人口約1,400人の町で、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」
「浪費・無駄・廃棄物をゼロにする」ことを目標に、限りある資源を大切にし、ごみの発生抑制を考えた生産と消費を行う活動をゼロ・ウェイストという。人口約1,400人という徳島県上勝町は、2003年に日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った町だ。2018年にはSDGs未来都市の1つに選定され、その稀有な活動は、さまざまなメディアに取り上げられており、世界的にも注目を集めている。
ちなみに世界では、C40(世界大都市気候先導グループ)を通して、現在世界27都市が“Advancing Towards Zero Waste Declaration”というゼロ・ウェイスト宣言をしている(※1)。日本でも、徳島県上勝町のほか、福岡県大木町、熊本県水俣市、奈良県斑鳩町、福岡県みやま市の5つの自治体が、ゼロ・ウェイストを推進(※2)。東京都も2019年12月に「ゼロエミッション東京戦略」を公表し、2030年までに温室効果ガス排出量を半減する「カーボンハーフ」を表明している。
※1:2022年2月現在
※2:2023年1月現在
海洋プラスチックごみや食品ロスの削減など、どんどん身近になりつつある環境への取り組み。もう地球環境問題は、他人事ではない。20年前に小さな山間の町で始まったゼロ・ウェイストのシステムはシンプルだ。上勝町ではごみ収集車によるごみの回収はなく、基本的に住民たちが町に一つだけあるゴミステーションに持っていく。瓶や缶などの資源は、持ち寄って45種類に分別し、生ごみなどはコンポスターなどを利用して各家庭でたい肥化するという徹底ぶりだ。
上勝町のリサイクル率は80%という実績が出ている。高齢化が進む町で、このようなごみ分別のシステムが20年も続けられてきたのは、なにか仕掛けがあるのだろうか? どのような背景があるのだろうか? そんな疑問を抱いて徳島県上勝町を訪れた。
「もう、これしかない」。満場一致可決した上勝町議会
徳島市内から車で1時間ほど。勝浦川上流域の山間に位置し、標高100〜800mの間に大小の集落が点在している。高齢化率は50%以上と、過疎が進む四国で最も人口の少ない町だ。一本道の道路の先に、長い建築物が見えてくる。2020年4月にオープンした「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」はゼロ・ウェイストの拠点だ。「この場所は、かつて野焼きが行われていた場所。1997年頃までは当たり前のように続けられていたんです」と上勝町 企画環境課 主事補の栗林七波さんが、当時のことを話してくれた。
町の総面積の88%が山林である上勝町は、当時、林業や製材業も盛んだった。それに伴う製材クズや産業廃棄物のほか、大型ごみ、家庭から出る生ごみなど何でも燃やしていた。穴を掘って燃やし、埋まればまた別の穴を掘り……、一帯からは黒煙が立ち上り、悪臭が漂い、山火事につながることもあったという。県からは適正な処理をするように指導を受けていたため、1997年に国が容器包装リサイクル法を施行したことをきっかけに、9分別をスタートし、焼却炉を2基導入した。しかしその2年後、ダイオキシン類対策特別処置法に適さないとして1基の焼却炉が使えなくなってしまった。
「町には対応する予算がなく、期限も迫りかなり切羽詰まった状態でした。そんな時、ゼロ・ウェイストを提唱していた国際環境NGOグリーンピース・ジャパンがアメリカの大学教授ポール・コネットさんを連れて、講演活動を行うことになりました」と栗林さん。
町で緊迫した協議が繰り返されるなか、コネットさんの話は町民に響いた。そして2003年の上勝町議会で、ゼロ・ウェイスト宣言が満場一致で可決された。ただそれ以降も一筋縄では行かず、職員が地域を巡り、制度変更の説明をして回ったという。「未来の子どもたちにきれいな空気や水、自然環境を残したいという思いがありました。小規模の町で、みな共通の問題を抱えていたからこそ、実現できたと感じています」と栗林さんは話す。役場と町民の二人三脚で、ここまでやってきたのだ。
