ハイセンスなアパルトマンのイメージ、清潔で質の高さを感じる空間に
この部屋の主はヨーロッパを中心にファッション系の仕事を手がける40代、ともにばりばり働くご夫婦。古い木造の、片付かない家を脱したいと新築を中心に物件探しをする中で巡りあったのが不動産からリノベーションまでをワンストップで手がけるNENGOの「おんぼろ不動産マーケット」。リノベーション自体を知らなかった2人だが、自分で好きに空間を作れるという点に関心を持ち、それならとリノベーションを前提に中古を探すことに。見つけたのは原宿駅から徒歩10分弱、築38年、100m2超の広さを持つマンションである。
部屋のイメージはハイセンスなアパルトマン。清潔感があり、かつ素材の質の高さを生かした空間をというオーダーに床、壁にはそれぞれ木、レンガの趣のあるタイルを使用。壁にはオーストラリアの自然由来成分で構成される高級ペイント「ポーターズペイント」を使い、ニュアンスのある空間に。キッチン、水回り、収納も一新、2室あった個室はカーペット敷きの寝室を兼ねたセカンドリビングに生まれ変わった。
印象的なのは壁の陰影。白にベージュ、グレイが微かに混じった「パリの石灰」(Pluster of Paris)という色なのだそうが、複数の顔料が入っているため、光の加減で反射、変化を見せてくれるのだという。また、施工後は残りのペイントが渡され、汚れたら自分で塗り直すこともできるのだとか。むらができてもそれがニュアンスになるペイントなので、メンテナンスも容易というわけだ。
引き戸、ガラリ戸を多用、湿気を寄せ付けない部屋作り
実用面では多用されている引き戸、がらり戸(幅の狭い羽根板をブラインドのように斜めに並べたもの。ルーバーとも呼ばれる)が目に付いた。引き戸はできるだけ光が入るようにという意図で使われており、がらり戸は湿気防止のため。ファッション系の仕事をしている施主は衣装持ちで「それらを閉じ込めたくない、だから、可能な限り、がらり戸にしたい」とおっしゃったということだ。衣類、靴をたくさん持っている人には参考になるだろう。
ところで、実はトイレの扉もがらり戸。湿気はこもらないだろうが、音が漏れるんじゃないかとちょっと不安になったが、広い家のことである、まあ、気になることはないんだろうなあ……。
一見フローリングに見えるリビングの床も実は実用性から考えれて選ばれたタイル。もともとはカーペット敷きだったものの、インコを飼っているため、カーペットにするわけには行かず、管理組合の規約でフローリングにもできない。そのため、タイルになったのだとか。古いマンションではフローリング不可の管理規約があることは珍しくないので、リノベーション前提で中古マンションを購入する際には事前の確認が必要だ。
ヴィンテージマンションは緑がポイント?
最後に舞台となったマンションのことを。明治通りから少し入った場所なのだが、居住者以外の人が通ることが少ない、閑静な地で、すぐ隣には長年お住まいだろうと思われる手入れの行き届いた一戸建ても。周辺のどのお宅も緑の豊富さは共通だ。そして、もちろん、この物件も同様である。
考えてみると、少し前に書いた築30年でも資産価値が落ちないマンションもまた、緑の豊富な場所だった。価格が落ちないことで知られる広尾のガーデンヒルズも鬱蒼という言葉がふさわしいほど緑の地である。その他、いくつか思い出す、いわゆるヴィンテージマンションはいずれも緑陰が美しい。日々継続した手入れが必要なだけに、緑はそのマンションの管理の良さを物語るといっても良いのかもしれない。
マンションの価格は築20年くらいで底になると言われる。化粧が剥げて本来の価値だけが残るとも言える。そこで残っている価値が当初とさほど変わらないものだとすると、その物件は化粧がなくても価値のある物件と判断しても良いのだろうと思う。たぶん、その後も長く、価値を維持するだろうとも。この物件の場合も施主はここで何年か住んだ後、売却しても購入時とさほど変わらない価格で売れるだろうと判断、購入に踏み切ったそうである。これから買うのであれば、こうした物件を探したいものだ。
設計:尋設計 一級建築士事務所
【記事中でご紹介した会社のURLはこちら】
NENGO:http://www.nengo.jp/
NENGOリノベーション:http://www.nengo-renovation.jp/
おんぼろ不動産マーケット:http://www.onboro.net/
ポーターズペイント:http://porters-paints.com/
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