。
もともと福山駅前ロータリーの西側は、地元の路線バス「鞆鉄道バス(トモテツ)」のバスセンターや商業施設、小規模な商店などが建ち並んでいた。1976年(昭和51年)、トモテツと広島市に本拠を構えるスーパーマーケットチェーンのイズミ(当時は「いづみ」)がこの場所に、共同で商業ビル「福山駅前三之丸共同ビル」をオープン。同ビル内のおもに北側フロアはイズミ、南側フロアはトモテツグループのトモテツセブンが運営する専門店街という構成であった。
1987年(昭和62年)には大幅リニューアルを実施し、施設の名称を新たに「CASPA(キャスパ)」とする。CASPAは「CORE」「ACCORD」「SCRUPULOUS」「PEOPLE」「AREA」の頭文字で、「市街地の核をなし、さまざまな楽しみが調和する、成熟した生活を愛する人たちの新しい領域」という意味が込められていたという。
CASPAにはおもに若者を中心に人気のあるテナントが入り、備後圏を代表するファッションビルとして多くの買い物客を集める。まだ周辺に店舗が少なかった無印良品のほか、スターバックス・コーヒーの中国・四国地方の第一号店が出店し、最盛期には約120店のテナントが入居した。
しかし1999年に郊外へ大型ショッピングモールがオープンするなど、福山市の商業の軸足がしだいに郊外へと移っていく。市民の生活は自動車を前提とした郊外型に変わり、福山市中心市街地の集客力は低下。CASPAにおいても来店者数は減少の一途をたどり、テナントの撤退が相次いだ。そしてついに2012年(平成24年)に、CASPAは閉館する。
福山中心市街地では翌2013年(平成25年)にも、CASPAの西およそ350mのところにあった「福山ロッツ」が閉館。CASPAと福山ロッツという駅前の二大大型商業施設の閉館は、福山中心市街地の衰退を大きく印象づける出来事して地元に衝撃を与えたのである。そのためCASPAの跡地利用は地域の大きな課題であり、市民の関心事であった。
なお福山ロッツは、のち「リム・ふくやま」を経て、現在は「iti SETOUCHI」として営業している。
※参考記事
広島県福山市「iti SETOUCHI」は"屋根のある公園"であり"小さなまち"。まちの未来をつくる大型施設再生の新たな形
6年の時を経て動き始めた旧CASPA跡地の再開発計画
CASPAの閉館からどのような経緯をたどり、NEWCASPAの誕生へと繋がっていたのだろうか。株式会社 トモテツセブンの取締役 不動産部長の沖嶋 浩(おきしま ひろし)さん、穴吹興産 株式会社 広島支店長の佐柳 和憲(さなぎ かずのり)さん、穴吹エンタープライズ 株式会社 公民連携事業部 業務推進室の飛田 苗美(とびた なえみ)さんに話を聞いた。
沖嶋さんは「CASPAの閉館直後から、水面下では閉館後の展開についてさまざまな動きがありました。しかしなかなか効果的な案が生まれず、何度も試行錯誤をしてきたんです。そして2010年代半ばごろに"福山市で事業を展開する企業"という繋がりから、トモテツグループとあなぶきグループ(穴吹興産、穴吹エンタープライズなど)が協力し、旧CASPAの跡地利用に取り組むことになりました。その後、株式会社 キョーエイネクストも参画することになります」と話す。
「人口46万人都市の駅の真ん前です。地域からの期待はものすごく感じました。福山駅前の衰退イメージを払拭し、地域の商業活性化に繋げる必要がある場所です。正直、かなりのプレッシャーがありました」と佐柳さんは振り返る。
飛田さんによると「福山市としても駅前の活性化は重要課題で、市役所に駅周辺再生推進部(当時は駅前再生推進室)が設置されました。駅周辺再生推進部の協力が得られたことは私たちにとって非常に大きかったですね。さまざまな調整をしてくださったり、助言をいただけたりしました。私たち民間事業者と行政が協力できたことは、NEWCASPAの計画を前進させる大きな力となったと思います」と話す。
こうして2018年に、旧CASPA跡地と隣接する「福山と~ぶホテル」の敷地、3,284平方メートルの再開発計画が公式に発表される。2012年の旧CASPAの閉館から約6年が経過していた。翌2019年には、商業施設やオフィス・住居などが入る複合ビル3棟を建設することが発表される。
