アメリカは利下げ&日本は利上げ 真逆の動きでも“実質金利差”はそれほど縮小しない

2025年12月10日(日本時間11日午前)、アメリカ連邦準備理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)で、9月、10月に続いて3会合連続となる0.25%の利下げを決定した。これにより、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は3.5〜3.75%となった。18日には日銀が開催する金融政策決定会合での政策金利0.25%の引き上げが確実とされているから、仮に予想通り引き上げられれば、日米の金利差は一気に0.50%縮小することになる。

一般に、日米の政策金利差が変化することで為替相場に大きく影響するとされる理由は、金利=運用益(利息)の高いドルを買う代わりに金利の低い円を売るから円安・ドル高が進行し、また為替の変動により1ドル140円で売って160円で買い戻せば20円分の為替差益が発生するからさらに円安が加速する(円キャリートレードによる円安加速)とされる。
実際のところは、インフレ率の違いや貿易収支、さらには財政規律に対する懸念など、ほかの要因が関わってくることもあって、相関性は高いものの完全に連動しているとまでは言えない。

名目金利が縮小しても“実質金利”が縮小していない

アメリカは利下げ&日本は利上げ 真逆の動きでも“実質金利差”はそれほど縮小しない

ではなぜ、日米の金利差が縮小する状況が訪れても“過度な円安”が解消する方向に為替相場が動かないのか。それは名目金利が縮小したとしても、肝心の“実質金利”が縮小しないからだ。
実質金利とは政策金利から消費者物価指数の上昇率(=インフレ率)などを差し引いた金利のことで、日本は政策金利の水準が(上がってきたとは言え)依然低いままなのに対して、アメリカは金利水準が高く4%前後で推移しているから、インフレ率との関係性では日本はー3%前後のマイナス金利(現金資産の価値が目減りする状態)が続いているが、アメリカの実質金利は+3%程度の好水準となっている。この金利差は名目金利差よりさらに大きく、また縮小もしていないので、為替相場も円安が継続し進行するということになる。

したがって、建設用資材の多くを輸入に頼る日本の住宅産業は、まもなくやってくる2026年も円安の継続によってコストプッシュが続き、また慢性的な人手不足によって人件費も上昇する中での分譲・販売となることは確実だと言える。つまり、“新築住宅の価格高騰問題”は日銀が金利を0.25%引き上げるか否かに注目するだけでは、何も解決しないのだ。

中山登志朗のニュースピックアップとは

LIFULL HOME'S総合研究所副所長兼チーフアナリストの中山登志朗が、不動産業界に関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。業界関係者はもちろん、不動産に関心がある人にとっても、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。

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ホームズ君

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