コロナ禍を機に、デジタルノマドに着目した福岡市
コロナ禍の最中、福岡市は宿泊稼働率の大幅な低下に直面し、観光による収入が減少。また、オンライン会議やリモートワークの普及によって、ビジネスオフィス街としての需要の減少についても危機感を抱いていた。
そこで福岡市が新たに掘り起こしたのは、ワーケーションによる長期滞在の需要だ。国内向けに始められたワーケーション施策だったが、ITを活用して場所を選ばない働き方をする国際的なリモートワーカー「デジタルノマド」の誘致にも着目。2023年10月に海外デジタルノマド誘致プログラム「Colive Fukuoka」を初開催するにいたった。2024年の開催では400人以上も参加したという「Colive Fukuoka」の担当者である福岡市役所 経済観光文化局観光コンベンション部 観光産業課観光産業係長の横山 裕一さんと運営に携わる株式会社遊行代表の大瀬良 亮さんに話を聞いてきた。
福岡市が海外のデジタルノマドに着目した背景には、古くから中国や東アジアとの貿易を通じて国際的な交流を育んできた歴史にあるという。また、福岡の地域特色とデジタルノマドとの相性がよいのではないかと横山さんは話す。
「“オープンマインドな街”としての気風や、スタートアップの創業・成長支援、エンジニア誘致などの知識創造型産業への注力は、デジタルノマドが求めるニーズと一致しています。観光だけでなく、経済や文化を通じた広範な効果が期待できます」(横山さん)
「好きな場所で働き、観光も楽しむ」という新しいライフスタイルの提案を通じて、福岡市の国際ビジネス都市としての地位をさらに強化する狙いがあるのだろう。国内外からの人材流入を促進し、クリエイティブな人々が集う街としての魅力向上に取り組む。
2023年より開催のデジタルノマド誘致プログラム「Colive Fukuoka」とは
海外デジタルノマド誘致プログラム「Colive Fukuoka」とは、デジタルノマドを対象に1ヶ月間に60を超えるカンファレンスやミートアップ、アクティビティ、ツアー等の様々なコンテンツを提供する滞在型イベントだ。
「福岡市内での観光消費拡大や国際的なプレゼンスの向上を目的として企画しました。特に欧米圏において、福岡は東京や大阪に比べ認知度が低いという課題に対応するため、“シンボリックなイベント”という形で開催することで認知度を強化する狙いがあります」と横山さん。
行政が旗を振りつつも、民間を巻き込み官民連携でのムーブメントを作りあげていることが大きな特徴である。コンテンツは、デジタルノマドの市場に特化したマーケティング会社の株式会社遊行を中心に、(一社)日本デジタルノマド協会や、世界のデジタルノマドとつながりを持つNomad Universityら民間企業によってプログラムの具体化が進められた。カンファレンスには民間企業のスポンサーがついて、デジタルノマドにとって魅力的な商品のPRやサービス提供が行われた。
このイベントを成功に導いた立役者は、遊行代表の大瀬良さんだ。日本デジタルノマド協会の幹事も務める大瀬良さんは、自身のデジタルノマドライフから得た経験や海外デジタルノマドとのネットワークでの情報をもとに、日本への潜在的需要を確信。福岡市がデジタルノマド誘致の動きを検討するのと機を同じくして企画を構想し、市の委託先として事業の運営全般を担当した。
地域文化と観光の魅力を味わうプログラムも
Colive Fukuokaでは、地域文化との交流や観光を通じた新たな体験も提供された。博多旧市街の盆踊りイベントへの参加やまち歩き、博多芸妓の舞踊鑑賞、福岡博多屋台のホッピングなど、地域特有の文化イベントに参加する機会が設けられ、デジタルノマドたちが住民との交流のなかで、日本の伝統文化やライフスタイルを深く知ることができるコンテンツとなっていた。
また、福岡市内だけでなく九州全体を楽しめるよう、別府の温泉や長崎の歴史探訪など、多様な観光プランも提供。参加者が「週末に九州エリアの観光を楽しみ、平日は福岡で仕事をする」という福岡の交通利便性を活用した過ごし方を体験できる内容となった。