「備後・福山ならでは」や「尖っている」企業が個性を生かして新しい波を
福山駅前という注目の場所に生まれる、市民の注目を集めるNEWCASPA。NEWCASPAは敷地面積は3,287.55平方メートルで、南棟・中棟・北棟の3棟からなる。北棟は免震構造による地震対策も行われており、3棟はいずれも1〜2階が商業施設だ。
南棟は7階建てで、1〜2階が商業施設、3〜7階はオフィスになる。オフィスが多いため省エネ構造「ZEB Ready(ゼブレディー)」の認証を受けているのが特徴だ。中棟は10階建てで、1〜2階が商業施設、3〜10階がオフィス。北棟は3棟の中でもっとも大きい25階建てとなる。1〜2階が商業施設、3階が商業施設、4階以上が住居(マンション)になっている。住居部分は全部で189戸だ。
沖嶋さんによれば「実をいうと『NEWCASPA』という名称は、建物全体や敷地全体の名称ではないんです。南・中・北棟の3棟にはそれぞれ固有のビル名称があり、各棟1〜2階の商業施設部分を総称してNEWCASPAと呼びます」とのこと。
各棟の名称は 以下のとおり。
● 南棟:トモテツ大手門ビル
● 中棟:キョーエイ三之丸ビル
● 北棟:アルファゲートタワー福山駅前
「2024年5月に『NEWCASPA』の名称を発表しました。CASPA閉館後、CASPAの名前が地元の方々に定着していることを痛感したんです。跡地利用の話の際も『旧CASPA』という表現がよく見られました。地元に根付いた名称を継承しつつ、新たな船出をしようと『NEWCASPA』に名前を決めました」と沖嶋さん。
ただしNEWCASPAと旧CASPAでは「CASPA」の指す意味が異なるという。NEWCASPAの場合は「COMMUNITY」「ACTIVE」「SUSTAINABLE」「PUBLIC」「ASSOCIATE」の頭文字。「みんなが集まり、元気に活動し、持続可能な誰もが参加できる仲間をつくる」という意味が込められているそうだ。
NEWCASPAはコンセプトとして「働く・住む・にぎわいが一体になった福山駅前」を掲げる。飛田さんは「地域と施設がシームレスに繋がることが大切。南・中・北棟の3棟の"横"の繋がり、商業・オフィス・レジデンス(住居)の"縦"の繋がり、そして3棟と福山駅前や三之丸町など周辺エリアとの"面"の繋がり。3つのシームレスな繋がりによって、"集客"ではなく"集遊"を生み出していくことで、中心市街地のにぎわいを創出するのが狙いです」と話す。
もうひとつコンセプトとして掲げているのが「『ひっつきもっつき』なクロスフュージョン」だ。「ひっつきもっつき」は植物のオナモミのこと。実にトゲがあり、衣服などに引っ付くのが特徴。「クロス」は交差を意味する「CROSS」と備後地方の地場産業である繊維産業に絡めて「CLOTH」の意味ももたせている。フュージョンは融合を意味する。
佐柳さんは「『ひっつきもっつき』なクロスフュージョンとは、『福山と日本をリードする企業が融合し、布を編み上げるように経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が紡ぎ合い、『ひっつきもっつき』のように絡み合いながら、新たな化学反応を起こす』という意味です。つまり地元企業や広域で展開するナショナルブランドのうち、"尖った"特色をもった企業同士がNEWCASPAで融合し、新たな展開を生み出していくことをコンセプトとしました」と話す。
「今までのように人気のテナント、おしゃれなテナントをたくさん入居させればいいという時代ではありません。旧CASPAと同じような方法は通用しないと思っています。そのためのキーワードが『備後・福山ならでは』と『尖っている』。これを『備後アルチザン』と私たちは呼んでいます。アルチザンとは熟練の職人を意味する言葉です」佐柳さん。
沖嶋さんは「ナショナルブランドの店でも『どこか尖っている』『特別なこだわりがある』ことがポイントです。地元と全国の特色ある企業がそれぞれ個性を生かすことで、新しい波を生み出せると思っています」と語る。
スニーカー、眼鏡、焼肉、ドリンクなど備後の個性あふれる企業が出店
