鉄道、車移動における交通の要衝で、「都市と自然のベストミックス」を実現している相模原市
人口72万6,373人(2022年12月1日現在)。首都圏南西部、東京都心から約40キロに位置する神奈川県相模原市。
相模原市にはJR東日本、京王電鉄、小田急電鉄合わせて6つの鉄道路線が走り、近年は圏央道「相模原インターチェンジ」と「相模原愛川インターチェンジ」が開業するなど、電車、車ともに交通アクセスがよいのが特徴だ。
都心まで1時間ほどという利便性の高さを持ちながらも山や湖など豊かな自然があるのも人気の理由で、「都市と自然のベストミックス」を実現している。
そんな相模原市の橋本駅付近は、2027年リニア中央新幹線新駅開業に向け、駅前を中心に急ピッチで開発が進行中。リニア誘致の経緯、駅前開発で留意していることなどを、相模原市 都市建設局 リニア駅周辺まちづくり部 リニア駅周辺まちづくり課の清浦さんにお聞きした。
リニア中央新幹線新駅誘致への経緯
品川~名古屋~大阪間を67分で結ぶ予定のリニア中央新幹線。東名阪の三大都市圏を高速でつなぐビッグプロジェクトの神奈川県駅(仮称)誘致の経緯をお聞きした。
「元々神奈川県を筆頭に、リニア中央新幹線の早期建設と県内停車駅設置の実現を目指して、1990年(平成2年)6月に『リニア中央新幹線建設促進神奈川県期成同盟会』が立ち上げられました。その後橋本駅周辺への駅誘致について県と相模原市が合意し、JR東海に対して要望活動を行った結果、2013年(平成25年)9月に橋本駅周辺に神奈川県駅(仮称)が設置されることが決まりました」(清浦さん)
県内でもほかの街も候補にあった中で、相模原市橋本駅付近に決まった理由は何だろうか。
「橋本駅にはJR東日本さんや京王電鉄さんを合わせて3路線が乗り入れており、交通アクセスが非常によい場所ということがあったのではないでしょうか」と清浦さんは推察する。
そんな橋本駅周辺の現在の様子についてお聞きした。
「橋本駅を中心に南北で見ると、北口は再開発がされており、商業系の土地利用が多く、一部に集合住宅などの土地利用が見られます。一方、駅南口は既存住宅や相原高校が立地されていましたが、リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)が設置されることをきっかけに高校が移転しており、駅前の一等地に大きな空き地が存在している状況です。現在橋本駅にはJR横浜線と相模線、京王相模原線が乗り入れており利便性が高い駅となっていますが、今回のリニア中央新幹線新駅開業により、交通の要衝としての機能がより一層強化されると思います」
「駅まち一体牽引ゾーン」のほか計4つのゾーニングで開発を進行中
橋本駅南口周辺の整備について相模原市は、2023年3月に土地区画整理事業と街路事業を都市計画決定した。土地区画整理事業の対象範囲は、駅南口の県立相原高校跡地を中心とした約13.7ヘクタール。
相模原市では橋本駅周辺整備推進事業について、特色ある都市機能を誘導するための4つのゾーニングを計画。
交通拠点、オフィスなどが想定され、多様な人々の往来を生かし、まちの顔として中心的な賑わいを形成し、駅を起点としたまちの利便性の向上と、駅とまちの一体感の醸成、まち全体へ賑わいを広げる『駅まち一体牽引ゾーン』。
交通拠点やイベントスペース、宿泊施設などが想定され、圏域全体の観光、物産、産業等に関する交流・発信機能や交通広場と連携した交通結節機能、広場機能の導入を図るとともに、まちの発展に合わせた様々なトライアルを実践し、まちの新たな魅力を創造する『広域交流ゾーン』。
オフィスや商業、飲食、福祉、医療施設などが想定され、子どもから高齢者まで様々な世代の活動を支える複合的な都市機能の導入を図り、働きやすさ、過ごしやすさを兼ね備えた、橋本ならではのライフスタイルを実現する『複合都市機能ゾーン』。
展示場やホール、行政窓口、研究施設、宿泊施設などが想定され、研究、インキュベーション、交流等の機能導入を図り、広域から高度人材が集まる交流・連携の拠点として、圏域内外のものづくり産業のさらなる発展や新たな技術創造を牽引する『ものづくり産業交流ゾーン』の4つに分け、各ゾーン間の機能連携による循環・発展を期待しているという。
「ある程度このような機能を持っていきたいということはお示ししているのですが、まだ具体的には決まっておりません。今年(2023年)の秋口ぐらいにガイドラインを策定させていただき、実際にここでどのような建物を建てるかということを民間の企業が土地利用の基準などに基づいて建物を建てていくという流れになっています」(清浦さん)
開発は、リニア中央新幹線開業によるまちの分断化が起きないように配慮
お話をお聞きした、相模原市 リニア駅周辺まちづくり課の清浦弘嗣さん。「具体的な開発はこれからになりますが、今後基盤を整備し、土地利用を適切に誘導するためのまちづくりガイドラインを策定していく中で、市民の皆様のご意見をうかがいながら必要な機能などを検討してまいります。相模原市は都心からの利便性の高さを持ちながらも川や山を身近に感じることができる自然豊かなまちです。ぜひ遊びにお越しください」大規模な開発が進行中の橋本駅南口。リニア中央新幹線開業に伴う開発で一番配慮したことは何だったのだろうか?
「リニア中央新幹線の新駅が地下に設置されることから、土地利用を一番合理的に使えるように関係者と検討した結果、リニア駅の上を道路とし、まちが分断されないような基盤配置を行いました。今後、基盤整備を行いながら土地利用を誘導するまちづくりガイドラインを策定しますが、建物ですぐに埋めてしまうのではなく、実証実験を行うなどしてその時々の状況に合わせながら、可変的な対応ができるまちにすることが重要と考えています」(清浦さん)
ビッグプロジェクトに携わる喜びがある一方、開発をすすめる上でのご苦労についてもお聞きした。
「実際にお話をするのが市民の方々もいれば、土地を所有している行政や企業の方だったりします。そのため、話を進める相手が多岐にわたっているので、調整するのが難しいと感じています。意思決定をする際にも、大企業ですとどうしても時間がかかってしまいます。そのような意味でもまちづくりには多くの時間が必要ということが今回実感したことですね」(清浦さん)
総合計画において、市の将来像として「潤いと活力に満ち、笑顔と希望があふれるまち さがみはら」を掲げている相模原市。人口減少や少子高齢化が進行する中においても、将来像の実現に向けて、少子化対策、雇用促進対策、中山間地域対策を重点的に取り組むテーマとして進めている。
特に相模原駅周辺、相模大野駅周辺、そして橋本駅周辺と賑わいを見せる相模原市。リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)開業によるますますの発展を楽しみに待ちたいと思う。
■取材協力/相模原市 都市建設局 リニア駅周辺まちづくり部 リニア駅周辺まちづくり課
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