ウッドショック再来の可能性

カナダでのウエスタン・レッド・シーダーの巨木を切った後の切株。白いヘルメットをかぶっているのが河野氏。カナダ在住で世界の木材事情に詳しいカナダでのウエスタン・レッド・シーダーの巨木を切った後の切株。白いヘルメットをかぶっているのが河野氏。カナダ在住で世界の木材事情に詳しい

多くの日本の家は木でできている。そして日本の国土の3分の2は森林である。しかし家づくりに使われる木材の半分以上は輸入材である。

ウッドショックとは、コロナ禍をキッカケにした世界的な木材価格の高騰のことである。日本でも輸入木材の価格が高騰。住宅価格の上昇や納期の遅れなど住宅業界に大きな打撃を与えた。

現在、ウッドショックはいったん落ち着いてはいる。しかしこの先、日本の木材輸入の大きな相手国であるカナダからの木材購入が難しくなりつつあり、それが新たなウッドショックを引き起こす可能性があるという。

今回は、日本への木材輸出を手掛けるカナダの木材会社「Dadi Trading(Canada)Inc.」販売商品開発マネージャーの河野茂氏に、輸入木材の最新事情や、希少な木材の危機的状況、ウッドショックの可能性とこれからの課題、SDGs実現への木材活用法などを聞いた。

河野氏はカナダ在住で木材の仕入れなどで各国を飛び回っていて、世界の木材事情にも詳しい。現地での最新の写真も交えてご紹介しよう。

カナダでのウエスタン・レッド・シーダーの巨木を切った後の切株。白いヘルメットをかぶっているのが河野氏。カナダ在住で世界の木材事情に詳しい伐採後、丸太を運び出し製材を行う。河野氏自ら製材の品質の確認を行っている様子

ウッドショックのリバウンド現象で工場の閉鎖も

現在、木材価格は下がっている。にもかかわらず、ウッドショックの再来の可能性があるのはなぜなのだろうか?

「昨今のウッドショックは落ち着いたものの、バイヤーが当時に焦って購入した木材が多くの在庫となっています。その結果、例えば2×4(ツーバイフォー)住宅に多く使われる主要樹種のSPF(Spruce Pine Fir)材の価格が大きく値下がりをしています」と河野氏は語る。

カナダの工場で生産されている2×4住宅に使われる主要樹種のSPF材。ウッドショックのリバウンドで値下がりをしているというカナダの工場で生産されている2×4住宅に使われる主要樹種のSPF材。ウッドショックのリバウンドで値下がりをしているという

木材価格は市場での需要と供給で、常に上下に動きながら推移をする。

現在は、いわゆるウッドショック後のリバウンド現象ともいえる「木あまり」の状態にあり、それが現地の工場経営に大きな影響を与えているという。

「現在カナダのSPF生産工場では、木材市場価格が生産コストを大きく下回った状態です。カナダで木材を生産すればするだけ赤字が膨らむ状況にあるのです。そのため大手工場の多くが生産調整(工場一時閉鎖)を行っており、中には永久閉鎖を発表した工場もあります」

ウッドショックの後遺症は想像以上に大きいと河野氏。このままいくと今後の日本の住宅着工棟数次第では木材の供給量が追い付かなくなり、再び価格が高騰する可能性があるという。

「今の状況が長引けば長引くほど、日本の住宅着工が活発化した際に、カナダの製材工場が日本の需要に応えることは難しくなるでしょう。需要が増えたからといってすぐに工場再開はできません。特に国産では入手が難しい大きなサイズが不足することが予想されます」

日本と同じように木材需要の多いお隣りの中国ではどのような状況なのだろうか。中国は現在、未曾有の建設ラッシュで、世界な木材輸入大国である。

「中国ではウッドショックの建築への影響はそれほどありませんでした。中国は、世界中から丸太や木材製品を購入できる力があり、また大きな木材需要があるので、港では常に在庫が回転し続けています」と河野氏。強い経済力で買い付け勝負に勝ち続けているというわけだ。

そこで気になるのが日本の木材の「買い負け」だが、日本の木造建築の構造材においては、現状は中国とバッティングすることは殆どないそうだ。しかし楽器や内装仕上げ材の樹種に関しては重なる部分があり、今後はそういった方面で影響が出る可能性はあるとのことだった。

