LIFULL HOME’Sは年末に翌年のトレンドワードを公表
ここ数年、LIFULL HOME’Sで協議・選考し年末に発表しているのが、翌年の住宅・不動産市場で話題となる可能性があると考える“トレンドワード”だ。
まず、2025年に“来る”と予測したのは、「デコ活」「ローカル億ション」「ずらし駅」「住まいの防犯投資」そして「家じまい元年」の5つのトレンドだった。
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このうち、地方圏でも増え続ける億ションは47都道府県のうち36都道府県に広がって「ローカル億ション」として広く認知されているし、賃料の急上昇に伴ってターミナル駅から1~数駅離れることによって生活利便性を大きく落とすことなく賃料を下げることができる「ずらし駅」も数多くの媒体に取り上げられ話題となった。また、「家じまい元年」についても、“団塊の世代”が全員満75歳以上の後期高齢者になったことを踏まえて大相続時代が始まるとの論考に幅広く活用され、トレンドワードとしての役割を果たしたものと考えている。
ちなみに「デコ活」は環境省発信の脱炭素でエコを実現するワード、「住まいの防犯投資」はトクリュウ:匿名・流動型犯罪グループの犯行が社会的な脅威となったことに対して住宅の防犯性に警鐘を鳴らすワードだが、いずれも取り上げられる機会は多くなかったので2025年の結果は概ね3勝2敗といったところだろうか。
LIFULL HOME’Sが選んだ2026年のトレンドワードは?
2026年のトレンドワードには、「卒・タワマン所有主義」「こちくら郊外」「新築氷河期」「0(ゼロ)LDK」「住まい探しもAI相談」の5つを選定した。
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このうち「住まい探しもAI相談」を除く4つのトレンドは、いずれも特に新築住宅の価格高騰の対策としてキーになると考えられる言葉で、「卒・タワマン所有主義」は高嶺の花になってしまったタワーマンションの購入を断念して一戸建てや賃貸住宅を選択するという意味ではなく、現在居住・所有している資産として優良なタワーマンションを売却し、よりコスパの良い都心近くの戸建に住み替える考え方のことだ。実はタワーマンションには匿名性はあるものの、高いレベルでのプライバシーの確保は容易ではないし、壁や床・天井でほかの住戸と物理的に接しているから防音性能にも自ら限界がある。また管理費・修繕積立金といったランニングコストもスケールメリットがあるにもかかわらず負担が大きくなっていて、管理組合の活動にも参加する必要があり、一部のプレミアム住戸を除けば特段広いというわけでもないので、そろそろ卒業して戸建で気兼ねなく暮らしたいと考える人は少なくない。
「こちくら郊外」は、グリーン車や特急・新幹線利用による快適な通勤をしながら“心地よい暮らし”を得られる郊外エリアを指す。現在首都圏に広がる鉄道路線では“有料着席サービス”が増えており、比較的長い距離でも指定席を確保して通うことで、通勤を時間や距離ではなく快適性で考えるケースも増えている。また勤務先の企業が指定席や特急通勤のコスト負担に対応していなくても、補助金を出す自治体が増えているから、通勤のコストと時間をマネージメントすることで心地よい暮らしがかなう郊外に居住することも可能だとする環境変化を表している。
就職氷河期ならぬ「新築氷河期」は説明不要かもしれないが、とにかく新築住宅が高くて買えない状況を端的に示したワードで、LIFULL HOME’Sのアンケート調査では、3年以内に新築マンション購入を検討したと回答した割合はわずか9.9%で、しかも6.3%は購入していないので、残り3.6%が買ったという極めて購入者が限定的なマーケットになっている。さらに、その6.3%の購入見送りユーザーのうち2割強は新築マンションへの住み替えを諦め、同じく2割強が代わりに戸建や中古マンションを購入し、1割弱が賃貸住宅に住み替えているから、高過ぎる新築マンションを見限ってほかの居住スタイルを模索する人のほうが多いということになる。購入見送りユーザーの理由は「価格が高過ぎた」が48.6%で多数を占めているのは当然の結果だろう。
「0(ゼロ)LDK」は、マンションの専有面積が価格の高騰によって徐々に縮小している現実を考慮し、壁を取り払って自由度の高い生活をしようとする試みで、新築住宅は知る限りではまだ例がなく、専ら中古住宅を購入&リノベーションする際に採用されている。限られた空間を効率よく利用するために個室を作らず、ロフトを設置してパーソナルスペースにしたり、可変性を持たせることで1つのスペースに複数の役割・機能を持たせたりといった工夫が生かされており、狭くても快適に暮らせることに価値を見いだすことができる“間取りがないという間取り”住宅として注目される。
