再開発で進化する大阪府枚方市「楠葉エリア」の歴史と今

大阪府枚方市に位置する楠葉(くずは)エリアは、大阪府と京都府の境界にあり、豊かな自然と長い歴史が調和した街として知られている。京阪本線の特急停車駅である「樟葉駅」を降りると、エリアのシンボルともいえる「KUZUHA MALL」が眼前に広がり、地域の住民だけでなく、周辺エリアからも多くの人々が訪れる街だということがわかる。

楠葉エリアの歴史は古く、『日本書紀』には507年に継体天皇が即位した「楠葉宮」が置かれた地として記述が見られる。また、幕末の1865年(慶応元年)には、京都防衛のために淀川沿いに楠葉台場が築かれた。これは大砲を設置するための防御施設であり、全国で唯一現存する河川台場の跡として国の史跡に指定されている。

楠葉エリアのアクセスを支えている京阪本線樟葉駅楠葉エリアのアクセスを支えている京阪本線樟葉駅
楠葉エリアのアクセスを支えている京阪本線樟葉駅楠葉エリアのシンボルともいえるKUZUHA MALL

近代化の転機となったのが、1910年(明治43年)の京阪電車楠葉駅の開業である。開業当初は湿地や田園が広がる乗降客の少ない駅であった。しかし、1967年(昭和42年)からの「くずはローズタウン」開発、そして1972年(昭和47年)、駅前の大規模商業施設「くずはモール街」の誕生を契機に、現在のようなにぎわいのある駅へと発展を遂げた。

「くずはモール街」はリニューアルを重ね、現在では大阪府下最大級の「KUZUHA MALL」としてエリアの中心的な存在となっている。近年は「えきから始まるまちづくり」をテーマに再整備が進行中であり、2024年春には駅前に天然芝広場「ハピネスパークKUZUHAグラススクエア」がオープンした。この一帯は、道路を通行以外の目的で柔軟に利用できる「ほこみち(歩行者利便増進道路)」に指定され、にぎわいあふれる空間づくりが進められている。

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楠葉エリアのアクセスを支えている京阪本線樟葉駅さまざまなイベントが行われるハピネスパークKUZUHAグラススクエア

大阪・京都へのアクセスと、穏やかな暮らしが両立する楠葉エリア

楠葉エリアは交通利便性に優れ、京阪本線の特急を利用すれば大阪(淀屋橋)へ約27分、京都(祇園四条)へも約22分でアクセス可能だ。また、主要幹線道路である国道1号線へもアクセスしやすく、通勤やレジャーなど、自動車での移動も便利である。

駅周辺は「KUZUHA MALL」や天然芝広場など洗練された雰囲気があるが、駅から少し離れると閑静な住宅街が広がる。駅の東側、ショッピングモールを抜けた先には、昭和40年代に大規模ニュータウン「くずはローズタウン」として開発された、整然とした落ち着きのある住宅地が形成されている。

樟葉駅前のバスロータリー樟葉駅前のバスロータリー
樟葉駅前のバスロータリー楠葉エリアの健康を支える関西医科大学くずは病院

さらに、駅南側に位置する「くずはセンチュリータウン」も、このエリアの閑静な住環境を象徴する存在だ。総戸数1,200戸以上を誇るこの分譲マンション群は、4万1,000m2を超える広大な敷地に豊かな緑地が整備され、落ち着いた住環境が広がっている。

樟葉駅前のバスロータリー楠葉エリアには大阪歯科大学がありアカデミックな一面も

枚方市楠葉計画により誕生する楠葉エリアの新たなランドマーク「ウエリスタワー枚方楠葉」

商業利便性や落ち着いた住環境、そして良好な交通アクセスを兼ね備えた楠葉エリア。このバランスの取れた街で、近年、官民が連携した大規模な開発事業が進行している。

樟葉駅から南へ徒歩9分の場所にある枚方市楠葉花園町では、「NTTくずは社宅」跡地において、開発事業「枚方市楠葉計画」が進行中だ 。このプロジェクトで誕生するのが、NTT都市開発、阪急阪神不動産、住友商事が共同で手がける「ウエリスタワー枚方楠葉」である。

計画されているマンションの概要は以下の通りだ。

・敷地面積:1万2,566.85m2
・建築面積:3,479.92m2
・延べ面積:5万8,873.87m2
・総戸数:542戸
・階数:地上43階
・高さ:約154m

建物は地上43階建て、高さ約154mを誇る超高層免震タワーマンションとなる計画で、総戸数542戸は、楠葉エリアで最高層かつ最大級の規模である。間取りは1LDKから4LDK、専有面積も約44m2から158m2超まで幅広く用意され、さまざまなな世帯のニーズに応えられるのが魅力だ。

外観完成予想CG(出典:NTT都市開発「ウエリスタワー枚方楠葉」)外観完成予想CG(出典:NTT都市開発「ウエリスタワー枚方楠葉」)
外観完成予想CG(出典:NTT都市開発「ウエリスタワー枚方楠葉」)スカイラウンジの完成予想CG(出典:NTT都市開発「ウエリスタワー枚方楠葉 共用空間」)

共用空間には、子どもたちがのびのびと遊べる「キッズスクエア」や、家族や友人が宿泊できる「ゲストルーム」、入居者専用の「オーナーズサウナ」などが完備される予定だ。そして、このマンションの象徴ともいえるのが、33階に設けられるスカイラウンジである。超高層ならではの開放的な眺望を楽しみながら、特別な時間を過ごせる空間となる。