カナダの工場で生産されている2×4住宅に使われる主要樹種のSPF材。ウッドショックのリバウンドで値下がりをしているという日本国内の木材倉庫の様子。現状、余剰の港頭在庫は少しずつ減ってきているとのことだが、サイズによっては数か月分はあるという
カナダの工場で生産されている2×4住宅に使われる主要樹種のSPF材。ウッドショックのリバウンドで値下がりをしているという中国の製材所の丸太在庫。中国と日本では輸入する木材の品質が異なり、日本ではより高品質な木材需要が大きいそうである

今後入手が困難になる可能性がある樹種

SPF材だけでなく、この先は入手が難しくなる樹種があるという。

「ウエスタン・レッド・シーダー/Western Red Cedar(米杉)、ダグラス・ファー/Douglas Fir(米松)、ヘムロック/Hemlock(米栂)、イエロー・シーダー/Yellow Cedar(米ヒバ)、シトカ・スプルス/Sitka Spruce(トウヒ)などのハイグレード材は、現在も価格の崩れはそれほどありません。むしろ入手が難しくなりつつあり、この先は価格が高くなる傾向にあります」

これらはどれも日本の家づくりには欠かせない木材である。中でもウエスタン・レッド・シーダーはカナダの特産で人気の針葉樹である。日本では米杉と呼ばれているが「スギ」ではなく、ヒノキ科ネズコ属類に属する。

ウエスタン・レッド・シーダーを伐採している様子。素晴らしい巨木。カナダならではのダイナミックな光景だウエスタン・レッド・シーダーを伐採している様子。素晴らしい巨木。カナダならではのダイナミックな光景だ
ウエスタン・レッド・シーダーを伐採している様子。素晴らしい巨木。カナダならではのダイナミックな光景だウエスタン・レッド・シーダーをふんだんに使ったウッドデッキ。水に強い特性があるので、外装材やウッドデッキ、サウナの内装にも使われる

ウエスタン・レッド・シーダーは美しい木目を持ち、高耐久で加工性に優れているため、日本では外装や内装、ウッドデッキ、音響、DIYの材料として人気がある。また水に強い特性があるため、近年のサウナブームでウエスタン・レッド・シーダーを使ったサウナも人気になっているそうだ。

日本ではウエスタン・レッド・シーダーの多くをカナダから輸入している。しかし、現地では政府による環境保護のため、「伐採の禁止区域」が定められるなどにより在庫が減少。既に価格が高騰しているという。

「ウエスタン・レッド・シーダーだけではありません。ダグラス・ファー(米松)も日本市場では入手が難しい状況になりつつあります」と河野氏。

米松は丈夫で強く、日本の建築材として広く使用されてきた木材だ。

「これまで米松丸太は主に北米から輸入をしていました。しかし、日本が求める価格が安く、現在は北米からの入手は難しくなってきています」

輸入木材は現在は一時よりは落ち着いているが、樹種によっては依然高い価格で推移をしている。
「生産や輸送面で電気、ガス、ガソリンなど、化石燃料からなるエネルギーを使うため、生産コストが更に上昇しているからです。今後もこの傾向は大きく変わることはないでしょう」とのことだった。

ウエスタン・レッド・シーダーを伐採している様子。素晴らしい巨木。カナダならではのダイナミックな光景だ製材の輸入物価指数。ピークアウトはしているものの、依然高い価格で推移をしているのが分かる(経済産業省 どうなったウッドショックより)

国産材だけでは賄えない現状

輸入材の価格は変動が激しく、自国でのコントロールが難しい。国産材なら輸入材に比べて価格のコントロールがしやすく、価格も安定させることができるのではないだろうか。しかし日本の木材自給率は40%~50%程度。なぜ国産材だけで賄えないのだろうか。

一般社団法人日本木造住宅産業協会によるアンケート調査 (※)によると、住宅メーカー等が木造軸組工法(柱と梁を組み合わせて建てる日本で古くからある工法、在来工法)の住宅において国産材を使用しない主な理由として以下を挙げている。

・外国産材に比べて価格が高い
・必要な時に必要な量が確保できない
・外国産材に比べて強度など品質が劣る
・量が大きくなると価格が上がる など

現在、在来工法で使用されている輸入木材は、米松、米栂、欧州ホワイトウッド、欧州レッドウッド、北洋材などである。

「やはり価格が問題なのです。それと国産材は大量生産が難しい、大口径の丸太が少ないのもあります」と河野氏。

日本は森林の国ではあるが、林業は衰退している。手入れがされていない森では製材向きの大樹は育ちにくい。また大型の製材所が少ないなどのインフラ整備不足、人材不足などの要因もある。

カナダの製材工場。木材の大量生産をしている大規模工場だ。カナダにはこういった工場が数多くあり、インフラも整備されているカナダの製材工場。木材の大量生産をしている大規模工場だ。カナダにはこういった工場が数多くあり、インフラも整備されている

そういった状況の中、昨今のウッドショックによる輸入材の価格の高騰と品薄から、国産材を使おうとする動きも生まれている。国もウッドショックへの備えとして、国産材転換支援緊急対策事業をスタート。運搬経費や設備投資などへの補助金を充実させるなどの動きが見られる。

「ウッドショックで北米からの木材の価格が上昇。国産材の価格のほうが安いタイミングもあり、国産材に一気に注目が集まりました。しかし現在はまた輸入材が安くなりつつあります。そうなるとまた国産材から離れ、輸入材に頼るといった方向転換がいつでも起きる可能性があります」とのこと。

消費者はもちろん施工者も安心して家づくりにのぞむためには、木材価格を安定させることが必須となる。そのためには安定した供給が必要だが、輸入材に依存している現状ではいつ何時ウッドショックが起きるか分からない。その解決策のひとつとなる国産材の活用も少しずつは進んではいるものの、まだまだ問題は山積み状態のようである。
(※林野庁 令和3年度 森林・林業白書より)

カナダの製材工場。木材の大量生産をしている大規模工場だ。カナダにはこういった工場が数多くあり、インフラも整備されているカナダで2×4材を大量生産している様子。圧倒的な物量だ

カナダより安い欧州の木材、国産の2×4材も

カナダ産の2×4材。加工がしやすく、使い勝手のいいサイズなのでホームセンターでDIY用として購入された方もいることだろうカナダ産の2×4材。加工がしやすく、使い勝手のいいサイズなのでホームセンターでDIY用として購入された方もいることだろう

2×4工法に使用される2×4材も、主には先述のSPF材であるが、その多くが北米や欧州からの輸入となっている。

2×4工法は北米で生まれた木造工法である。枠組み壁工法とも呼ばれ、2×4インチもしくは2×6,2×8などのサイズの板と構造用合板を組み合わせて建てる。地震に強く、断熱、気密性も高いのが特徴で、日本の木造新築住宅の約20%がこの枠組み壁工法で建てられている。

カナダの大規模工場で生産される2×4材は、コストが安く品質も高い。しかし欧州は更に安いという。それは木材の活用方法が異なるからだそうだ。

「カナダは丸太をスキャンしてそこから可能な限り木材を作り出します。欧州は欲しいサイズを切り取った後、残りはパルプチップとして砕くんです。だから日本で生産しにくいサイズだけを安く仕入れるといったことができます」とのこと。

カナダ産の2×4材。加工がしやすく、使い勝手のいいサイズなのでホームセンターでDIY用として購入された方もいることだろうカナダの製材所では、コンピューターで丸太をスキャン。どのように木取りを行っていくかを綿密に計算する。1本の丸太から可能な限り木材を生産するためである

これまで2×4材といえば輸入材の独壇場であったが、最近では国産の2×4材も使われるようになっている。

「ウッドショックをきっかけに、日本国内の2×4材を生産する工場も増えています。現在、2×4工法では輸入材が圧倒的な独壇場となっていますが、昨今では日本の杉やヒノキなどの2×4材、エンジニア・ウッド(工業生産木)も登場しています」と河野氏。