最後の「住まい探しもAI相談」は、生成AIが日常の検索ツール、アドバイザー、相談相手として機能している状況を踏まえて、言葉通りに住宅を探す際にも良きアドバイザーとなってくれることをイメージしたワードだ。足元では大規模言語モデルでの流入割合はごくわずかでも直近1年では5倍に拡大しており、AIで検索可能な機能については活用意向が半数を超えている。この状況を先取りするべく、LIFULL HOME’Sでは「LIFULL AI」のサービスを昨年12月から開始していることもあり、新たな検索方法として今後定着していく期待を込めてトレンドワードに選定した。
私的トレンド予測のキーワードを敢えて6つ挙げるなら・・・
上記が、筆者が所属するLIFULL HOME’Sが選定した2026年のトレンドワードだが、当然のことながら個人的には選考過程でやや違和感の残る言葉もあり、敢えて私的にキーワードを考えてみた。
なお、語感や言葉から想起されるイメージ、印象の強さなどは一切考慮・斟酌していないから、トレンドワードというよりは私的に2026年に何が起きるか&起きそうかという確率を想定して選定しており、発生確度が高いと考えられる言葉を取り上げている。
私的トレンド予測(1):中古住宅市場の活性化
2025年末にリリースされた2026年度の税制改正大綱では、住宅ローン減税に関して“新築に厳しく、中古に優しい”税制改正が行われた。すなわち、新築住宅については概ね2025年の減税制度が踏襲されたものの、2025年4月から義務化されたばかりの「省エネ基準適合住宅」は、今後制度改定によって省エネ基準以下となるため、2028年以降は住宅ローン控除の対象外とされることになった。
この現行の省エネ基準適合住宅は断熱等級および一次エネルギー消費量等級がともに“4”だが、これは国際的な基準からするとむしろ性能の低い部類に属するレベルだ。そのため、国も2030年には基準を引き上げることを決めている。したがって当然の措置ともいえるが、2025年にスタートした制度の基準になる住宅を、わずか3年後に住宅ローン減税の対象外にするのに対し、中古については一般住宅=省エネ基準非適合住宅も住宅ローン減税の対象にしているから、2028年以降(少なくとも2030年までは)現行の省エネ基準適合住宅も控除対象とされる。加えて対象面積(登記簿面積換算)も50m2から40m2以上に緩和され、控除期間も原則10年から13年へと延長されたため(一般住宅のみ10年に据え置き)、中古住宅に対する住宅ローン減税が大幅に=新築並みに拡充されたことになる。しかも中古住宅を購入して断熱性・省エネ性を向上させるリフォームを実施すれば、別途補助金の対象にもなるから、2026年は新築住宅の高騰を背景とした“中古住宅の年&リフォームの年”となるのではないかと考える。
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私的トレンド予測(2):金利上昇時代の住宅購入はインフレヘッジ
黒田日銀の2期10年が終わり、2023年からは植田総裁のもと“金利のある世界”に徐々に戻りつつある。2024年3月にマイナス金利を脱して7月には0.250%に引き上げられ、さらに2025年は1月と12月の2回にわたって政策金利が引き上げられて0.750%に達し、30年ぶりの水準に回復している。
それでも物価変動を考慮した実質金利は依然としてマイナス圏にあり、金融環境は緩和的だと国内外の機関投資家から見られている結果、昨年末のように日銀の利上げ観測が高まっても1ドル=155~158円程度の円安・ドル高基調が定着している。この局面を打開する糸口を掴むためにも日銀は金融引き締めのポジションを取り続けるだろう。植田総裁も年始の会合で、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくと発言しており、中長期的には今後も慎重にかつ着実に金利を引き上げるものと考えておいたほうがよい。
一般に住宅ローン金利が上昇傾向にある中にあっては、毎月の返済額および返済総額が増えることが想定される。そのため、住宅購入を控えるか、購入予算を引き下げるのが普通だ。だが、現状の物価上昇局面では、単に現金を持っているだけでは価値が下がっていくためインフレヘッジされない。したがって、景気に連動して価格および価値が引き上がる不動産や貴金属などの現物資産の購入、もしくは銘柄ごとに比較的ボラティリティは大きいものの相対的に価格が上昇する株式や投資信託などに資産を付け替えておくのが投資家の一般的な手法となる。