ここからはNEWCASPAに入居予定のテナントの一部を紹介したい。
北棟1階に入るのが、福山市の北隣・府中市に本拠を構えるスニーカーメーカー・株式会社 スピングルカンパニーの直営店「SPINGLE VINGO GATE(スピングル ヴィンゴ ゲート)」だ。NEWCASPAのグランドオープンより一足早く7月13日にプレオープンした。スピングルカンパニーは府中市の老舗ゴム製品メーカー・株式会社 ニチマンのグループ会社で、ゴム加工や靴製造の技術を活かし、ハンドメイドのレザースニーカー「SPINGLE(スピングル)」を企画・製造・販売している。
FW事業本部 営業部 課長の馬屋原 圭介(うまやはら けいすけ)さんは「本社隣接のギャラリーカフェ兼セレクトショップでもSPINGLEのスニーカーを販売しています。しかしSPINGLEのブランドショップ(専門店)としては、今回が備後初出店。エリアフラッグシップショップと位置づける、本社・工場にもっとも近い直営店です」と話す。
「当店の特徴は備後らしさを押し出している点です。店内は藍色を基調としており、これは備後地方の伝統産業である備後絣(びんごがすり)や、そこから派生したデニム製造などをイメージしています。ほかの直営店にはないアイデアですね」と馬屋原さん。
オープン時には店舗限定商品として、地元の藍染企業が染色したスニーカーも販売された。藍色に染められたのは、広島市の平和記念公園などに捧げられた折り鶴を再生した糸で靴の生地をつくった、生成色の「折り鶴再生スニーカー」だ。ほかにも備後にゆかりのある製品が並べられている。取材時には、備後絣の織元で織られた生地を使用したSPINGLE公式オンラインショップ限定モデルを特別に店頭販売していた。
SPINGLE VINGO GATEと同じく北棟1階に入るのが「メガネの田中 福山本店」。同店もグランドオープンより早い6月29日にプレオープンした。NEWCASPAでもっとも早いプレオープンだ。メガネの田中は広島市に本拠を置く、老舗の眼鏡販売チェーン。福山本店は福山市船町で営業していたが、NEWCASPAへ移転した。
店長の上田 徹也(うえだ てつや)さんは「当店の特徴は、商品棚が従来の眼鏡店に多い配置と異なり、ジグザグになるよう商品棚が置かれていること。さらに商品棚の高さが互い違いになるようになっており、森をイメージした配置にしています。こうすることでお客様が店内を回遊し、楽しめるようにしました。また当社初となる『メガネマスターズアトリエ』ブースを設置。プロの手による眼鏡のメンテナンスを実施しています。またプロの仕事道具や昔の機材などを展示し、新しさの中に『専門性』や『匠』を感じさせるようにしました」と話す。
また焼肉店「Premium焼肉 神石(プレミアム やきにく じんせき)」が9月初旬にオープンを予定している。同店は福山市の北隣・神石高原町の活性化事業を展開する株式会社 MSERRNT(マサーント)が運営。なお同社はPremium焼肉 神石と同時に、NEWCASPA内にドリンクスタンドのオープンも予定している。「終電2分前まで飲めるドリンクスタンド」をコンセプトに掲げているという。
ナショナルブランド店はアウトドアショップやフィットネスジム、喫茶店などが入居
南棟1階に入るのが、新潟県に本拠を構えるアウトドアグッズ販売チェーン「スノーピーク(snow peak)」の直営店「スノーピーク福山」だ。オープン予定日は、NEWCASPAのグランドオープンとなる9月1日。同社は地域の企業と連携したり、地元産業を取り入れたりして地域情報を発信する「地域連携店舗」に力を入れていくという。その地域連携店舗の1号店がスノーピーク福山となる予定だ。
同社の公式サイトによれば「福山市の魅力を国内外に発信し、地域の活性化に寄与することを目的の一つとしており、地元企業と連携し、デニム生地を採用したアパレル製品や福山の技術を生かしたギア製品など『Made in Fukuyama』のコラボレーションアイテムの開発・製造・販売などを行っていきます。また、福山市をより深く知ってもらう、体感してもらうためにLOCAL TOURISM(ローカル・ツーリズム)とも連携し、スノーピークならではの地域に根差した特別な体験を提供していく予定です」とのこと。