環境性能にも配慮し、「ZEH-M Oriented」や「低炭素建築物」の認定を取得。4,000m2超の公開空地「グリーンフォレスト」は、「人と環境の成長を育む」をテーマに、四季折々の自然を楽しめる空間として整備される。

マンションの完成は2028年10月下旬、入居開始は2029年3月中旬が予定されている。

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外観完成予想CG(出典:NTT都市開発「ウエリスタワー枚方楠葉」)2025年11月現在の現地の様子(西側から撮影)
外観完成予想CG(出典:NTT都市開発「ウエリスタワー枚方楠葉」)2025年11月現在の現地の様子(南側から撮影)

街全体の価値を高める「楠葉花園町地区地区計画」

ウエリスタワー枚方楠葉の建設と並行し、隣接エリアでは良好な市街地環境の形成を目的とした「楠葉花園町地区地区計画」が進められている。約14.4ヘクタール(ha)に及ぶこの地区の計画は、無秩序な開発を抑制し、計画的なまちづくりを誘導することを目的としている。

具体的には、エリア内に3つの区画道路と約3,000m2の広場を整備し、歩行者の安全性と利便性を高めるとともに、地域住民の憩いの場を創出する計画だ。この計画では、エリアをA〜Dの4地区に区分し、それぞれに建築物の用途制限を設けている。

A地区(約10ha)は、住宅や学校、病院や小規模の店舗などを中心とした良好な住環境の形成を目指すエリアだ。ウエリスタワー枚方楠葉が建設されるB地区(約1.6ha)では、容積率の最高限度を350%と定めるなど土地の高度利用を促進する。C地区(約1.6ha)とD地区(約1.2ha)では、住宅などに加え、より規模の大きい店舗や事務所の建築も可能とし、地域の利便性向上とにぎわいの創出を図る計画となっている。

楠葉花園町地区地区計画図(出典:枚方市「楠葉花園町地区地区計画 概要書」)楠葉花園町地区地区計画図(出典:枚方市「楠葉花園町地区地区計画 概要書」)

計画地区内には以下の区画道路も設置される予定だ。

・区画道路1(幅員約12m、延長約300m)
・区画道路2(幅員約8m、延長約650m)
・区画道路3(幅員約6m、延長約540m)

また、計画によると、ウエリスタワー枚方楠葉の敷地内に約3,000m2の広場も配置されるとしており、これはマンション計画にある4,000m2超の公開空地「グリーンフォレスト」にあたるとみられる。この広場がどう整備されるのか、今後の動向に注目したい。

このように、ただ高層マンションを建設するだけでなく、周辺地域全体のインフラ整備や用途の適正化を一体的に進める点が、この地区計画の大きな特徴だ。タワーマンションの誕生と合わせて道路や広場が整備され、生活利便施設が計画的に配置されれば、エリア全体の居住性が向上し、新たな魅力が生まれることが期待されるだろう。

楠葉花園町地区地区計画図(出典:枚方市「楠葉花園町地区地区計画 概要書」)区画道路が計画されている道路(B地区の西側)
楠葉花園町地区地区計画図(出典:枚方市「楠葉花園町地区地区計画 概要書」)区画道路が計画されている道路(A地区、大阪歯科大学キャンパスの西側)

楠葉エリアはタワーマンション誕生でどう変わるのか?

LIFULLが発表した「買って住みたい街ランキング2025【近畿圏版】」では、楠葉エリアが8位にランクイン。前年の11位から順位を上げており、その注目度が高まっていることがうかがえる。

みんなが探した!住みたい街ランキング2025【近畿圏版】

不動産市場に目を向けると、楠葉エリアの資産価値は堅調に推移している。中古マンションの価格は近年上昇傾向にあり、LIFULLの「樟葉駅の中古マンション価格相場」によると、楠葉エリアの中古マンション価格は直近の5年間で大幅に上昇している。

また、樟葉駅の中古マンションの平均価格は2,959万円(70m2の場合)で、近隣の枚方市駅(1,994万円)、御殿山駅(1,456万円)、牧野駅(1,924万円)と比較しても、安定した需要があることがわかる。土地の価格も同様に底堅く、樟葉駅の土地価格相場は2,469万円(100m2の場合)となっている。近隣の牧野駅(1,820万円)、橋本駅(1,415万円)、淀駅(1,626万円)と比べても、住宅地としての根強い人気を裏付けている。

樟葉駅の中古マンション価格相場の推移 ※築10年、専有面積70m²の条件でAI査定した参考価格(出典:LIFULL HOME’S 住まいインデックス)樟葉駅の中古マンション価格相場の推移 ※築10年、専有面積70m²の条件でAI査定した参考価格(出典:LIFULL HOME’S 住まいインデックス)

エリア最高層・最大級となる「ウエリスタワー枚方楠葉」の誕生は、ただの大規模マンションの供給にとどまらないだろう。道路整備や土地利用の方針を定めた「楠葉花園町地区地区計画」と一体で進められる本プロジェクトは、楠葉エリア全体の住環境を向上させ、計画的なまちづくりを誘導するものだ。

今回紹介した官民一体のプロジェクトは、楠葉エリアに新たなにぎわいと価値を創出し、エリアの魅力を引き上げるものとなるだろう。「ウエリスタワー枚方楠葉」を中心とした今後の街の進化に注目したい。

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