住宅についても“購入=投資である”というポジションが取れるかどうかが大きな基準になる。もちろん、住宅ローンという極めて低利な融資を活用しながらレバレッジを効かせて資産形成するためには、不動産としての価値が高いものに投資する必要があるが、基本的に住宅の価値は交通と生活の利便性が相対的に高く担保されているか否かによって概ね決まるので、自分の予算内で最も利便性の高い物件を選ぶことが求められる。これを短期で実行すると投機&転売目的と揶揄されることもあるが、周辺環境の変化も含めて少なくとも10年間所有&生活する前提=実需目線で資産価値の上昇が認められる物件を求めることで金利上昇分のリスクはヘッジできる可能性が高まるから、今こそ“住宅としての本質的な価値”を見極めて物件を選択してもらいたい。
私的トレンド予測(3):戦略的“超長期住宅ローン”の活用拡大
上記のインフレヘッジをイメージするのであれば、また比較的若いうちから資産形成を意識するのであれば、超長期住宅ローンの活用については検討する価値があるだろう。
2024年以降の住宅価格がこれほどまで急激に上昇推移するとは想定されていなかったが、2026年の住宅・不動産市場展望に記した通り、住宅価格はコストプッシュに加えて都心周辺で発生している買い進みによって急騰している。トレンド予測(2)に示したように“住宅の本質的な価値”を重視するのであれば、買い進みによって過熱感の高いマーケットでの購入も視野に入る可能性がある。したがって、毎月の返済額を抑制して生活をより豊かに送るために可処分所得を少しでも増やすには、近年利用が増加している返済期間35年を超える“超長期住宅ローン”の活用が一つの方法となる。
超長期ローンの最大のメリットは、もちろん毎月の返済額が少なくできることだが、一方で返済総額は返済の長期化によって膨らんでしまうため、経済的に余裕がある時には10万円程度でもよいので繰り上げ返済を欠かさず行うことを意識したい。また、基本的に住宅ローンの完済期限は、現在のところ満80歳に設定されている金融機関が圧倒的多数だから、50年間の住宅ローンを申し込むには遅くとも満30歳の誕生日を迎える以前でなければならない(今後完済期限も延長される可能性が高い)。
20代での住宅購入および長期にわたるローン返済は、あたかも“人生そのものを担保に入れるようなもの”との批判もあるが、資産インフレ期であるにもかかわらず、所得&賃金の伸びが大きく期待できない現状にあっては、戦略的に超長期のローンを借り入れるのは効果的な手段である。返済期間を短縮するべく繰り上げ返済を実施し、また住み替え&買い替えを前提として、リスクを正しく認識して中長期的な資産形成のステップを検討することは、分散投資などを通じて金融リテラシーをさらに向上させることも含め、経済的な環境を向上させるためにも理にかなっていると考える。
私的トレンド予測(4):“GX ZEH”という新たな住宅性能水準の登場
2025年4月から導入されたすべての新築建築物への省エネ基準適合義務化だが、この義務化された断熱等級4かつ一次エネルギー消費量等級4という水準は、2030年からZEH水準へと引き上げられることが既に決まっている。つまり現行の水準は4年後には基準以下になってしまう“暫定的な水準”なので、将来の住宅の資産性および居住快適性や経済性&健康面でのメリットを考慮するなら、より高い水準での住宅購入&建設が目安になるが、実はこのZEH水準自体も2027年から新たにGX ZEH水準に統合されることが昨年決定しており、2030年以降はGX ZEH水準に目線を引き上げておく必要がある。
GX ZEH水準は、「GX ZEH+」「GX ZEH」「Nearly GX ZEH」「GX ZEH Oriented」の4段階に設定されている。
標準的な仕様であるGX ZEHは、
・断熱等級6(現行ZEHは5)であること
・(太陽光パネルほか)再生可能エネルギーを導入すること(ZEH Orientedを除く)
・再エネを除き35%以上の一次エネルギー消費量を削減すること
・再エネを含めて100%以上115%未満の一次エネルギー消費量を削減すること(この削減率の数値によって段階が分かれる)
・定置用蓄電池を設置すること(ZEH Orientedを除く)
・HEMS(エネルギー管理システム)を導入すること
という住宅建設に関してさらなるコストアップを求める仕様にはなっているが、これが2027年以降のスタンダードということに既に決定しているのだから、現状からは数段階高い住宅性能が求められることを前提に供給サイドはもちろん、ユーザーも十分に意識する必要がある。
既に、東急不動産は、分譲マンションの自社ブランド「BRANZ」において、2025年12月より一次エネルギー消費量等級について独自に等級8(BEIが0.65=35%削減)まで増設し、先行してGX ZEHを標準仕様にすることを公表している。足元でGX ZEHのスタンダード化は今後も着実に進むものと考えられる。2026年からは、住宅性能が従前より高水準でなければ、経済性や居住快適性はもとより、資産性にも影響があるものと考えておくべきだろう。