また南棟2階に入るのが、「エニタイムフィットネス(ANYTIME FITNESS)福山駅前店」。エニタイムフィットネスはアメリカ発の24時間フィットネスジムチェーンだ。NEWCASPAのグランドオープンの1か月前となる8月1日にプレオープン。会員証があれば、世界のどの店舗でも利用できるのが特徴である。
同店のマネージャー・池部 元彌(いけべ もとや)さんは「当店の特徴は最新の各種マシーンを設置していることです。なかでも注目してほしいのが『プラットフォーム』。足元のグリップが強くて踏ん張りが利くので、高重量のトレーニングもしやすいのが特徴です。利用者の多いランニングマシーンも多数設置しています」と語る。
「駅前という立地ですから、お仕事帰りのご利用を見込んでいます。有料の貸ロッカーもあるので、荷物を置いておけば手ブラでの利用もできます。また福山市は企業が多いため、出張などのビジネス客が多いです。当社は会員になればどの店舗でも利用できるので、ビジネスで福山を訪れた他地域の会員の方にも、ぜひ当店を利用してほしいですね」と池部さんは意気込む。
このほか北棟1階に倉敷市に本拠を構える美容室「BALANCE.(バランス)」が入居する。同店は独自の美容師育成などで注目されている。また北棟2階には喫茶店チェーン「コメダ珈琲店 福山駅前店」、中棟に飲食店などが入居予定。またオフィス部分には金融機関などが入居する予定だ。
施設共有クーポン発行など、駅前を回遊するような仕掛けを模索
NEWCASPAの今後の展望について沖嶋さんは、周辺のエリアや商業施設との連携を深め、福山市中心市街地活性化を図りたいという。JR福山駅構内には「サンステーションテラス福山(さんすて福山)」、駅前ロータリーの南東には「天満屋 福山店」、南西には「アイネス福山」、さらにNEWCASPAのおよそ350mの西には「iti SETOUCHI(イチ セトウチ)」などの施設がある。
「たとえば駅周辺の商業施設などで共通クーポンを発行するなど、お客様が駅前周辺を回遊する仕掛けなどに取り組みたいですね。すでに一部の商業施設では共通クーポンを実施しています。NEWCASPAを含め、クーポンの対象を拡大すれば、お客様は便利になって駅周辺のいろいろな店を回ってみようと思うのではないでしょうか。そのために駅前の各商業施設との連携を深めていきたいですね」と沖嶋さんは展望を語る。
さらに佐柳さんは「自動車社会・郊外型の生活になり、市民の多くは郊外に住んでいます。郊外に住む方にとって、駅前は『駐車場代がかかる』『駐車場が離れていたり、分散したりしている』などの理由で行きづらい印象をもっているんです。『福山駅前なんか……』みたいな言い方をされることもあるほど。だから『何かおもしろい施設があるな』『おもしろそうなことをしているな』と感じてもらい、『たまには駅前にも足を運んでみようか』『おもしろそうなんで、駅前に行ってみたい』と思ってもらえるような施設を目指したいですね」と話す。
いっぽう飛田さんは「駅前という場所ならではの強みを生かしたにぎわい創出をしたいですね。郊外や周辺地域から福山駅前に来ていただくためには、まず通勤・通学などで普段から駅周辺を通る方に利用される施設でないといけないと思います」と語る。
「学生さんから『駅前に行く場所があまりない』という話を聞いたことがありました。そういう方々に『NEWCASPAではかっこいいものを売っているな。これは実は備後のものだったのか!』と思ってもらえるようにアピールしていきたいと考えています。ただし駅前の再生は、まだまだこれからです。今後の動向を注視しつつ、臨機応変に対応しながら、にぎわいを創出していきたいですね」と飛田さんは意気込みを話した。
定住人口増加中の三之丸町周辺はNEWCASPA誕生が追い風に
NEWCASPAのオープンは、周辺エリアではどのように感じられているのだろうか。NEWCASPAの所在する三之丸町は福山駅前ロータリー西側一帯にあたる地区。三之丸町はエリアの東にNEWCASPA、北にさんすて福山、西にiti SETOUCHI、南にアイネス福山、南東に天満屋 福山店があり、大型商業施設に囲まれている。その三之丸町を中心としたエリアの商店で構成されるのが「福山駅前商店会」だ。同商店会の副会長を務める貝原 大和(かいはら やまと)さんに話を聞いた。
