窓の結露を経験したことのある人は約77%

寒い季節になると気になるのが結露。朝起きてカーテンを開ける際、窓のガラスやフレーム(サッシ部分)に付着している水滴に不快感を持つ方も多いのではないだろうか。

結露とは、水蒸気を含む空気が壁などに触れて冷やされることで、空気中の余分な水蒸気がその表面で水滴となる現象。グラスに冷たい水を入れると表面に水滴がつくことをイメージすると分かりやすいだろう。

外気温が低く室内が暖かい冬場の住宅の場合では、直接冷たい外気に接している窓ガラスやフレーム(サッシ)に結露が発生しやすい。断熱が十分ではない建物では、内壁の表面(部屋の隅や置家具の裏側、押し入れなどに)発生することもある。このような窓や壁面など表面に生じるのが表面結露と呼ばれており、壁や建築材料などの構造内部に内部結露として現れることもあるので注意が必要だ。

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前述の表面結露のひとつである窓の結露に関して、YKK APでは、全国各地の計500人を対象に意識調査を実施した。

まず「冬の時期の、現在のお住まいの住居でお悩み」についての質問からみていく。トップはやはり「光熱費がかさむ(暖房費など) (38.8%)」があがっているが、次いで、「窓に発生する結露(36.2%)」、「室内が寒い(35.4%)」という答えが続いている。「結露によるカビの発生(24.4%)」も含めると、結露と寒さは多くの人にとって冬場の悩みであることが分かる。

窓の結露を経験について聞いたところ、経験したことのある人は77.2%。地域別にみると最も多かったのが東北地方(90.5%)、次いで北海道地方(87.3%)と、寒さが厳しい地域では窓の結露を経験している人が特に多い。そのうち窓の結露に悩んでいる人は67.9%という結果となっている。

意外と知られていない窓の結露によるカビの健康被害

家の窓の結露を経験し、悩んだことがある人の「窓の結露に対してのお悩み」をみると,
「カビが発生する(67.6%)」「カーテンが濡れる(56.5%)」、「掃除が大変(44.7%)」などの衛生面。しかし、結露が発生することが問題なのは、不快なだけでなく、建物への被害や健康への影響があることだ。

建物への被害としては、内部結露が進むことで、窓枠や内装材、建築部材が腐朽して建物の寿命を縮めてしまうこと。表面結露は日々拭き取るなどのお手入れをすることで、ある程度は抑えることが可能だろう。

一方、健康への被害は、結露によって付着している水滴を拭き取らずにしておくことで、窓のカーテンや内装にシミが付着、汚れとなるだけでなく、カビやダニの発生の原因ともなること。カビやダニは不衛生であるだけでなく、カビの胞子やダニの死骸やフンは、ぜんそくやアレルギーの一因ともいわれているので注意が必要だ。

調査では、「窓の結露から発生したカビによる健康被害について知っているか」を聞くと、「具体的に知っている」と答えたのは10.2%。「知らない(42%)」、「聞いたことがある程度(47.8%)」であり、カビの発生に悩んでいても、約9割は健康被害について具体的に知らないという結果。結露による健康への被害についても十分に認識しておくことは大切だろう。

カビ研究のプロ・千葉大学 真菌医学研究センター准教授 矢口貴志先生によると、「室内のカビを放置していると人に健康被害を引き起こすリスクが高まります。室内の中でも特に『窓の結露』には要注意です。外気との温度差で窓が結露すると、水分と埃などを栄養源にサッシのゴムパッキンにカビが増殖し、そのカビが窓枠やカーテンにも広がることがあります。カビは増殖し胞子を形成すると、その胞子を大量に吸い込むことによって呼吸器系のアレルギーなどの病気の原因になる可能性もあるので、日頃から結露しづらい環境に整えることが大切です」と話す。

左上:【Q4】窓の結露に対してどんなお悩みがありますか。(N=262)※複数回答 【Q5】窓の結露によるカビがもたらす健康被害について、具体的に知っていますか。 (N=500)※単一回答 下:【Q8】窓の結露に対して、あなたはどのような対策をしていますか。(N=500)※複数回答左上:【Q4】窓の結露に対してどんなお悩みがありますか。(N=262)※複数回答 【Q5】窓の結露によるカビがもたらす健康被害について、具体的に知っていますか。 (N=500)※単一回答 下:【Q8】窓の結露に対して、あなたはどのような対策をしていますか。(N=500)※複数回答

