山梨県甲府市に誕生予定のリニア新駅

リニア中央新幹線開業について、2023年末のニュースによれば2027年を目指すとしていた計画は「2027年以降」と変更する申請がされたという。そんな状況ではあるが、経済などの波及効果には期待も大きく、設置が予定される駅周辺のまちづくりは各自治体で計画が進められている。今回は、「(仮称)リニア山梨県駅」周辺のまちづくりについてご紹介したい。2023年11月に策定された「(仮称)リニア山梨県駅前エリアのまちづくり基本方針」と市役所に取材したコメントを通して、ひもといていく。

リニア山梨県駅は甲府市に建設される。その駅周辺のまちづくりを、これまで主体となってきた県と協働で進めていくと表明した甲府市は、2023年8月に「(仮称)リニア山梨県駅前エリアのまちづくり」についての基本方針案をつくり、3ヶ月ほど市民から意見を募集。商業施設など駅前機能や歩道整備などの意見が寄せられたなか、それを参考としつつ、同案をそのまま基本方針として確定するにいたった。

リニアの駅予定地は、JR甲府駅から南へ約7kmの大津町。予定地そのものは田畑が広がっているところだが、周囲には住宅街のほか大手企業の工場がある。

リニア山梨県駅(仮称)建設予定地(提供:甲府市 ※2023年6月撮影)リニア山梨県駅(仮称)建設予定地(提供:甲府市 ※2023年6月撮影)

駅前まちづくりのコンセプトと10の基本方針

基本方針で、駅前まちづくりのコンセプトとしているのは4つ。
1.リニア駅前だけでなく圏域のまちの価値も向上させるまち
2.“ヒト・モノ・カネ・情報”が交流・交歓するまち
3.まちのターゲットを強く意識したまちづくり
4.官民連携のまちづくり

リニアの駅が新設される他都市と同様、県内の他地域への広がりを意識する。そのなかで、3の項目は「これまで圏域のまちがあまりターゲットにしなかった層を強く意識し、かつこの層に確実に訴求できるまちづくり」であり、また「誰一人取り残さない圏域を作る」ことを目指すとしている。リニアをきっかけに、というだけではないが、総合的にまちの魅力をアップする思いが見られる。

そして、10の基本方針が構築された。
方針1  “新しいまちづくりの社会実装”の舞台にします
方針2  SDGsを実現するまちづくりを目指します(経済、社会、環境の共生)
方針3  “二つの拠点を核としたまちづくり”を進めます
方針4  シームレスで快適な乗換を実現します
方針5  多様な交流・交歓・賑わいの舞台をデザインします
方針6  新たな山梨の玄関口を象徴する都市空間を創出します
方針7  様々な状況に対応できる道路空間を創出します
方針8  駅周辺全体の価値を向上させます
方針9  官官連携・官民連携による事業推進体制を構築します
方針10 事業初動期から“マネジメント”を意識します

交通結節点の強みも活かし、ゼロベースでのまちづくり

今回のまちづくりについては、駅前エリア約24.5ヘクタールのうち、駅南側が主な対象となる。

実は北側は、先行的に山梨県が整備方針を示しており、道路の整備、パーク&ライド駐車場整備のほか、東京から愛知を結ぶ高速道路である中央自動車道のスマートICが設置される予定。

リニア駅の周辺は先でもご紹介したとおり農地であることから、“ゼロベース”で新しいまちづくりができる。リニアと高速道路が結節した利便性、快適性は、まちづくりの大きなポイントになる。基本方針に含まれる交流や賑わいにもつながっていくはずだ。

リニア駅新設に伴うまちづくりをまとめる市役所のリニア政策課の担当者は「本市は、JR中央線や中央自動車道を利用し、比較的首都圏にアクセスしやすい立地環境にありますが、リニア中央新幹線の開業により、中京圏、関西圏とのアクセスも飛躍的に向上することになります。こうした移動時間の短縮効果に、デジタル技術の活用が相まって、デジタルとリアルが融合した“新たなライフスタイル”や“新たなビジネススタイル”の創出が可能となり、既存の恵まれた自然環境に加え、日本中央回廊を形成する東西大都市の利便性を共に享受できる場所の提供が本市の強みであると考えます」と語る。

ゼロベースから新たなまちをつくる期待が高まる(提供:甲府市)ゼロベースから新たなまちをつくる期待が高まる(提供:甲府市)

最先端エネルギーの活用も見据える

基本方針3にある“二つの拠点”とは、新たにできるリニア駅と、現在の主要駅であるJR甲府駅のこと。山梨県と甲府市の「都市計画マスタープラン」で位置づけられたこの二つの拠点を連携し、補完させていくという。甲府駅周辺にない価値をつくり、市としての魅力を高めることが期待される。

そして基本方針2に含まれるのが、山梨県の成長産業の一つである水素エネルギーや再生可能エネルギーの利活用を検討すること。甲府市の米倉山(こめくらやま)地域では、カーボンニュートラルの実現に向けた水素エネルギーの研究、開発が行われている。それと連携し、産業振興を図るとともに広く地球環境へも目を向ける。

「リニア駅建設予定地周辺は、山梨県の政治・経済・文化をけん引する甲府駅周辺に近いことが特徴であり、互いに連携しながらビジネスを行いやすい立地特性を有しているだけでなく、水素エネルギーの世界最先端の技術開発地点である米倉山に近接することから、リニア中央新幹線の開業とともに、新産業や成長産業の育成に適した地域となると考えます。さらに、豊かな観光資源も有していることから、それらを活用したツーリズムの展開も本市及び圏域の魅力向上に寄与するものと考えます」(甲府市役所・リニア政策課担当者)

リニア山梨県駅(仮称)からの波及効果イメージ(提供:甲府市)リニア山梨県駅(仮称)からの波及効果イメージ(提供:甲府市)

現状の課題は?

山梨県にはリニア見学センターがあり、走行するリニアを見られる山梨県にはリニア見学センターがあり、走行するリニアを見られる

まちづくりの基本方針が策定され、2024年1月からは有識者による、まちづくり基本計画検討委員会が始動。まだこれから実現にむけて動き始めたばかりという段階だが、甲府市役所のリニア政策課・担当者は現状考えられている課題について以下のように述べた。

「まちづくり基本方針にも記載しているとおり、駅前のまちづくりを進めるにあたっては、民間活力を最大限活用することを考えています。これまで行った民間事業者へのヒアリングにおいても、駅前エリアにおける開発ポテンシャルの高さは確認しているところです。ただ、リニアの開業時期がさらに不透明となっている現況があります。今後、民間事業者を巻き込んで具体的なまちづくり、土地利用について検討を進めるにあたり、この“開業時期が不透明”という要素が民間事業者のまちづくりへの参画の障壁となることを懸念しています」

確かに先が見通せないなかで協力してもらえるかというと難しい点があるだろう。だが、新しいまちづくりができる利点は大きい。期待を背に、懸念が解消されることを願うばかりだ。

取材協力:甲府市
参考(リニア山梨県駅前エリアのまちづくり基本方針)
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/rinia/taisaku/machikankyou/kotsuu/masterplan.html

公開日: