全国初「Z世代課」の誕生 行政と若者の関係を変える新機軸
北九州市が全国に先駆けて設立した「Z世代課」が2024年4月の発足から1年を迎えた。行政機関が「Z世代」(1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代)という特定の世代に焦点を当てた部署を設けるという革新的な取り組みは、発足当初から注目を集めていた。
この1年間、北九州市のZ世代課はさまざまなプロジェクトを実施し、若い世代との関わりを深めてきた。Z世代課初代課長を務める柏木佳奈子さんに話を聞き、この1年間の成果や課題、そして今後の展望について探った。
市長直轄で誕生 Z世代課設立のきっかけに成人式の「ド派手衣装」
政令指定都市の中で最も高齢化率の高い北九州市。10~30代の転出が課題になっており、若者政策の再構築が求められていた。
「若者のためのまちづくりを掲げながらも、行政の施策が本当に若者の声を反映できていたのか、十分な検証がなされていなかったという危機感がありました。若者政策をに改めて本気で 取り組むという思いで、市長のトップダウンでZ世代課を作りました」と柏木課長は説明する。
Z世代課立ち上げのきっかけの一つとなったのが、「ド派手衣装」が賛否を呼ぶ北九州市の成人式だ。衣装を制作する貸衣装店「みやび」がニューヨーク・ファッションウィークに出展されるなど、日本文化の一つとして評価されたことを受け、武内和久市長が「若者の価値観を否定するのではなく、彼らの発想や感性を応援することが大切だ」と実感したことが、Z世代課の設立へとつながった。
この「Z世代課」という名称に対し、当初はさまざまな意見が飛び交ったが、得られたメリットも大きかった。
「キャッチーな部署名をつけたことで、これまで行政からの情報が届かなかった層にまで情報が届くようになりました」と柏木課長は語る。
「Z世代の方から『Z世代課が できたことを知って、市役所が自分たちのことを見てくれるということを実感して嬉しかった』と言われたことがあります。『若者政策』というと対象がわかりにくいですが、あえて『Z世代』と絞ったことで、対象者が"自分ごと"として、より関心を持ってくれるようになりました」と柏木課長は効果を説明する。
地域課題に対する感度が高めな若者たちとの関係性を強化
発足からの1年間、Z世代課はさまざまな形で、行政と若者との関係性を強化してきた。
Z世代の「やりたいこと」を応援する「はみ出せコンテスト」、高校生から社会人までを対象にしたワークショップ「次世代創造プログラム」、そして若者の力で各地域を盛り上げる 「区役所創造プロジェクト」の3つのプロジェクトである。
また、Z世代課の活動の中で特に反響が大きかったのが「Z世代パートナーズ」制度だ。
「Z世代課を作った後、若い方々から『自分の力を街の役に立てたい』『街を一緒に盛り上げたい』と連絡がきました。この若者たちを巻き込まない手はないと思って、制度を立ち上げました。5月末に制度を立ち上げて10ヶ月足らずで、想定の倍近くの40人弱から応募 いただきました」と柏木課長は説明する。
「Z世代パートナーズ」の特徴として、市外出身者が半数を占めることが挙げられる。
「就職や進学で北九州に来た方々が、北九州の人に助けられたと口をそろえます。だから自分も恩返ししたい、と言うんです」と柏木課長。
参加者の中には、東京の大学院に通っている市出身の女性もいるという。「若い世代がこんなに北九州市のことを思ってくれていることを知り、とても自信になりました。小学校の時から探求学習やSDGsに関する教育を受けてきた彼らは、社会や地域課題に対する感度が高めなんだと感じています 」と柏木課長は分析する。
コーヒー豆からVRまで 若者のアイデアが形になる瞬間
Z世代課の取り組みの一つ「はみ出せコンテスト」は、3月28日に市内で行われたイベント「WORK AND ROLE 2025」で、採択された3件のプロジェクトの成果が発表された。
採択されたのは、若者による福祉ロボットの開発・運用を促進して市の福祉の課題に挑戦する企画、高齢化と後継者不足解消を目的として北九州市産のコーヒー豆づくりに挑戦する企画、そして"ド派手×晴れ着"をテーマとしたイベントをVR(バーチャルリアリティ)上で行う企画の3点だ。
福祉の課題に挑戦するプロジェクトを立ち上げた山崎駆さんは、Z世代課に対して次のように評価する。
「Z世代課という名称のおかげで、若者として行政に意見を言いやすくなったと感じています。これまでは行政に対してハードルの高さを感じていましたが、Z世代課という存在ができたことで自分たちが行政にアクセスしやすくなりました。若者が政治や行政に興味を持つきっかけとして非常に大きな役割を果たしていると思います」
世代間の対話から生まれる可能性 Z世代課が描く未来像
Z世代課の1年間の取り組みを通じて、若者と行政の新たな関係性が生まれつつある。これまで行政に対して距離を感じていた若い世代が、施策に関わることで「自分たちの声が反映される」ことを実感し、さらに積極的な姿勢を見せるようになった。柏木課長も「こんなにまちの未来のことを考えてくれるZ世代がいっぱいいることを知り、北九州市の未来は明るいと感じました」と手応えを語る。
Z世代の特徴として、「一つの価値観や流行が全員に通用する時代ではなく、趣味も価値観も多様化している」と柏木課長は指摘する。また、市民全体の意識や北九州市へのシビックプライドにも変化が生まれている点も注目している。「かつては、北九州市のことは好きだけど、素直に言えない、街のイメージが悪すぎて、好きっていうとなんか変に思われるんじゃないかというところがあったかもしれません」と柏木課長は笑う。「でも、今の若い人たちは、ただ素直に『北九州が好き』と言えるようになっていて、その変化を感じます」。
Z世代と接する際に心がけていることとして柏木課長が挙げるのは「理解した気にならないこと」だ。「趣味や価値観が変化、多様化しているので、安易に『わかる、わかる』と言うことに危険性を感じていますし、そういう軽い言葉は信頼関係を崩すもとになります。Z世代との違いを楽しみつつ、全てを理解した気にならないよう気をつけています」。この姿勢は、世代間の相互理解を進める上で重要なポイントといえる。
大人がZ世代から学び「世代を超えた共創」へ
今後の重点テーマとして、柏木課長は「大人がZ世代から学ぶ」ことを掲げている。若者が主体となるだけでなく、世代を超えた共創が求められているという。
北九州市Z世代課の試みは、単に若者向けの政策を作るだけでなく、行政と若者の間に新しい関係性を構築し、互いに学び合う場を創出している。若者と行政がともにまちをつくる姿勢は、これまでにない市民参加のモデルとして注目されている。
今後は、政策立案の段階からZ世代の意見を反映する仕組みの強化や、世代を超えて学びあうコミュニティの構築も進めていくという。Z世代との共創を通じて、北九州市がより開かれた、柔軟な行政を実現できるのか。その歩みに引き続き注目したい。
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