離島特有のエネルギー事情から「住まいの省エネ」が必須課題に
那覇から飛行機で40分。宮古ブルーと称される美しい海に囲まれた沖縄県の離島・宮古島は、2008年に「エコアイランド宮古島宣言」を掲げ、 2018年の「エコアイランド宮古島宣言2.0」へと継承。宮古島市役所を中心に官民一体となってこの15年間エコへの取り組みを続けている。
その背景にあるのは、離島特有のエネルギー問題だ。以前LIFULL HOME’S PRESSでレポートした通り、宮古島では「島内に山がないためダムを造ることができず火力発電に頼らざるを得ない」「電力会社の送電網から外れているため万一の停電時には電力融通がきかない」といった島民の生活維持に関わる大きな課題を抱えている。そのため、太陽光や風力を活用してエネルギー自給率を高め、同時に、各住戸レベルで「エネルギー消費量を削減すること」を呼び掛けている。
そんなエコアイランドへの取り組みの一環として誕生したのが、自然のチカラを使って住まい全体でエネルギー消費量を抑える宮古島流の「エコハウス」だ。
現在宮古島市内には、市役所が管理運営を行う市街地型と、指定管理委託をしている郊外型の2つのエコハウスがあり、地元島民だけでなく島外からの旅行者も宿泊体験ができるようになっている。コロナ禍が終息した2023年からは、宿泊体験の利用者が急増。夏の猛暑の影響もあったせいか省エネ効果への関心度も高まっており、夏休みシーズンの8月には予約が取れないほどの人気ぶりだったという。
宮古島市役所エコアイランド推進課の川根勇太さんに、エコハウス建設の経緯とその成果について話を聞いた。
「閉じつつ開く」をテーマに設計された宮古島流のエコハウス
「宮古島市が市街地型・郊外型の2つのエコハウスを設置したのは2010年のことです。環境省の『21世紀環境共生型住宅モデル整備による建設促進事業』の補助金1億円を活用して建設したもので、応募の中から選ばれた全国20の自治体が、それぞれの地域の気候風土や特色を生かして独自のエコハウスを設計しました。宮古島市では、独立行政法人 建築研究所の指導を受けながら工夫を重ね、蒸暑地域である宮古島の気候風土に相応しい家として誕生したのが“閉じつつ開く”宮古島流のエコハウスです」(以下「」内は川根さん談)
宮古島の気候といえば、多くの人が「南の島の暑さ」を真っ先に思い浮かべると思うが、その他にも島内の住まいづくりで課題とされてきたのは「台風にいかに耐えられる家を造るか?」ということだった。
宮古島には年間平均4.2個の台風が接近し、特に9月に襲来する台風はこれまで何度も島内に甚大な被害をもたらしてきた。その台風から住まいと家族を守り、シェルターとしての機能を果たすためには「閉じる機能」が必要になる。一方で、高温多湿な気候や強烈な日差しのもと、電力消費量を抑えながら快適に過ごすためには「開く機能」が不可欠となる──この矛盾した2つの課題を解決に導く理想の住まいが、国の補助金を受けて完成したというわけだ。
自然風からエアコン依存へ…平均気温上昇によりエネルギー消費量が増加
「今年の夏は全国各地で強烈な暑さが記録されましたが、実は宮古島でもエコハウスが建設された13年前と比べると明らかに“島の気候が暑くなってきている”という実感があります。この100年で宮古島の平均気温は1.5度上昇したと言われています。
1990年代までは、宮古島の各家庭ではエアコンをほとんどつけることなく自然風で生活していました。しかし、最近は高齢者の方の健康面への配慮も含めて、エアコンを設置する家庭が増えています。加えて、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、家電保有台数が増えるにつれて、家庭でのエネルギー消費量も増加しています。
家庭からのCO2排出量を抑えるためには、住宅建設の工夫だけでなく、暮らし方、改修・建替えのライフサイクル全体において、エネルギー消費量や環境負荷が少なく、快適な暮らしを実現する住まいを普及させなくてはいけません。
宮古島市は内閣府の環境モデル都市に認定されていることもあり、『宮古島市環境行動計画』の中でエコハウスの普及促進を明記していますが、その啓発活動の一環として、宿泊体験プランを含めたエコハウスモデル事業を継続して行っています」
大人1泊2000円、子ども1泊1000円で「エコハウス宿泊体験」が可能
▲玄関吹抜けを下から見上げたところ。“閉じつつ開く”を実感できる空間だ。「私自身も実際に感じたことですが、湿気の多い日にエコハウスを訪れると、室内がカラっとしていますし、風を通すことで体感温度がまったく変わります。自然のチカラだけでもこれぐらい心地良い住空間がつくれるということを、多くの人に知っていただきたいですね」市街地型エコハウスの宿泊体験プランは、大人(16歳から)一泊2000円、子ども(0歳~15歳)1000円。チェックインは午後3時30分、チェックアウトは午前9時で、鍵の受け渡しはいずれも市役所職員が対応する。
ベッドメイキングや部屋の清掃は宿泊者が行うことになるほか、あくまでも「エコハウスの住居環境、建築技術等を体験すること」が宿泊の目的となるため、チェックアウト時にはアンケートの提出が義務付けられている。
「実際に宿泊していただくと、多くの利用者の方から“開放感があり、風通しが良くて快適に過ごせた”とか、“近々マイホームを建てる予定があるが、室内杉材や外壁の花ブロックの使い方がとても参考になった”など、好意的なご意見を頂戴しています。この宿泊体験をきっかけに、島内・島外問わずエコハウスへの関心を持つ方が増えてくれれば、私共としても事業のやり甲斐があります」
宿泊体験により省エネへの理解を深め、島内にもっと多くのエコハウスを
「市街地型エコハウスと郊外型エコハウスの総工費は2010年当時で約1憶円。内装に杉の無垢材を使用しているため、費用としてはやや割高な印象がありますが、エネルギー消費量削減によるランニングコストの長期的な節約を考えると、費用対効果の高い住まいになると思います。
今後はエコハウスの省エネの機能性をより多くの市民の方に知っていただけるように周知を継続し、市民の皆さんが自らエコアクションを行動に移す段階まで意識を高めていきたいですね。さらに、エコハウスについては、省エネに関する普及啓発を行うための拠点としても活用していきたいと考えています」
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災害に強く、夏涼しい省エネ住宅──宮古島のエコハウスに採り入れられた様々な工夫は、亜熱帯化が進行中といわれる現在の日本において、家づくりのお手本となりそうだ。なお、エコハウス宿泊体験申込みは、宮古島市役所エコアイランド推進課で電話で受付けを行っている。宮古島流の省エネ住宅の工夫を実際に体験してみたい方は一度問合せてみてはいかがだろうか?
■取材協力/宮古島市役所
https://www.city.miyakojima.lg.jp/gyosei/ecoisland/ecohouse/
■エコハウス宿泊体験に関するお問合せ
電話:0980-73-0950(エコアイランド推進課直通 エコハウス担当まで)
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