奇異に映る「日本の住宅政策」
一般的な先進国でマイホーム購入といえば、いうまでもなく「資産形成」である。築30年で買った中古住宅がそれ以降も、購入時と同等かそれ以上の価格で売れるのが前提だ。
だからこそ、立地にこだわり、建物のコンディションにこだわり、点検やメンテナンスに余念がない。だから、自ずと建物の寿命も伸びる。中古住宅の資産価値が落ちないため売却益を原資として、ライフスタイルやサイクルの変化に応じた住み替えも容易だ。
日本では、的が絞り切れない無秩序な都市計画の下、25年で建物価値ゼロ担ってしまうものの最後には土地が残る、といった、他先進国に比して稚拙な論理で住宅購入が行われてきた。
「合法的に、ゲームのルールに則っているんだからいいだろう?」として自己利益の最大化を目指してガツガツ新築建設・販売する不動産業者。周囲との調和やメンテナンス性、ましてや省エネ性など念頭に置かず「自分の作品」を作る建築家。リテラシーの不足から家賃とローンの比較程度で購入の可否を検討するユーザー。その背景には市場の無秩序を生む都市計画と建築基準法が横たわる。
国にとっての景気対策や、個人にとっての相続税対策が理由で、空き家が量産される現行の政策は、他先進国から見ればとても奇異に映る。
空き家の増大は「国の不作為」
社会資本整備審議会住宅宅地分科会(国土交通省)では現在、5年に一度の「住生活基本計画(全国計画)」の見直しが行われている。
前回(5年前)の本政策見直しの際には、不動産・建築を中心とする住宅業界の有志による、ニッポンの住宅を考える業界革新プロジェクト「Hakai(ハ会)」によって、国土交通省に対し「住宅総量目標の設定を」といった意見をパブリックコメントとして提出したが採用されることはなかった。
あれから5年が過ぎ、我が国の空き家は820万戸、空き家率は13.5%に増大、空き家問題は地方のみならず都市部、東京23区内においても社会的な課題として浮かび上がった。
「住生活基本計画」で、空き家増大に歯止めがかかるか?
いま、全国各地で各所の空き家対策が進行中である。
2月にはいわゆる「空き家対策法」も施行され、税金投入による空き家対策は今後ますます加速する。
一方で、景気対策として新築住宅建設が奨励され、相続税対策としてアパート建設が止まらないという構図を放置していては、多くの空き家対策も徒労に終わろう。
住宅宅地分科会で行われる議論に、業界人もメディアも国民もぜひ注目したい。
今回の住生活基本計画見直しにあたり、住宅総量の管理が重要であるとして「住宅総量目標の設定」が具体的に盛り込まれない限り、今後5年間で全国の空き家がさらに増大の一途をたどるのは自明だからだ。
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