「踊る阿呆に、見る阿呆」で続けられる、文化交流

400年を超える歴史を持つ、徳島県が誇る文化「阿波おどり」。毎年8月12日から15日の4日間に100万人を超える観光客が徳島市内に集まり、踊り子の集まりである「連」にも約10万人が参加する、徳島ならではの文化だ。この時期になると、国内外から多くの「阿波おどりファン」が訪れ、相当な経済効果を生んでいる。

「踊る阿呆に、見る阿呆」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「踊る阿呆」とは連で踊る参加者、「見る阿呆」は見に来たお客さんのことを指しており、阿波おどりの大きな魅力の一つである。特徴的なのが“にわか連”で、これは連に入っていなくても、参加者が踊りに参加できるという仕組みだ。

阿波おどり「うずき連」(画像提供:徳島県)阿波おどり「うずき連」(画像提供:徳島県)
徳島県 商工労働観光部 観光政策課 観光プロモーション担当 主任主事 石橋耕輔氏徳島県 商工労働観光部 観光政策課 観光プロモーション担当 主任主事 石橋耕輔氏

「『見る阿呆』のお客さんを楽しませ、『にわか』へ引き込み、一緒に汗をかき、『踊る阿呆』が増えていくという、阿波おどりならではの引き込みの仕組みです。参加者の方々が、実践活動などを通じて地域との交流を体感して、『見る阿呆』=『地域ファン』から 『踊る阿呆』=『地域で活動する人』へとステップアップしていく流れです。お遍路1200年で培われた接待文化と、400年以上の間県民総出で交流する『阿波おどり』のある、徳島ならではの文化です」と徳島県 商工労働観光部 観光政策課 観光プロモーション担当 主任主事 石橋耕輔氏は話す。

世界中に広まる阿波おどり。海外連を招聘する独自イベントも

阿波おどりは、海外で披露される機会も多い。2024年2月にはタイで開かれるジャパンエキスポでも阿波おどりが披露される。見るだけではなく参加もできる文化として徳島ファンをつくり、海外の人に対するPRにもつながっている。

「阿波おどりは世界にも広がっています。フランス、ベトナム、アメリカ、ブラジルなどに海外連もあります。ここには、徳島で阿波おどりを体験した人や海外公演の演舞を見て魅了された人など、年齢や性別、国籍もさまざまなメンバーがそろっています。彼らの中で、徳島は“聖地”と呼ばれており、本場で踊るために徳島にお越しになるんですよ」と石橋さん。

また、2023年に新たに実施されたのが、「世界阿波おどりコンテスト」だ。アメリカや中国から来日した踊り手のほか、県外の日本人も含めてあわせて4つの連の踊りが披露され、その構成や演出などで点数が競われた。

絆つなぐ「徳島ファン」創出事業(画像提供:徳島県)阿波おどり「アメリカ連」(画像提供:徳島県)

徳島ファンをどうその先につなげるか? 関係人口の作り方

この「阿波おどり」精神を生かして、徳島県では地域交流事業体験などによる関係人口の創出に取り組んできた。2018年度には、「全国阿波おどり『連』関係人口化」事業として「TOKUSHIMA-REN」プロジェクトを実施。美馬市、美波町、佐那河内村の3地域で行われた。中でも、佐那河内村の「すだち連プロジェクト」では、地場産業である農業の消費者と生産者との距離を縮めながら、地元の阿波おどり連に参加しながら地域文化を体験。地域住民との交流を図るものだった。他県とは違う、徳島ならではの関係人口創出のための取り組みだ。

徳島県では、徳島に思いを寄せる関係人口を「徳島ファン」と呼んでいる。「今年度は、絆つなぐ!『徳島ファン』創出事業を実施しています。本県の魅力や地域の取組みをPRするなど、集中的な情報発信を展開することで『徳島ファン』の掘り起こしを進めて、徳島への人の流れを創出しようとするものです。東京の徳島ファン交流拠点や大阪のいなか暮らし情報発信拠点を活用し、徳島で地域活動に取り組む方々との交流を通じて、地域のつながり創出や絆の強化を推進するイベントを開催しています」と徳島県 政策創造部地方創生局 とくしまぐらし応援課 移住交流担当 課長補佐 鴻野晶子氏は話す。

絆つなぐ「徳島ファン」創出事業(画像提供:徳島県)絆つなぐ「徳島ファン」創出事業(画像提供:徳島県)

東京では、「仕事でつながる徳島」をテーマにつながりの創出を図った。オンライン1日とリアルな場1日の合計2日開催。オンラインセミナーなど学びの場を設けた上で、リアルな場で交流ができる機会を作り、フリーランスや副業を求める人など多くの参加者を集めた。

徳島県からの転出者も多い大阪では、「親子でつながる徳島」をテーマに交流を図った。子育てフリーランスで漫画家の川口真目氏を招き、徳島県に子どもと共に訪れてもらった体験を漫画化する企画を実施。オンラインのみならずリアルな場にも来てもらうことで、体験に基づく徳島の魅力を発信した。
手法は異なれど、どうやって「徳島ファン」を創出するか、という点に取り組みの軸は絞られている。「興味を持ってその場に訪れて、徳島の方との交流を通じて徳島への思いを深めていく。参加された方が『徳島ファン』として、今後も徳島とつながっていただけたらと思います」と鴻野氏は続ける。

絆つなぐ「徳島ファン」創出事業(画像提供:徳島県)阿波おどり「阿呆連」(画像提供:徳島県)

徳島らしく、ファンから移住へ

1999年以降24年連続で転出者が転入者を上回り、人口減少が進む徳島県(2023年、徳島県データによる)。ファンから移住へつなげるさまざまな施策が講じられている。「移住を検討するときにネックとなるのが、仕事の確保です。徳島県では独自の制度として、移住を希望される方が生活に慣れるまで、仕事の不安なくスキルや知識を活かして徳島で活躍できるように、『徳島県地方創生推進員(会計年度任用職員)』を設けています。これは、県の仕事をしながら副業も可能な制度であり、自分の持つスキルを活かして徳島への定住を促すものです」と鴻野さん。

また移住に関する相談には、移住に特化したサポートを行う「とくしま移住コンシェルジュ」が対応する。相談窓口の拠点は、徳島県内はもとより東京、大阪にもある。移住の検討段階から住まいや就職、移住後の地域との関わり方など、移住の多岐にわたるステップを、移住コンシェルジュと各市町村に設置されている移住交流支援センターが伴走しながらサポートする。

徳島県移住アドバイザーとして40年間務める小林陽子氏による「移住成功の極意5ヶ条」が書かれた「とくしま移住ハンドブック」。「とくしまで住み隊」会員に登録し「徳島ファン」になるのもおすすめだ。(画像提供:徳島県)徳島県移住アドバイザーとして40年間務める小林陽子氏による「移住成功の極意5ヶ条」が書かれた「とくしま移住ハンドブック」。「とくしまで住み隊」会員に登録し「徳島ファン」になるのもおすすめだ。(画像提供:徳島県)

「移住」と「仕事」の両輪で取り組むさまざまな施策とともに、ファン作りも行うことが、徳島らしい関係人口の増加と移住定住につながっていくのかもしれない。徳島に興味のある人は、阿波おどりの“にわか連”のように、気軽に「徳島ファン」になることから始めてみるのがよさそうだ。

公開日: