予算が立てやすい定額制リフォーム、ただしトラブルも
リフォームへの不安といえば費用のことである。同じキッチンを入れても、現状や工事範囲によって費用は変わり、これくらいなら大丈夫と思っていたことが高くついてしまったり、逆に高そうだからと諦めたことが意外と安価に叶えられることだったりといったことが起きる。
またリフォームでは、見積もりを取ると予算よりも大幅にオーバーしているケースが少なくないため、費用感がつかみにくく、資金計画が立てにくいことが少なくない。
そこで登場したのが「定額制リフォーム」である。
これまでの一般的なリフォームは、要望に合わせてプランを立て、その内容に即した見積もりを算出する、いわゆる「オーダーメイド方式」である。
定額制リフォームとは、平米や坪など面積単位で定価を定め、リフォームが実施できる仕組みである。一戸建てとマンションの両方があるが、構造部分の工事の必要がなく、物件間で大きな費用の差異が出にくいマンションを中心に、さまざまなリフォーム会社で展開されている。
ただし定額制ならではのトラブルや問題もあり、依頼の際には注意が必要だ。今回は定額制リフォームを実施している三菱地所ホーム株式会社に上手に依頼をするコツやトラブルを防ぐポイントを聞いた。
定額制リフォームのメリットとデメリット、会社ごとに異なる中身
定額制リフォームは、基本的に床面積全体が対象になっていて、面積単位で定価が設定されている。
例えば、70平米の床面積のマンションの全面リフォームなら500万円、80平米なら600万円、そこから1平米増えるごとに費用が加算されるといった仕組みや、70平米の場合は1平米あたり10万円の単価で計算するといった仕組みなどがある。
定額制リフォームのメリットは、面積単価で計算するので費用が分かりやすく予算が立てやすいこと、オーダーメイド方式より価格を安く抑えやすいこと、決められた範囲内で選ぶので楽にリフォームができることがある。
デメリットは、決められた範囲内でのリフォームなので、希望の製品が無い場合があること、標準工事から外れる場合はオプションとなりかえって費用が高くつくことがあることだ。また家全体のリフォームを前提としていることが多いため、不必要な部分の減額ができないこともある。
注意したいのが、マンションの定額制リフォームは、会社やプランによって費用の算出方法や工事の中身、選べる設備の範囲やグレードなどが大きく異なることだ。
例えば、水回りと内装の交換がセットになっていて、決められた一定範囲内の製品群から自分で選んで組み合わせるもの。インテリアコーディネーターなどによってセレクトされた設備や建材がデザイン別にセットアップされていて、そこから好みのスタイルを選ぶもの。間仕切りや配管などすべてを撤去しスケルトンにして、間取りを含めて自由設計ができるものなどがある。選べる設備の種類やグレードもさまざまだ。
大事なことは、リフォームの中身が自分の希望と合っているかをよく吟味することにある。まずは工事範囲が納得のいくものであるか、必要なことを満たしているか、不必要なものが入っていないか、欲しい設備や建材が選べる範囲に含まれているかなどをよく確認しよう。
自分で上手に選ぶ自信がない場合は、インテリアコーディネーターサービスの有無もチェックしておくといい。プロによって既にセットアップされたスタイルから選べば、手軽に完成度が高い空間を作ることができ、時間の節約にもなる。この手軽さは定額制ならではのメリットのひとつだ。
個性的にしたい、こだわりのリフォームをしたい場合は定額制リフォームのメリットは薄れるため、自由設計のスケルトンリフォームや、オーダーメイド方式でのリフォームがいいだろう。
また定額制リフォームは一軒丸ごとであることが前提条件の一つになる。キッチン、洗面、トイレ、浴室など水回りだけのリフォームをしたい場合は、水回り4点をまとめて更新するパッケージ商品を利用するほうがいいだろう。
リフォームは時価? 定額制リフォームなら相談しやすい
定額制マンションリフォームのメニューのひとつRe Dia (リディア)で選ぶことができるカラーバリエーションの確認ができる「三菱地所のリフォーム」リフォームショールーム。プロによるセットアッププランなので、手軽に高品質な空間が実現できる。ショールームは完全予約制で、他にも検討者が製品を確認できる施設が準備されているさて、今回お話を伺った三菱地所ホームは、高品質なオーダーメイド方式のリフォーム、デザインリフォームを得意とする会社である。
それなのになぜ定額制リフォームなのか、そのあたりのことを三菱地所ホーム株式会社リフォーム事業推進部の山本敦子氏と、「三菱地所のレジデンスクラブ」黒岩淳巳氏に伺ってみた。
三菱地所ホームが定額制リフォームをスタートしたキッカケは、目安の金額を示すことで気軽に相談をしてもらうためだったと山本氏はいう。
「リフォームをしたいと思っていても、仕上がり、価格やリフォーム期間など、具体的にわからないまま、なかなか実現に進まない方は多いと思います。また当社は高額で大きなリフォームしか実施しないイメージを持たれがちです。
定額を開示することで費用への不安感を払拭し、リフォーム検討のきっかけにしていただきたくて、定額制リフォームをスタートしました」
リフォームは費用の分かりにくさから「時価」のイメージもあり、足踏みしている人も少なくないことだろう。定価が表示されていて金額の目安が分かれば相談がしやすい。
「実際に、リフォームの内容が分かりやすいこと、金額が明示されているので安心できること、品質に安心感を持てることなどから、ご興味を持っていただく方は多いです。
ただヒアリングを進めていくと、定額制の中では叶えられない内容も出てくるため、オーダーメイドリフォームになることも多くなっています」と黒岩氏。
特別なことをしたい場合は、定額の枠から外れるためオーダーメイド方式でリフォームをしたほうが、要望を叶えやすく満足度は高いというわけだ。
「三菱地所ホームのもともとの強みであり、お客様のご希望の大半を占めているのはオーダーメイド方式のリフォームです。そういった会社が考えた定額制リフォームなので、デザイン・機能・サービスのレベルも高く、労力を掛けずに快適な住まいを手に入れたい方にお勧めです」とのことだった。
マンションの定額制リフォームのラインナップ例とその費用
定額制リフォームでは標準工事の内容が重要になる。実際の定額制リフォームのメニューや実例から、どんなリフォームをするといくら掛かるのか、計算方法やオプション費用などを見てみよう。
今回取材をした三菱地所ホームで提供しているマンションの定額リフォームは2種類ある。一般的に流通している仕様のSTYLE-FORME (スタイル・フォルメ)と、三菱地所グループのオリジナル仕様のRe Dia (リディア)だ。
こちらは、STYLE-FORME (スタイル・フォルメ)での施工事例、専有面積は65.86平米である。マンションの定額制リフォームは基本的に専有面積に応じた費用体系になっている。
STYLE-FORME (スタイル・フォルメ)の基本の工事範囲はフルリフォーム(キッチン・洗面・バス・トイレの設備4点交換、内装替え、建具交換)で、希望に合わせてプラスマイナスのオプションがあり、内装カラーは新築注文住宅の商品の「スマートオーダー」の4色から選べるようになっている。
設備は流通の良いメーカー品(LIXIL・永大産業)の最新のものが標準仕様となり、Re Dia Mansion (リディア マンション)よりも工期が短く済み、とにかく早くきれいにしたい場合に効率よくリフォームできるという。
こちらの写真の施工事例の費用概算は、定額制リフォーム547.8万円に、和室を洋室にするオプション費用63.8万円を加えて総額611.6万円(税込み)となる。
Re Dia (リディア)は設備も内装仕様もすべてザ・パークハウスで使用しているものが選べるなど、新築のブランドマンションと同様の内装にすることができる。カラーバリエーションは6タイプで、費用は70平米の場合748万円(税込み)となっている。こちらもプラスマイナスオプションがあり、簡単な計算で金額が分かるようになっている。
こちらはインテリアコーディネーターがついて相談に乗ってくれる費用も含まれていて、定額制でもこだわったリフォームをしたい、インテリアにこだわりたい場合にお勧めとのことだった。