しかしそれらが広まるかはやはり価格次第で、またサイズの問題も大きいという。

「現在、輸入の2×4材の価格は下がってきています。また国産の多くは2×4,2×6サイズ。2階の床根太などに使われる2×10などの大きなサイズの供給や、生産工場は少ないのです」

日本には杉がたくさんある。中には大きく育ちすぎている木もあると聞く。しかしかつて盛んだった林業は既に衰退し、荒れ放題の山も少なくない。国産材を増やすためには、利用促進のための技術開発はもちろん、新たな森林管理システムの構築や産業構造の見直しが急ぎ必要となっているのである。

カナダ産の2×4材。加工がしやすく、使い勝手のいいサイズなのでホームセンターでDIY用として購入された方もいることだろう2×4材を生産しているカナダの工場の様子。高速機械により、1分当たりの生産量はスタッド材(柱材)で300本にも及ぶ

ウエスタン・レッド・シーダーの危機

うっそうと茂る木々。カナダの森。左に見える大きな木がウエスタン・レッド・シーダー。後ろの方には、ヘムロック(米栂)もうっそうと茂る木々。カナダの森。左に見える大きな木がウエスタン・レッド・シーダー。後ろの方には、ヘムロック(米栂)も

さて、今後入手が難しくなる樹種として、河野氏が冒頭に挙げたのがウエスタン・レッド・シーダーである。その辺りのことを詳しく聞いてみた。

「ウエスタン・レッド・シーダーは針葉樹の中で最も優れた耐久性を持ち、湿気、腐朽、虫害に対する耐性が自然に備わっています。 この耐久性は主にツヤプリシンという抽出成分によるものです。 木材腐朽菌に対しても、水溶性のフェノリックスが耐久性を高める役割を果たしています」

ウエスタン・レッド・シーダーは、寸法の狂いが少ないといった性能面はもとより、その美しさが最大の特徴である。赤褐色から淡黄色への色の濃淡があり、その自然素材ならではの色合いが住宅の内外に豊かな表情を生み出す。

そしてその香りがまた素晴らしい。ヒノキのようにとてもいい木の香りがただよう。

「この木が現在、入手がとても難しくなってきています。既にウエスタン・レッド・シーダーを生産する専用工場はすべて閉鎖されています。丸太の入手に限りがあり、専用工場として生産することができなくなっているからです」

ウエスタン・レッド・シーダーはカナダの先住民に「生命の木」として崇拝され、カヌー、トーテムポールに利用され、樹皮は編んで敷き物、衣服、帽子などに使われきた聖なる木でもある。

うっそうと茂る木々。カナダの森。左に見える大きな木がウエスタン・レッド・シーダー。後ろの方には、ヘムロック(米栂)も先住民の工房にて。生命の木であるウエスタン・レッド・シーダーでカヤックを製作。水に強い木だからこそできる

「現存しているウエスタン・レッド・シーダーの木々の多くは原生林の側に生息をしています。現在、原生林の保護活動により、原生林の伐採は基本的には禁止です。保護区域周辺での伐採も難しい状況になってきています」

もともと希少で価値の高い樹種である。もし不足したり高騰したりした場合はどうなるのだろうか。

「市場から消えてしまうことでしょう。品質やコスト、流通などあらゆる面から検討して代替品はありません。強いて言えばイエロー・シーダー(米ヒバ)でしょうか。が、こちらは更に見ることが難しい樹種になってきています」とのこと。

ウエスタン・レッド・シーダーは憧れの外装材として、また高耐久なウッドデッキ材としてなど、設計事務所を営む筆者にとっても身近な木である。それが消えてしまうかもしれないという話は衝撃的であった。

うっそうと茂る木々。カナダの森。左に見える大きな木がウエスタン・レッド・シーダー。後ろの方には、ヘムロック(米栂)も山火事の煙がハイウェー沿いに流れてきている。気候変動による温暖化の影響もあり、カナダでは近年、万年雪がどんどん溶けているという。春が短く急に夏が来たような天候に直面し、例年よりも早い山火事が既に90か所で発生(2023年5月20日現在)、多くの木々が消失しているという
うっそうと茂る木々。カナダの森。左に見える大きな木がウエスタン・レッド・シーダー。後ろの方には、ヘムロック(米栂)も温暖化による急な雪解けで、鉄道の鉄橋ギリギリまで川の水位が上昇している。カナダのブリティッシュコロンビア州の港町プリンス・ルパートまで80km程の距離の山間部