Colive Fukuokaの運営メンバーが観光プランに同行し、参加者との直接的な交流を図ったこともプログラムの特徴だ。案内役として参加者と現地体験を共有し、信頼関係を築きながら交流を深めることができたという。参加者からは「地域文化や人々との触れ合いが滞在をより充実させた」という好意的なフィードバックが寄せられ、地域の人々や他のデジタルノマドとのつながりを築けたことが、プログラム全体の満足度向上にもつながった。
2024年は400名を超える参加。Colive Fukuokaがもたらした成果とは
「Colive Fukuokaは、デジタルノマドという新たなライフスタイルの認知拡大と地域の活性化に寄与しました」と振り返る横山さん。この取り組みは、海外に対するプロモーションとしてだけでなく、市民や企業に「デジタルノマド」という概念を広めるきっかけにもなり、国内外の参加者との交流を通じて地域全体が新しい価値観を受け入れる土壌を形成したという。
市のインターンシップの一環としてColive Fukuokaに参加した九州大学の学生は、デジタルノマドと直接交流することで、新たな働き方に触れ、グローバルな視点を養う機会を得たとのこと。他の学生たちからも「自分達だけの力ではこの経験は絶対にできなかった。将来のキャリアを考える上での大きな出会いとなった」とコメントがあるなど、学生たちが「未来のデジタルノマド」としての可能性を見出す意識改革の場にもなったのではないかと横山さん。
2023年度の初回には、国内外約50名が参加。翌年2024年10月の2回目には、45ヶ国・地域から400名超(うち外国人が220名超)が参加し、前年の8倍と大きく飛躍をとげている。さらに、初回の満足度が高かったことから、前年参加者の半数以上がリピーターとして2回目も参加したことが明らかとなっている。Colive Fukuokaは単なる交流の場を超え、デジタルノマドたちが再会やネットワーク形成を行う「コミュニティ」の拠点となっているのだ。
「ビジネスや文化の拠点としての福岡を知ってもらうことを目標に、地域と民間の協力を得ながらさらなる深化を続けていくことが必要だと考えています。2024年の開催では、福岡市のスタートアップ企業と海外のデジタルノマドとの交流の場を設けたことで、新しいコミュニティづくりのきっかけになりました」と横山さん。
福岡市はこの成果をもとに、Colive Fukuokaの継続と年間を通じた滞在環境整備を進める方針だ。
デジタルノマドに向けた長期滞在拠点の整備へ
開催後に課題としてあがったのが、滞在拠点の問題。よりニーズに応えられる拠点が必要だという。海外の参加者からは、時差の関係で深夜に仕事ができる施設や長期滞在に適した施設のさらなる充実についてフィードバックが寄せられた。
時差による深夜業務については、福岡市内で24時間利用可能なコワーキングスペースを新たにオープンするなど、デジタルノマド向けの快適な作業環境を提供する動きが始まっている。
長期滞在の拠点について「デジタルノマドたちの宿泊ニーズに対応するためには、単なるホテルではなく、仕事環境や交流スペースが整った“コリビング”が必要です」と大瀬良さん。福岡市では、Wi-Fi完備のマンスリーマンションやキッチン付き物件を提供しつつ、外国人向けの情報発信や不動産仲介サービスを強化することが求められている。
「イベントでは、不動産ツアーも人気コンテンツでした」と大瀬良さんは続ける。デジタルノマドの間で日本特有の不動産慣習や空き家問題への関心が高まり、敷金・礼金や契約の仕組みが話題となった。さらに前提として「AKIYA(空き家)」という日本語が知られるようになっていると指摘する。
円安の影響で福岡市内の家賃が手頃に感じられることもあり、福岡市がデジタルノマドたちの拠点として魅力を増している。これにより、短期滞在から長期的な定住への関心が広がっていく可能性がありそうだ。
横山さんは「福岡市は、国内外への交通アクセスの良さから、デジタルノマドがアジア全域を移動しながら活動できるハブ都市となれるポテンシャルを秘めており、実現に向けて進めていきたいと思っています」と語る。
地域の魅力を発信し、長期滞在のニーズに応えるサービスを拡充することで、福岡市は国際的なデジタルノマドコミュニティの中心地となる可能性を秘めている。実現への展開が楽しみだ。
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