ワクチン接種の本格化で経済活動の回復にも意識が向き始めた

2021年5月末に入って東京と大阪に大規模接種会場が設営され、職域接種も開始されてようやくワクチン接種が本格化し始めた。
医療関係者および高齢者への接種も進んで、未成年者を含めた一般への接種も開始される状況となったことで、緊急事態宣言も沖縄を除いて20日に解除された。東京オリパラ開催を見据えて対応は急ピッチに進んでおり、それに伴って経済の循環も活性化の兆しが訪れるとともに、ウッドショックに代表されるような資材価格の上昇が発生し、住宅建設に資材が調達しにくい状況にもなっている。

コロナ禍によって我々の生活や習慣が移動・接触を伴わないという形式に変化し、何よりテレワークの進捗・定着が働き方改革を半強制的に進めたことで、生活全般に大きな影響を与えている。もちろん、生活の基盤となる器としての住まいに対する見方や考え方にも影響を与え、それが今後の住宅需要を左右するポイントになっていくと考えられる。これまで以上にユーザーの要望や欲しい物件のイメージなど、変化を敏感に察知することで「コロナ後」に備えることができるのではないか。

まさにワクチン接種が本格化したこのタイミングで、新たな日常=ニューノーマルと称されるコロナ禍での生活や経済活動、ビジネスからレジャーまで、様々な行動様式をコロナ後に向けてアップデートし始めることが求められている。

コロナで落ち込んだ経済の回復を目的として「新たな日常」と「防災」に着目

ちまたでは、コロナ後を見据えた言動が聞こえ始めた頃、菅政権の閣議で決定されたのが「グリーン住宅ポイント制度」だ。
まさにコロナ後を見据えて経済の回復を図るため、新たに住宅の取得、リフォーム、建設などを行なった際にポイントを付与し、そのポイントで好みの商品と交換したり、住宅の追加工事に使ったりできる制度として注目されている。

これまでも政府は「省エネポイント制度」や「次世代住宅ポイント制度」など、手を変え品を変え、様々な機会を捉えてポイントを発行してきたが、今回は名称の通り「グリーン」、すなわち生活環境面に配慮する住宅を買ったり、建てたり、リフォームした場合にポイントで支援しようという制度となっている。

※詳細は政府広報のページ(2021年6月2日付)、もしくは「グリーン住宅ポイント制度」専用サイト(オンライン申請)を参照されたい。

その目的は、高い省エネ性能を有する住宅を取得しようとする人に対して、商品や追加工事などと交換できるポイントを発行することにより、グリーン社会の実現および地域における需要活性化に資する住宅投資を喚起して、コロナ禍の影響により落ち込んだ経済の回復を図ることとされている。換言すれば広くポイントを付与して需要を喚起するというところに主眼が置かれている経済政策の一環となる。

国土交通省の「グリーン住宅ポイント制度」専用サイト国土交通省の「グリーン住宅ポイント制度」専用サイト

新築でも中古でもリフォームでも!注目のポイント制度の概要

具体的に、ポイントが付与されるケースは4つ。

①新築住宅の建築・購入:契約時に築1年以内であって第三者が入居していない住宅であること、品確法で定める断熱性能や一次エネルギー消費量の等級がそれぞれ4以上など一定の省エネ性能を満たしていること、購入者と家族が自ら住む住宅であること、などの場合、30万~100万ポイントを付与
②既存(中古)住宅の購入:閣議決定された1年前(2019年12月14日)以前に建築された住宅であること、購入価格が100万円(税込)以上であること、購入者と家族が自ら住む住宅であること、などの場合、15万~45万ポイントを付与(中古住宅の場合は入居後の申請のみ可能)
③リフォーム:5万円以上のリフォームを実施した場合に、工事の内容に応じて、上限30万ポイント付与(賃貸住宅のリフォームも対象、リフォーム箇所によってポイントが異なるため詳細は要確認)
ただし、若者・子育て世代のリフォーム、安心R住宅のリフォームは上限45万ポイントとする特例あり
④賃貸住宅の建築:全戸トップランナー基準(家電・OA機器、ガス器具などの省エネルギー基準を現在商品化されている製品のうち最もエネルギー消費効率が優れている機器の性能以上にするという基準:現状の最新基準)で建築され床面積が40m2以上ある場合、戸ごとに10万ポイント付与(棟ごとの申請のみで付与されたポイントは追加工事以外には使用不可、かつ戸建や店舗併用は対象外)

となっている。

肝心なのはポイント制度の開始と終了時期 把握しておかないとポイントがもらえない

これまで通り1ポイント=1円換算となっているので、新築住宅を購入するか建築するかした場合は最大で100万円分のポイントが取得できることになる。

ただし、最大100万円分のポイントを受け取るには、認定長期優良住宅、認定低炭素建築物、性能向上計画認定住宅、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などに該当する高い省エネ性能を有する必要があり、かつ東京圏から移住するケース、18歳未満の子供が3人以上いる多子世帯が購入・建築するケース、三世代同居仕様であるケース、災害危険区域から移住するケースなどに限られることにも留意する必要がある。

また、同じく中古住宅でも、購入してリフォームすれば最大75万円分のポイント取得が可能となっている。

一見してお得に見える制度ではあるものの、ポイントを付与してもらうためには複雑な制度設計をきちんと把握しておく必要があり、このポイント制度を利用して住宅の購入やリフォームを推進しようと考えている場合は、制度の詳細を熟知しておく必要がある。
国のポイント制度は、毎度のことながら但し書きや前提条件が極めて多く、申請者がどの項目に該当するのかがわかりにくい。ポイントを取得しようと考える住宅取得者および関連する不動産業務従事者は詳細を把握することが急務だ。

もう一つ覚えておかなければならないのは、このグリーン住宅ポイント制度が既に3月29日から申請の受付が始まっていることだ。終了期日は2021年10月31日とされているため、事実上4月に始まったばかりで制度の浸透もまだまだ不完全と思われるのに、この記事をご覧いただいている頃には早くも残り数か月という状況が想定される。

申請者は「完了報告」もマスト

さらに、住宅の購入、建築、リフォームについては、申請者が各々「完了報告」を実施しなければならないことも覚えておく必要がある。この完了報告を怠ったままグリーン住宅ポイントを利用してしまうと、あとから返金(返却)しなければならなくなる可能性があるからだ。
さらに建築計画の変更などによって、完了報告した工事に応じたポイントが既に利用したポイントを下回ることになった場合も、その差額を返金(返却)しなければならない。ポイント=お金だから、返金(返却)を怠ると、行政処分や悪質と判断された場合は、最悪の場合、刑事罰の対象となる可能性も知っておく必要がある。

このように、グリーン住宅ポイント制度は前提条件や、最大ポイントを付与してもらえる条件などが様々あり、申請するにあたっては厄介な点が多々指摘されることも事実だが、上手に活用すれば住宅取得に向けての意向を具体化させるきっかけにもなり得る。

グリーン住宅ポイント制度の概要および詳細、付与条件などをしっかり理解した上で、「グリーン社会の実現および地域における需要活性化に資する住宅投資を喚起」する一助としたいものだ。

グリーン住宅ポイント制度は、上手に活用すれば住宅取得を後押しするきっかけにもなりそうだグリーン住宅ポイント制度は、上手に活用すれば住宅取得を後押しするきっかけにもなりそうだ

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