貝原さんによると「三之丸町は飲食店だけでなく、飲食店以外の商店の比率が市内他エリアよりも高いのが特徴です。また店主の年齢層が若めなのも特徴ですね。さらに福山駅前エリアはマンションが多く建設されたことで、実は人口が増加しているんです。三之丸町はここ3年ほどで、約1,000人も定住人口が増加する見込み。このような特徴に加え、近隣に官公庁やオフィスも多いこともあり、ランチタイムから営業する飲食店が多いのです」とのこと。
また「旧CASPAが閉館したあと、しばらくは三之丸町でも衰退の兆しが見られました。しかし2010年代後半からは、商店が入れ替わって若い店主が増えたことで、しだいに盛り返してきたんです。新しくおしゃれな店、おもしろい店などが増えました。このタイミングで2023年にiti SETOUCHI、2024年にNEWCASPAがオープンなので、福山駅前商店会にとって大きなプラス材料。両施設にはとても期待しています」と貝原さんは話す。
「三之丸町をはじめ、駅前の定住人口が増えたことはチャンスだと思います。住む人が増えれば、その方々が住み続けるうえで必要なものが自然と駅前にそろってくるのではないでしょうか。私は商店会の飲食店に、ちょっと高額な商品も用意してほしいとお願いしています。レギュラー商品でなくていいので、駅前に住む人やインバウンド需要に合わせた商品を置いて、いつでも対応できるようにする必要を感じているからです。そうでなければ、そのお客様は岡山市や広島市など、他都市へ流れてしまいます。福山駅という交通機関が目の前にありますから」と貝原さん。
「福山駅前商店会としては、NEWCASPAとの連携として、とくに情報発信の面で力を入れていきたいと考えています。NEWCASPAで行われるイベントなどの告知を積極的に発信したいですね。またNEWCASPAの中にはロータリー側と三之丸町側を繋ぐ、大きな公開通路があります。ここをイベントスペースとしても活用できればいいですね。魅力的な使い方、便利になるやり方などがあれば提案させていただければと思います」とNEWCASPAへの期待を寄せる。
また三之丸町の西側にあたる西町にあるのが、「iti SETOUCHI」だ。iti SETOUCHIはちょうど西町と三之丸町の境界に所在し、福山駅前商店会にも属している。かつては百貨店の「福山そごう」だったが閉館し、その後「福山ロッツ」「エフピコ RiM」を経て、建物の1階部分のみを利用して2023年にiti SETOUCHIとして生まれ変わった。福山駅前・三之丸町周辺の大型商業施設跡の再生として、NEWCASPAとは同じような道を歩んでいる。
iti SETOUCHIの支配人・谷口 博輝(たにぐち ひろき)さんは「NEWCASPAの誕生により、三之丸町・福山駅前ロータリー西側エリアという中で、選択肢が増えることは非常に良いことです。NEWCASPAとiti SETOUCHIのあいだに三之丸の街がありますので、双方を気軽に行き来できるよう『エリアプロモーション』に力を入れていきたいと思います。まずは駅前エリアに人を呼び込むこと、次にエリア内を回遊してもらうこと。そのために街中が歩きやすくて滞在しやすくなるようなアイデアを提案したり、実験したりしていきたいです」と意気込む。
福山市民に長年親しまれたCASPAの閉鎖から約12年。動向に福山市民が注目していたCASPA跡地に、ついにNEWCASPAが誕生する。生まれ変わったNEWCASPAと、三之丸町周辺エリア・福山駅前の今後に期待したい。
※取材協力
NEWCASPA会
https://www.instagram.com/new_caspa/
福山駅前商店会
https://sannomaru.info/
iti SETOUCHI
https://iti-setouchi.com/
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