電気料金の値上がりの状況

電気料金の値上げが長期化している。その背景とは電気料金の値上げが長期化している。その背景とは

2021年9月ごろより、電気料金の値上げが続いている。電気料金の値上げは長期化しており、2022年3月も値上げが公表されている。

主な電力会社の2022年3月における標準的な家庭の1ヶ月当たりの電気料金は、2022年2月比で東京電力が+283円の8,244円、関西電力が+55円の7,473円、中部電力が+292円の7,949円となっている。

電気料金の値上げが続いている理由は、火力発電用の主な燃料であるLNG(液化天然ガス)の輸入価格が上昇しているためである。

LNGの輸入価格は2021年3月ごろから上がり始めており、電気料金はLNGの高騰から少し遅れる形で2021年9月あたりから上昇が続いている状況だ。

電気料金が決まる仕組み

電気料金は「基本料金」と「電力量料金」、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の3つの構成要素で決まる。式で表すと、以下のようになる。

電気料金

電気料金 = 基本料金 + 電力量料金 +再生可能エネルギー発電促進賦課金

基本料金とは、各電力会社がプランによって設定した固定料金のことを指す。アンペア制を採用している電力会社であれば、アンペアが高いほど基本料金も高くなることが一般的だ。

電力量料金とは、使った電力量に応じて発生する料金のことを指す。その月にたくさんの電気を使えば、電力量料金の部分が上がることになる。

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、電力の固定価格買取制度を維持するために負担する費用のことを指す。固定価格買取制度(FIT制度)とは、電力会社が再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間買い取る制度のことである。固定価格買取制度は国の制度となっており、国民が平等に再生可能エネルギー発電促進賦課金を負担する形で維持されている。

電気料金は「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の3つの構成要素で決まる電気料金は「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の3つの構成要素で決まる

今回の電気料金の値上げは、「電力量料金」が上がったことが原因となる。電力量料金は、使用料に応じて発生する料金であるが、その内訳の算式は以下のように表される。

電力量料金

電力量料金 = 電気料金単価 × 1ヶ月の使用量 ± 燃料費調整額

電力量料金は、単に電気料金単価に使用料を乗じたものではなく、燃料費調整額が加算または減算されることがポイントだ。

燃料費調整額とは、LNGや原油、石炭等の燃料の仕入れの変動額を電気料金に反映するための項目である。

燃料費調整額は、過去3ヶ月間の燃料価格の平均を計算して調整した額となる。マイナスとなる場合もあり、燃料費の価格が安くなれば燃料費調整額によって電気料金は下がることもある。

燃料費調整額は燃料の輸入額が瞬時に反映されるものではなく、約半年後に電気料金に転嫁される。例えば、2022年3月の燃料費調整額は、2021年10月~12月の3ヶ月の燃料価格の平均が採用されている。

電気料金は2021年9月より上昇し始めているが、それは半年前の2021年3月ごろより高騰したLNGの輸入価格が原因となっている。

燃料費調整制度とは

2022年3月は、日本の大手電力会社の多くが値上げを決定した2022年3月は、日本の大手電力会社の多くが値上げを決定した

燃料費調整制度とは、LNGや原油、石炭等の火力発電用の燃料の価格変動を電気料金に反映させるための制度となる。基準燃料価格が設定されており、3ヶ月間の平均燃料価格が基準価格を上回ったときはプラスの調整、下回ったときはマイナスの調整がなされる。

ただし、燃料費調整制度では、100Vまたは200Vといった家庭用の低圧供給に関しては、急激な価格上昇を避けるため、上限価格が設けられている(下限価格の設定はない) 。上限価格は基準価格の1.5倍と設定されており、平均燃料価格が上限価格を超えた場合には、上昇分は原則として電力会社が吸収して負担することになる。

例えば、北陸電力では2022年2月の値上げにおいて既に平均燃料価格が上限価格に達していたため、2022年3月には電気料金を値上げできない形となった。日本の大手電力会社には、東京電力と関西電力、中部電力、東北電力、九州電力、中国電力、四国電力、北海道電力、北陸電力、沖縄電力の10社があるが、2022年3月は北陸電力を除く9社が値上げを行っている。

なお、2022年3月の値上げにおいて、関西電力と中国電力は平均燃料価格が上限価格に達している。

値上げの背景1.原子力発電から火力発電への切り替え

国内の電気料金が値上がりしやすくなった背景としては、東日本大震災以降、電力の発電システムが原子力発電から火力発電へ切り替わってきたことが背景にある。東日本大震災以前は、3割程度の発電量が原子力発電から供給されていたが、現時点ではほとんどの原子力発電所が停止している状態にある。