日々行われている分別作業の実情。ごみになるものゼロを目指して
上勝町ゼロ・ウェイストセンターにあるゴミステーションの受入時間は、平日7時半〜14時、土・日曜日7時半〜15時半。その間ならば、いつ持って行ってもいい。車の免許を持っていないなど、ごみを運ぶ手段がない人を支援対象に、運搬支援制度も用意されている。現在50世帯ほどが支援を受けているそうだ(2023年12月現在)。
2023年度、委託しているリサイクル事業者数は7社。ごみは45種類に分別されるが、この数は資源ごとにリサイクルできる事業者を探してきた結果である。なるべく運搬コストを減らすために、委託先は県内の企業を優先しているという。
分類の中で興味深いのが、「入・出」という表記だ。「入」は、分別したことでリサイクル事業者がいくらで買い取ってくれるか、「出」はその逆で、処理するためにかかる費用が明記されている。
「2021年度の上勝町のゴミの量は269トン。資源化することで、通常1,590万円かかるところを、781万円に抑えられています。分別することでごみ処理費を50%削減できています」
その他、金属や紙は有価で引き取ってもらえるため、別途約100万円の売払金収入もあるという。「町民のみなさんの努力で、こうした結果が得られています。そのため資源売払収入については、“ちりつもポイント”という制度で、町民に還元できる仕組みを設けています。これは、町民が資源物を分別したり、量り売りの商品を購入することでポイントが付き、貯まったポイントに応じてエコな商品と交換できるような仕組み。町民のモチベーション維持につなげていただいています」と栗林さんは続ける。
生ごみのたい肥化に関しては、電動生ごみ処理機を自己負担1万円で、町から無期限貸与する制度もある。現在、80%のリサイクルに成功しているが、残りの20%は使用済みティッシュやおむつ、革製品などリサイクルしにくいものだ。「なかなか難しい部分で、現在、より効率的な仕組みにできるか、専門事業者にリサイクル可能かどうかを調査していただいています」。上勝町の掲げる目標は、消費・無駄・廃棄物をゼロに近づけていくこと。まだまだ努力は続けられている。
発信・教育。「新ゼロ・ウェイスト宣言」で、2030年を見据えて次のステップへ
「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」がオープンした2020年に、上勝町は「新ゼロ・ウェイスト宣言」を行っている。この宣言では、2030年を目標に子どもたちが暮らす未来の環境を自分のこととして考え、行動できる人づくりに力を入れていきたいとしている。宣言には住民の負担を軽減するための自治体や企業、研究機関とのパートナーシップの強化や、先駆者としてのゼロ・ウェイスト教育の充実、世界への情報発信なども含まれている。
「ゼロ・ウェイストセンター自体が、地域振興を目的とした環境配慮型複合施設になっています。宿泊機能では、上勝町での暮らしやゴミ分別を体験できますし、コワーキングスペースなどフリーで使える場所もあり、町のコミュニティの再形成を担う場になっています」
やはり消費者主体のリサイクルには限界もある。そのため、上勝町では企業連携によるごみの削減・リサイクルの簡易化や質の向上を積極的に目指している。2024年4月からは、サントリーグループと協定を締結し、「ボトル to ボトル」水平リサイクルというコラボもスタートする。これは、回収されたペットボトルがそのまま、再生ペットボトルへリサイクルされるというものだ。海外輸出やペットボトル以外の用途には使われないため、CO2排出量も約60%も削減できるという。そのうえペットボトルも買い取ってもらえ、町の収益も増えるという。
かつてはごみの野焼き、埋め立て場であった場所が、今では上勝町の豊かな自然を守り、持続可能な未来を伝えるための拠点となった。小さな町だからこそできることもある。リサイクルタウンの先駆者である上勝町の取り組みは、どこまで広がっていくのだろうか。

















