市町村の先輩移住者で構成される「とっとり暮らしアドバイザー」
日本で最も人口の少ない都道府県、鳥取県。そんな鳥取県だが、宝島社が毎年発表する「田舎暮らしの本」の第12回住みたい田舎ベストランキング(2024年)で、県中部の琴浦町が全国1位を獲得。2022年には、出生数が前年確定数より2.3%増加し、47都道府県で唯一の増加となった(※)。少子高齢化の時代で、人口も少ない県としてはなかなかの快挙である。
年間3,000人の移住者を呼び込もうとする鳥取県知事の平井伸治氏のマニュフェスト、そして子育て支援に熱心に取り組む「子育て王国とっとり」というネーミングなどからも、その意欲が伝わってくる。移住支援と子育て支援のそれぞれについて、鳥取県と鳥取市に伺ってきた。
※2023年1月24日中国新聞デジタルより
移住定住施策について、鳥取県では移住相談体制に力を入れている。鳥取県が用意する「ふるさと鳥取県定住機構」は、移住の際のサポートや就職支援を積極的に行うプラットホームだ。移住問合せは、まず県が受け付け、その後市町村にバトンタッチしていく。
「鳥取県にはさまざまな移住支援団体があり、相談者へのきめ細かなサポート体制が強みです。移住には、住居や仕事などが必ず関わってきます。そのために必要となる専門的な相談に答えるために、宅建資格のある住宅相談員、ファイナンシャルプランナーなどの専門相談員も在籍しています。また引越し前後のフォロー体制として、各地域の先輩移住者たちに『とっとり暮らしアドバイザー』を委嘱しています。その地域のリアルな声を聞くことができると、移住者の方にも好評です」と、鳥取県 輝く鳥取創造本部中山間・地域振興局 人口減少社会対策課 移住定住・関係人口室 杉田大輝氏は話す。
特に鳥取県内で、こんなはずじゃなかった !と問題になりやすいのが「雪」だ。積雪地方に住んだことのない人にとって、初体験の雪については事前の情報が必須となる。地域ごとに地域性が異なる部分も、リアルな体験として聞けるのは参考になるだろう。
市町村との連携でなし得る、移住者希望者の定住
年に2回、市町村の行政担当者同士で研修会を実施。移住相談の悩み相談や移住者への対応方法に関するグループワーク、先進的な取り組みをしている自治体を招いての勉強会などがその内容だ。ほかには、鳥取県内の自治体同士の連携を強固にすることも、その目的の一つに掲げられている。
「鳥取市お試し定住体験」は、鳥取市内の移住を考えている人に向けて、一定期間、市街地以外にも自然に恵まれた地域の住宅で田舎暮らしを試せる仕組みだ。農林漁業、温泉めぐり体験などに参加できたり、本市の気候や風土を体感すると共に、就職活動や住宅探しの拠点として利用することができる。まずは“お試し定住”で地域の人と交流しながら、実際に“とっとり暮らし”を体験できるので、鳥取市への定住や二地域居住などのイメージも、具体的にしやすくなるだろう。
鳥取市独自の「オーダーメイドプラン」で移住体験
「とっとりコネクト」というオウンドメディアを通して、情報発信も行われている。また休日でも気軽に立ち寄れる情報発信・交流の場として「移住・交流情報ガーデン」も構えている。ここでは月に1度の交流会が続けられており、この拠点での交流をきっかけに鳥取ふるさとUI(友愛)会というUターン、Iターン者による自主的なコミュニティも発足している。
「移住・交流情報ガーデンでは、参加者でとっとり移住者マップを作ったり、ワークショップをしたり、子育て世代向けに子育て移住者交流会を行ったりしています。私たちが大切にしているのが、移住後のサポート体制です。移住したはいいものの、暮らしになじめなかったり、友人ができなかったりしたときに立ち寄ってもらえる場所でありたいなと考えています」と、鳥取市役所 市民生活部 地域振興課 移住定住促進係 平田ゆかり氏と同課 坂本愛寿氏は話す。
鳥取市独自の移住支援の一つとして、「鳥取市移住体験オーダーメイドプラン」を実施している。これは移住・交流情報ガーデンの移住定住コンシェルジュが、移住希望者・相談者の希望に沿ってプランを提案し、そのプランをもとに市内を自由に巡ってもらう取り組みだ。その際に空き家見学や現地案内を希望する場合は移住定住コンシェルジュや鳥取市移住相談員が立ち会う。来県の最低2週間前までに申し込みをすればOKだという。
「来県時には、県の移住支援制度の中の交通費助成を活用される方も多いです。コロナ禍では利用率が減っていましたが、2023年は申請件数がかなり戻っているようです」と平田氏。
移住後の安心から、子育てのしやすさへ
さて、子育て支援にフォーカスしてみるとどうだろうか。
鳥取県では子育て王国として、子育て情報に特化したウェブサイトを運営。情報が集約されていて、SNSを通したイベント情報も充実している。鳥取市では「妊婦さん応援給付金」や「出産・子育て応援給付金」「高校生等通学費助成」「保育料の無償化」「多子世帯の保育料の軽減」など多くの補助が用意されている。
「鳥取県内の各市町村では、生活に密着した独自の支援制度もたくさん用意しています。例えば若桜町には、わかさ氷ノ山というスキー場のリフト券が子どもには助成してもらえる制度があります。小さなことに見えますが、こういうことが子育てのしやすさにもつながり、二人目三人目の出産につながる助けにもなっていると個人的には思っています」と杉田氏。
子育て世代の移住者への匿名コメントから、「『鳥取市お試し定住体験』を利用して、移住を決めた。住宅を購入することや移住に向けての相談対応がよく、自分で調べて手続きをしていたら移住できていなかった」(30代夫婦)「『鳥取市ふるさとでの新しいライフステージ支援事業』の補助金制度を利用。夫が鳥取市出身でいつか戻りたいという思いからUターン。まず鳥取市の移住相談窓口でオンライン問い合わせをしました。保育園の相談についても、鳥取市に実際いないと把握できない情報を教えてもらえたことが役立った」(30代夫婦と子ども1人)などの意見をいただいた。
鳥取県への移住者の増加や子どもの増加の理由は何か。その答えは一つではないだろう。鳥取県と鳥取市のスムーズな連携や自治体同士での情報交換、移住前後の細やかな人的サービスと金銭的な補助が、それぞれ影響しあってなし得ているのかもしれない。
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