原子力発電は化石燃料を輸入する必要がないため、発電所が稼働していた時期は燃料価格の高騰の影響を受けにくい状況にあった。一方で、火力発電はLNGや石炭、石油等の化石燃料を必要とすることから、輸入に頼らざるを得ない。そのため、火力発電の依存度が高まった現状においては、国際的な燃料価格の影響を受けやすくなっており、日本の電気料金は以前よりも値上がりしやすい体質になったといえる。

東日本大震災以降、火力発電の依存度が高まっており、燃料価格の影響を受けやすい状態になっている東日本大震災以降、火力発電の依存度が高まっており、燃料価格の影響を受けやすい状態になっている

値上げの背景2.中国のLNG輸入量の増加

LNGの価格が高騰している背景には、中国のLNG輸入量が増加していることも影響している。中国がLNGを多く輸入するようになった理由は、LNGは石炭よりもCO2の排出量が低いことが挙げられる。

中国も国際的な要請によってCO2排出量を削減せざるを得ない状況となっており、CO2削減の目標を達成するためにLNGを多用するようになってきたのだ。中国のLNGの需要は今後も増えていく見通しで、国際的なLNGの価格は当面上昇が続くものと思料される。

値上げの背景3.世界的な天候不順

直近に関しては、世界的な天候不順がLNGの価格高騰に影響している。2021年にはラニーニャ現象が発生し、欧州で風速が弱まるという現象が生じた。風力発電に頼っていたスペインでは風力の弱まりによって発電量が減ってしまったため、代替エネルギーを確保するためにLNGに頼らざるを得ない状況が生じた。

そのため、欧州からのLNGの需要も増え、国際的なLNGの価格高騰に拍車がかかっている。再生エネルギーは発電量が不安定であるため、今後も異常気象が発生するたびに電気料金の値上げが繰り返されることは予想される。

今後も世界的な天候不順や異常気象が発生すれば電気料金の値上げが繰り返される可能性がある今後も世界的な天候不順や異常気象が発生すれば電気料金の値上げが繰り返される可能性がある

エコ住宅設備による対策と補助金

長期的な観点で電気料金の値上げに対処するには、住宅の省エネ化が有効な対策となる。住宅が省エネ化されれば、電気だけでなく水道やガスの使用量も減っていき、水道光熱費をトータルで下げることができる。

ここでは、住宅の省エネ化で比較的利用しやすい「こどもみらい住宅支援事業」という補助金制度を紹介したい。こどもみらい住宅支援事業の補助制度は、大きく「新築」と「リフォーム」の2つに分かれる。
「リフォーム」については利用者の世帯要件が設けられていないため、利用しやすい補助金制度であることが特徴だ (「新築」には利用者が子育て世帯である等の一定の世帯要件が設けられている) 。

リフォームの内容は、「開口部の断熱改修」または「外壁、屋根・天井または床の断熱改修」もしくは「エコ住宅設備の設置」を行うことが必須となっている。

補助額は工事内容ごとに上限額が定められており、原則として1戸あたり30万円が上限額となっている (一定の要件を満たす子育て世帯等が中古住宅を購入してリフォームする場合には条件額が60万円となる) 。

例えば、エコ住宅設備の設置に関しては、工事内容ごとに補助額が以下のように定められている。

太陽熱利用システム 2万4,000円/戸
節水型トイレ(掃除しやすいトイレ) 1万9,000円/台
節水型トイレ(上記以外) 1万7,000円/台
高断熱浴槽 2万4,000円/戸
高効率給湯機 2万4,000円/戸
節湯水栓 5,000円/台

こどもみらい住宅支援事業を利用するには、国に登録された「こどもみらい住宅事業者」にリフォームを依頼する必要がある。

国からはこどもみらい住宅事業者に対して補助金が支払われるため、利用者はこどもみらい住宅事業者を通じて補助金の還元を受けることになる。

こどもみらい住宅事業者は、こどもみらい住宅支援事業の公式ホームページ
https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/
より検索できるため、興味があれば事業者を探してみるといいだろう。

詳細な条件などはこどもみらい住宅支援事業の公式ホームページを参照してほしい詳細な条件などはこどもみらい住宅支援事業の公式ホームページを参照してほしい

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