前回の総括~資産価値は利便性と仲良しである

3月に公表したコラムで、マンションの資産価値は「なにかと便利であること」と関連性が高く、実際に便利であるかどうかは賃料相場に表れることを説明した。
買物などの日常生活や周辺の余暇施設の充実度合い、最寄駅までのアクセスなどとマンションの賃料は相関するので、都心の賃料は高い水準を維持し、郊外では賃料相場自体が低くかつ需給が緩むことが多いので下がりやすい。
ご自身がこれから住もうと考えているエリアの人気度や生活利便施設の充実度、何より交通条件の良し悪しを周辺エリアと比較するなら、まずは賃料相場を見比べることをお勧めする。

つまり、エリアポテンシャル=総合力を比較するなら、賃料相場がよい物差しとなり得るという趣旨を解説した。

マンション選びは街選び
~でも、タイミング良く欲しい物件が売っているとは限らない

物件を探す際、次善の策としてエリアを周辺2~3駅まで少し拡げてみたり、中古物件も見たり、しばらく賃貸暮らしをして出物を待つ、というケースも出てくる物件を探す際、次善の策としてエリアを周辺2~3駅まで少し拡げてみたり、中古物件も見たり、しばらく賃貸暮らしをして出物を待つ、というケースも出てくる

ただし、実際にどのエリアに住むかを絞り込んだとしても、最終的に購入して住む“場所”はそのエリア内の特定のマンションになる。
エリアの良し悪しを比較し「ここなら是非住みたい」と思うエリアがあっても、そこにどのような物件が売っているか(もしくは貸されているか)は、タイミングの問題も含めてなかなかに悩ましいものである。新築マンションがたまたま分譲中で、しかも交通条件や間取りや広さや予算もぴったりで即購入!というのはかなり幸運なケースであり、通常はなかなか「これは!」と思う物件に出会えないので、次善の策としてエリアを周辺2~3駅まで少し拡げてみたり、中古物件も見たり、しばらく賃貸暮らしをして出物を待つ、というケースも出てくる。

そうなると、マンションを購入して住むというイメージが具体的にますます膨らんでくるので(その間に物欲がムラムラと湧き上がることもあって)、購入条件のうち、予算や専有面積、エリアを徐々に広げ、特に予算は頭金と借入総額とのバランスで上振れることもあって、その分専有面積を若干調整してグロスの価格を抑えて購入に至るということも出てくるようだ。

結果的に予算を若干オーバーするのは良くあるケースとは言え、超低空飛行を続ける現在の住宅ローン金利水準で計算すると、自分では到底手が出ないと思っていた物件も案外購入可能レンジに入っていたりするものだし(「お客様、提携ローンの審査を無事通りました!」という連絡が、あなたの背中を押す)、人生で一番大きな買い物だから少しでも“良い物件”が欲しいという意向が強くなるものだ。

マンションの収益力を通じて経済合理性を推し量る指標 マンションPER

資産価値とは“将来いくらで売れるか”ということを購入前にイメージすることから始まり、物件の特性と周辺に居住している購入候補者との相性も含めて考慮し、さらには利便性について賃料の多寡で推し量るという“作業”も大切なプロセスとなる資産価値とは“将来いくらで売れるか”ということを購入前にイメージすることから始まり、物件の特性と周辺に居住している購入候補者との相性も含めて考慮し、さらには利便性について賃料の多寡で推し量るという“作業”も大切なプロセスとなる

マンションを購入する上で、最も重視してもらいたいことの一つに「資産価値」があることは私のコラムをいくつかお読みいただいた方はご理解下さっていると思われるが、資産価値とは“将来いくらで売れるか”ということを購入前にイメージすることから始まり、物件の特性と周辺に居住している購入候補者との相性も含めて考慮し、さらには冒頭の利便性について賃料の多寡で推し量るという“作業”も大切なプロセスとなる。
つまり物件の「経済合理性」を多面的に推し量ることは資産価値を判断する上で欠かせない要素なのだ。