このように定額制リフォームは、それぞれ中身が違うので、費用だけではなく中身をよく見て、自分が欲しいものが含まれているかをチェックすることが重要となる。
そして問題になるのが、このプラスマイナスオプションである。定額の範囲外の工事をする場合、いくらになるのか、そこをしっかり確認することがトラブルを防ぐために重要なこととなる。
追加オプション、減額オプションを必ず確認する
定額制リフォームは工事内容が詳細に決まっている。設備のグレードだけでなく、意外なものが含まれていないこともあり、トラブルの原因にもなりかねない。
追加がかさめばかえって高くつくこともある。予算オーバーを防ぐ鍵は、標準工事の内容を知り、どの程度の追加が必要になるかを事前に把握しておくことにある。
先ほどご紹介した三菱地所ホームの定額制リフォームの標準工事には、設備4点交換、全室内装替え、建具交換、玄関収納交換、洗濯パン・洗濯水栓交換、ダウンライト交換、給気口キャップ交換、タオル掛け交換、トイレの紙巻き器交換が含まれる。
標準工事に入っていないのは、収納(建具及び内部)、給湯器、玄関タイル貼り替え、窓枠、配管の更新などである。
他に見逃がしがちなポイントに、エアコン、照明、カーテンレール、収納の内部の棚の造作、トイレの収納などがある。コンセントの数も大切だ。増やせば追加になる。床材の品質も満足いくものかを確認しておきたい。
チリも積もれば山となる。しっかりチェックをして、総額を確認することが想定外の出費を防ぐ大事なポイントだ。
キッチンの対面化、和室の洋室化のオプションを見ておく
定額制リフォームでは間取りの変更はオプションになっていることが多いが、マンションリフォームで多くの人が間取り変更を希望する箇所が2つある。それがキッチンの対面化と和室の洋室化だ。
こういった小規模の間取り変更の場合は、スケルトンリフォームにするほどではなく、定額制リフォームのオプションで対応すると費用の節約になるケースが多い。
先ほどの定額制リフォームSTYLE-FORME (スタイル・フォルメ)で、和室を洋室化してリビングを広げた場合のプラン例と基本工事の費用、オプション費用をそれぞれ具体的にご紹介しよう。
まず定額として基本工事の547.8万円、和室を洋室に変更するオプションが63.8万円~、リビングの拡張(間仕切り取り除き)で55万円~、ワークデスクや家具は別途で、リフォーム費用の合計の目安は666.6万円。更にここからキッチンを対面にしたい場合はプラス96.8万円~となる。(すべて税込み)
人気のオプションは、壁付けキッチンを対面キッチンに変更、和室から洋室への変更、書斎スペースの創出、収納スペースの追加などだそうだ。
またこちらのメニューには、やらない箇所がある場合は減額オプションもあるそうだ。ユニットバス、洗面化粧台のリフォームをしない場合はマイナス61.6万円~、改修不要な部屋がある場合はマイナス15.4万円~となる。
こういったオプションの品ぞろえやその費用、減額に対応してくれるかなども忘れずに確認をしておこう。
多い「設備のグレードアップ」での予算オーバー
定額制リフォームで問題になりがちな追加費用は、設備のグレードも大きな要因となっている。リフォームに関する調査(※)によると、マンションリフォームで予算オーバーをしてしまった主な理由として、約半数が「設備を当初よりグレードアップしたから」を挙げている。
設備のグレードは、デザイン、機能、省エネ性能を左右し、使い勝手や光熱費にも大きな影響を与える。毎日のことだけに妥協をしたくない人も多いことだろう。定額制リフォームを成功させるためには、選べる設備のグレードが満足のいくものであるかをよく確認しておくことも大事なポイントとなる。
定額制リフォームを上手に利用すれば、比較的手軽に安価にリフォームをすることが可能になる。上手に選んで満足のいくリフォームを実現していただければと思う。
(※住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査2021年/住宅リフォーム推進協議会調べ)
取材協力:三菱地所ホーム・三菱地所のレジデンスクラブ
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