日々行いたいカビ対策とは

では、カビ対策のためには、日々どのようなことを行えばいいのだろうか。現状では、「窓の水けをふき取る」「こまめに換気する」という声が多く聞かれ、「結露予防シート」を取り入れる方もいるようだ。

矢口貴志先生は「カビの栄養となる埃をためないよう日頃から窓を清潔に保ち、こまめに換気することで結露が起きないように心がけたいですね」と話す。

また、自宅の窓の状態のチェックを勧める。「窓で最も汚れやすいサッシのゴムパッキンは、結露によってどの程度カビが潜んでいるか目視でのチェックが可能です。黒い斑点が少しでも見つかれば『注意』。黒い斑点は多数のカビの胞子、菌糸の集合体なのです。カビがこれ以上増えないよう、結露対策をしましょう」とアドバイスする。

結露対策のひとつとして窓リフォームは効果的

しかし、忙しい毎日、気にはなっても、こまめに掃除をするのは難しいかもしれない。結露を防ぎ快適な環境を確保するためにも、断熱性能の高い窓に取り換えるのもひとつの解決策だろう。

窓の取り換え・リフォームに関する意識はどうなのか。調査によると、「自宅の窓はリフォーム可能だと知っているか」という質問に対して、「知らない」「聞いたことはあるがよく知らない」という回答が63.2%という結果。そもそも自宅の窓がリフォームできることを知らない人が多数いることが明確になった。

全回答者に対して、窓リフォームをしたいと思うメリットを聞くと、約半数が「光熱費が削減できる」と答え、「結露防止になる」「住宅の断熱性が向上する」もそれぞれ約4割。家計の負担を軽減でき、快適性がアップすることは窓リフォームの大きな魅力であることは理解されているようだ。

窓リフォームを実施したことが無い人に、その理由を聞くと、「費用がかかりそう」という回答が65.4%でトップ。具体的な費用の目安がイメージできないことも躊躇する理由だろう。また、「補助金がもらえる制度が来年度もあればリフォームしてみたいか」を聞くと、「使ってみたい」「どちらかというと使ってみたい」と、前向きな人が約半数という結果も。窓リフォームは、かかる費用がイメージしにくく、何となく高そう、などイメージがあるものの、補助制度が利用できるのであれば前向きに検討したい人も多くいると考えられるようだ。

<上>【Q9】ご自宅の窓をリフォームすることが可能だということを知っていますか。(N=500)※単一回答  【Q10】窓リフォームを実施していない理由はなんですか。 
(N=460)※複数回答 <下>イメージ写真<上>【Q9】ご自宅の窓をリフォームすることが可能だということを知っていますか。(N=500)※単一回答 【Q10】窓リフォームを実施していない理由はなんですか。 (N=460)※複数回答 <下>イメージ写真

活用したい補助金制度

窓リフォームに関する補助金制度には、環境省が行う「先進的窓リノベ2024事業」がある。これは、断熱窓への改修を促進し既存住宅の省エネ化を促すことで、エネルギー費用負担の軽減、健康で快適なくらしの実現及び家庭からのCO2排出削減に貢献するとともに、断熱窓の生産効率向上による関連産業の競争力強化と成長を実現させることを目的とした事業だ。

窓の改修を行い、改修後の窓の性能が、対象住宅の種類に応じて必要性能の基準を満たすものについて、補助金交付の対象となる。たとえば、戸建住宅の場合、ガラス交換(既存窓を利用しガラスを交換)や内窓設置(既存窓の内側に新たな窓を新設)、外窓交換(既存の窓枠を残して新たな窓で覆う「カバー工法」、もしくは既存窓を取り除き新たな窓に交換する「はつり工法」)を実施し「熱貫流率 Uw1.9以下」が必要性能となる。また、改修を行う住戸のドアを、窓の改修と同一契約内で断熱性能の高いドア(熱貫流率 Ud1.9以下)に改修することでも補助対象となる。

YKK AP 広報室 南雲歩さんによると、補助事業の影響で窓リフォーム商品の売り上げが好調だという。「特に、戸建て・マンション問わず、最短1時間で手軽に取り付けできる内窓(商品名「マドリモ 内窓 プラマードU」)が人気。23年度推定で、売り上げ270%(前年比)です」と話す。