SDGsへの課題。日本の「いただきます」と通じるカナダの伐採方法

昔ながらの伐採方法。この巨木をチェーンソーと斧で切り倒す。先住民との連携が欠かせない昔ながらの伐採方法。この巨木をチェーンソーと斧で切り倒す。先住民との連携が欠かせない

そのような難しい状況の中、ウエスタン・レッド・シーダーはどのように伐採がされているのだろうか。

「伐採には先住民との連携が欠かせません。先住民の方々とプロジェクトを組み、昔ながらのチェーンソーと斧を使って行っています」と河野氏。

カナダは長年にわたりクリアカット、つまり一定地域にある樹木を「皆伐」する手法を取ってきたという。皆伐は大量生産には必要なプロセスであり、植樹によって樹林のコントロールもしやすいとされてきた。

しかし昨今、この皆伐が環境や生態系に大きな影響を与えるとして問題になっている。

「クリアカット後の問題点が指摘され、伐採方法が変わってきています。私が一緒にプロジェクトを進めている先住民の方々は、成長をした木のみを伐採するリテンション・ロギングや、皆伐後に枯れかけていたり倒れかけていたりする木を手斧で伐採するサルベイジ・ロギングを行っています。これはわれわれが本当に必要なときに木々の命をいただいて生かしてもらう、という考え方が根底に流れています。日本人が食事前に『いただきます』と言うのと似た感覚なのです」

昔ながらの伐採方法。この巨木をチェーンソーと斧で切り倒す。先住民との連携が欠かせない成長した木のみを伐採するリテンション・ロギング後の様子。大きめの木を伐採して若木を育てる

現在、カナダではSDGs実現のための木材活用が進んでいるという。そもそも木に対する考え方や活用方法が日本とは異なるところも多いそうだ。

「日本では、大は小を兼ねるということわざのように、長い木材を持っていれば、どんなサイズにも切ることができると考える方が多いんです。それだけムダも出やすい傾向にあります。加えて、より高品質なものを求めるので日本向けの木材1本を作るために、10本以上の木材を作ってその中の1本しか出荷できないといったケースもあります。日本から木材を購入される方々は、マグロでいうと大トロや中トロの部分だけを求められ、残りの材は不要とする傾向が強いのです」と河野氏。

貴重な木の多くが日本では使えていないというのは非常にもったいないことである。野菜でも曲がったキュウリはなかなか売れないというのと同じ構図のようで、そういった不揃い品を日本へ出すことはできないのかを聞いてみたところ、即座にクレームになるので難しいとのことだった。

「今後、希少な樹種の供給はどんどん厳しくなります。どんな部位でも残すことなく使い切ることが自然と共存するSDG’sなのではないでしょうか」

河野氏は現在、打ち捨てられがちな木材を有効利用するために、日本で製材として使用するのが難しい部位を使った建築用資材の開発や販売促進に力を入れているという。

すべての資源は有限である。木も人間に都合がいいように勝手に生えてくるわけでもなければ、大きな木だからといってすぐに便利な木材になるわけでもない。

わが家の柱が、フローリングがどこで生まれ育ったのか。誰がそれを伐採し、製材し、運び、組み立てたのか。そこに思いを馳せるだけでも、木を大切にしたいという気持ちにつながり、世の中が変わっていくかもしれない。

ウッドショックの向こう側には、環境問題や産業構造などさまざまな課題が存在している。このままいけば、ウッドショックは何度でも繰り返し到来することだろう。今後の動向を注意深く見守りたい。

取材協力・写真提供:Dadi Trading(Canada)Inc.河野茂氏

昔ながらの伐採方法。この巨木をチェーンソーと斧で切り倒す。先住民との連携が欠かせない枯れかけていたり倒れかけていたりする木を手斧で伐採するサルベイジ・ロギング。こちらは既に風で倒され根っこ(右側)まで上に出てしまっている大木。左が河野氏、右が先住民の作業責任者

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