その経済合理性を賃料見合いで「お得か否か」という指標にしたのが“マンションPER”である。
一般にPERというと“株価収益率”のことであり、マンションPERはこれをマンションに当て嵌めたものだ。分譲マンションの価格を“現在の評価額”、同じく分譲マンションが貸された場合の賃料を“現在の収益力”として、特定のエリアで分譲されているマンションが、そのエリアの分譲マンション賃料の何年分に相当するかを数値化している。数値が小さいほど、賃料見合いで短期間での回収が可能になるため「お買い得」ということになり、反対に数値が大きくなるほど「経済合理性を欠く」ということになる。

マンションPERの考え方と使い方

2013年に公表したマンションPERの平均値は、首都圏(1都3県)で23.98、近畿圏(2府4県)で23.94、中部圏(東海4県)24.20と三大都市圏では概ね24ポイント前後で揃っている。
つまり、ここ1年で分譲された新築マンションの価格は、エリア平均の賃料で換算すると約24年分(利回り4.2%)に相当することになる。

再三述べている通り、賃料の絶対水準が高いことは「なにかと便利」なことを意味するから資産価値も高いと推測できるのだが、仮に月額50万円で貸せる物件であっても、マンションの分譲価格が2億円であればマンションPERは33.33となり、賃料見合いでの回収に33年以上を要することになるから、PERの平均値24を9.3年分も上回っていて経済合理性を欠いていると判断されることになる。また、この例に倣えば、この物件が1億4400万円で販売されていれば、経済合理性を欠くと言えるほど高額で分譲されてはいないことになるし、それより安価であれば経済合理性があるとさえ言える。
つまり、賃料換算での物件価格が割高か割安かを判断するのにマンションPERを一つの目安とすることができるのである。

さらに、このマンションPERは毎年公表しており、当然のことながら特定の年に分譲されたマンションの価格と賃料を比較して算出するため、数値は毎年異なるが、1年で数ポイント上昇したり低下したりすることもないので、価格相場観を賃料から(=収益還元価格から)検証することで、経済合理性の決して高くない物件をグレードの良さにつられて購入してしまう可能性を下げられるというメリットがある。
もちろん、経済合理性を無視しても「この物件が欲しい」という方には、少なくとも決して経済合理性が高くないことを予め理解しておいてもらいたいものだ。

マンションPERの数値が高い「割高物件」は、リスクも相応に高い

なぜ、マンションPERを指標としてマンション価格の割高感&割安感を判断しておく必要があるかというと、物件価格は中古マンションとして数年後~10数年後に市場流通する際に「その価格が地域相場に収斂しやすい」という特性があるからだ。
これは分譲当時に地域相場からかなり上振れた価格で販売されていたマンションでも、中古として流通する際には価格に大きなアドバンテージが生まれないという意味である。もちろん、駅に直結していて徒歩1分だとか、駅前のタワーマンションで地域一番物件としてランドマークになっているなどの価格優位性が長年に渡って維持できる可能性が高い物件は数少ない例外となるが、そうでない大多数の物件は、地域相場に概ね収斂していく。
割高な物件は、その意味で価格下落リスクが高いと言えるし、資産価値の面でも出口戦略が立てにくいという可能性があることになる。割高な物件には設備や仕様、全体のグレードや都心一等地に所在することのステータス性な加味されていることが多いが、これはブランドとしての意味合いが大半を占めており、それを悪いとは全く思わないが、少なくとも割高な物件=価格に換算できないプレミア部分が多くある物件、という位置づけになる。

マンションPERが表すもの、それは賃料換算での経済合理性=“マンションのお買い得度”である。

物件価格は中古マンションとして数年後~10数年後に市場流通する際に</br>「その価格が地域相場に収斂しやすい」という特性がある物件価格は中古マンションとして数年後~10数年後に市場流通する際に
「その価格が地域相場に収斂しやすい」という特性がある

2014年 04月21日 09時45分