また、通常のリフォームの場合、築年数が経った住宅を持つ50代以上の世帯が多く実施する傾向にあるが、今回の補助事業は一次取得者層も含む幅広い世帯が利用されていたことも特徴的だという。「光熱費の削減や、暑さ・寒さ・騒音対策に効果があり、住環境の向上につながる窓リフォームの効果の認知が高まったことと、その窓リフォームをたいへんお得に実施できる補助事業について、世代を問わず魅力に感じていただけたのかと思います」と南雲さん。

窓1箇所ごとの補助額は、建物種別、窓の性能、大きさにより異なるので、事前にリフォーム施工会社や窓サッシメーカーのホームページなどでチェックすること。検討する工事、製品が対象となっているかも合わせて確認しておきたい。補助額の上限は1戸あたり200万円。1申請あたりの合計補助額が50,000円未満の場合は申請できないので注意が必要だ。

(左)「マドリモ 内窓 プラマードU」施工前 (右)「マドリモ 内窓 プラマードU」施工後(左)「マドリモ 内窓 プラマードU」施工前 (右)「マドリモ 内窓 プラマードU」施工後

注目されている窓商品とは?プランニングのポイント

住まいの断熱性を高め、結露を防ぐための窓リフォームは注目されている。前述のように方法としては、ガラス交換や内窓設置、外窓交換などがある。各メーカーもリフォームをしやすい多様な商品を揃えており、さまざまな条件に対応可能だ。

南雲さんがおすすめするのは、手軽にリフォームできて効果も高い内窓の設置。「その中でも『Low-E複層ガラス・アルゴンガス入り』がおすすめ。ガラスとガラスの間に熱を伝えにくいアルゴンガスを封入することで断熱効果が高まります。また、補助金額においても、Low-E複層ガラスのガス入りの場合Sグレード、ガスなしの場合Aグレードがそれぞれ適用となり、Sグレードの方が補助額は大きくなります。性能とコストの両面で検討いただければと思います」と話す。

また、補助の対象となる玄関ドアのリフォームも窓と同様、断熱仕様によって補助金額が設定されている。短工期で交換が可能な商品もみられるようになってきた。YKK APでもおすすめは、「カバー工法を採用し、1日で最新の玄関ドアに取り換えることができる『ドアリモ 玄関ドア D30』です。窓のリフォームと同様、断熱仕様によって補助金額が設定されているので、対象のデザインかどうか、デザインごとに補助金額も確認いただければと思います。」(南雲さん)

では、具体的に窓商品を選ぶ際には、どのような点に注意すればいいのだろうか。
南雲さんは、「悩みや希望に応じて、どの商品で性能は何を求めるのか。そして、選んだ商品の補助額や省エネによる冷暖房費削減効果も一緒にトータルで検討いただければと思います」とアドバイスする。

(左)「ドアリモ 玄関ドア D30」施工前 (右)「ドアリモ 玄関ドア D30」施工後(左)「ドアリモ 玄関ドア D30」施工前 (右)「ドアリモ 玄関ドア D30」施工後

また、最近では、各メーカーのショールームやリフォーム専用の相談窓口、ホームページなどの充実がみられ、リフォームの情報収集もしやすくなっている。YKK APの場合、仕様別に比較できる「窓・ドアリフォーム省エネ補助金ナビ2024」を公開。南雲さんは「お住まいの地域と窓・ドアのリフォーム箇所数を選択する簡単操作でおすすめの商品仕様と補助金額を3段階で提示。補助金額とともに、省エネによる冷暖房費削減効果(モデルプランによる冷暖房費削減金額)の目安も確認できますので、参考にしてみてください」と話す。

どのようなリフォームを行うとしても、可能であれば、実際にショールームなどで実物を確認することも大切だ。住宅建材商品だけでなく最近の住まい全体の傾向などを知った上で、必要な性能や機能を確認し選ぶようにしたい。

【調査概要】 
調査名 :窓と結露に関する意識調査
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国各地の20歳~69歳の男女 計500人
※北海道/東北/北陸/関東甲信/東海/近畿/中国・四国/九州・沖縄の8エリア別に割付
調査期間:2023年9月15日~9月20日
※調査表・グラフの数字は、表章単位未満を四捨五入しているため、内訳を足し上げても必ずしも合計とは一致しない場合がある。

協力 YKK AP

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