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私的トレンド予測(5):より狭く、より遠く、より古く
これも近年の住宅価格および賃料の高騰に関連するキーワードとなる。LIFULL HOME’Sでは“ずらし駅”というワードによって専ら賃料上昇対策としての手段を取り上げている。これは確かに有効な手段にもなるし、生活利便性を大きく落とさずに賃料を下げるのにも比較的大きな効果が認められる。ただし、ターミナル駅勢圏の交通&生活の利便性がほぼ同じようなエリアでは賃料水準も価格水準も大きく変わらないケースもある。また、複数路線が延伸しているエリアでは、駅勢圏が広くターミナル性の高い駅と“ずらし駅”の賃料水準が都心方面へのアクセスの良否によって逆転しているケースも散見されるため、特定のエリア&駅で工夫次第で経済効率が向上するのが“ずらし駅”だとも言える。
一般に、賃料水準および価格水準は、これもトレンド予測(2)に記した通り、基本的に交通と生活の利便性および居住快適性が相対的に高く担保されているか否かによって概ね決まるから、賃料バジェットや購入予算を変えずに(上げずに)物件を探すのであれば、物件の居住面積をやや縮小させるか、ロードサイドなど駅から離れていても生活利便性が担保されているエリアの物件を選ぶか、近郊のベッドタウンから郊外方面に転居するか、築年数を経ている割に内装などの印象が良いものを探す、などの対応が想定される。
2026年は引き続き都市圏中心部が牽引して、賃料も物件価格も上昇し続ける公算が高いから、居住ニーズが全般的に郊外方面にシフトし、また中古住宅のローン控除の対象面積が50m2から40m2以上に緩和されたから、これらも含めて2026年は“より狭く、より遠く、より古く”という物件にもスポットが当たるものと考えている。
私的トレンド予測(6):住宅&生活のアフォーダビリティ
近年、“アフォーダブル住宅”という言葉を耳にするようになったのは、東京都がより安価な賃料で居住可能な住宅の民間整備を促す目的で100億円を出資し、さらに民間から100億円以上の出資を募って官民連携ファンドを組成するという、アフォーダブル住宅の供給方針を表明したからだ。
既に運営事業者として東京都からSMBC信託銀行、野村不動産、三菱UFJ信託銀行、りそな不動産投資顧問をそれぞれ中心とする4つのグループが選定されており、2026年から300戸程度の賃貸住宅を順次供給する計画となっている。
このアフォーダブル住宅(Affordable Housing)は“手頃に居住可能な住宅”という意味合いで、もともと日本にはUR都市機構(旧:日本住宅公団)や各自治体が運営する住宅供給公社を通じて提供する“公営住宅”が賃貸・分譲を含めて合計178万戸(UR72万戸/各住宅供給公社106万戸)あり、比較的安価に居住可能な住宅の数は決して少なくはないのだが、賃貸住宅を必要とする若年層単身者やプレファミリー層、子育て世帯の現在のライフスタイルにフィットした物件は限られており、新規の供給についてもその推進力は限定的だから、新たな賃貸住宅の供給スキームとしてのアフォーダブル住宅が志向されたものと考えられる。
特に近年では、所得・収入に対して住宅や食料品など生活必需品の価格が高騰し、一般消費者が適当と考える=アフォーダブルなコスト負担で生活を維持することが困難になっている状況を、“Affordability Crisis=生活危機”と表現するようにもなっており、住宅についても、また生活全般についても、アフォーダビリティというワードは重要性・存在意義を増していると感じている。特に、アメリカでは住宅危機=Housing Affordability Crisisと言われるようにもなり、既に社会問題として捉えられているから、日本でも住宅および生活のアフォーダビリティは、消費者物価指数がこのまま上昇し続けることになれば、強く意識される言葉になるのではないだろうか。
まとめ
以上、“2026年の住宅市況で起き得ること”をキーワードにして列挙したが、2026年は住宅価格および賃料水準の上昇に加えて、住宅ローン金利の上昇にも対処する必要があり、住宅取得および生活を維持することのハードルは確実に高まるものと考えている。超長期住宅ローンを活用して住宅取得することがかなえば、特に中古住宅について拡充された住宅ローン控除の恩恵も得られるが、取得せずに賃貸住宅で生活を継続するには、そのアフォーダビリティに不安要素が増える可能性が高まるという図式になる。決して諸手を挙げて歓迎すべき状況だけではない2026年の住宅市場の推移を、ここに掲げたキーワードを通じて言語化し、今後も注視していく必要がある。






