廃プラを使った蓄光防犯砂利で巨大クリスマスツリーを制作
2022年11月、名古屋駅「KITTE名古屋」の1階アトリウムに展示された「暗がりのクリスマスツリー」。例年きらびやかなツリーでフォトスポットとなっていた場所に立っていたのは全長10メートルの“明かりをつけないクリスマスツリー”だった。
ツリーの素材は蓄光防犯砂利「REPLAS STONE」。愛知県豊川市の株式会社プラセスが開発した、廃棄されるプラスチック(廃プラ)を原料とした白色蓄光プラスチックだ。
内側からじんわり発光する様子に、街ゆく人が興味深そうに眺めていたのを筆者も記憶している。
実は白色の蓄光はこれまで不可能とされてきた。白色の顔料が光を遮ってしまうことが原因だったが、独自の配合と技術で白色蓄光を可能にしたのがプラセスだ。
廃プラが環境面で問題視される昨今。同社では2020年、社長の甲村尚久さんを中心に開発チーム「PLASESS LAB」を結成。「行き場のない廃プラに新しい価値を生み出す」をテーマにアップサイクルに挑んできた。
廃プラから新商品を開発する「PLASESS LAB」を立ち上げ
自動車部品を製造するプラセス。パワーウインドウ、シフトノブ、ハザードのスイッチなどを国内および、タイ、中国、インドネシア、ルーマニア、メキシコなどの工場で製造している。
「車載用の部品を作り始めて45年。プラスチックの技術を磨いてきましたが、近年、プラスチックにおけるゴミや海洋汚染が世界的な問題として注目されるようになってきました。私たちが取組んできたプラスチックが問題になっているのは悔しく悲しいこと。そこで、自社として何かできることはないかと考えたのが廃プラのアップサイクル品を作るということです」と、甲村さんは「PLASESS LAB」を結成するに至った経緯を語る。
「PLASESS LAB」でコンセプトに掲げたのは
①廃プラを使うこと、②世の中にまだないものを作ること、③自分たちで100%作れるもの、の3つ。
「これがかなりハードルが高くて(笑)。何回会議を重ねてもアイデアが出てこなかったんです。そんなときに、隣で聞いていた事務員さんが『防犯砂利とかいいんじゃないですか』と言ってくれて、なるほど!と思い、さっそく開発に取り組むことになりました」と甲村さん。
廃プラを90%配合した防犯砂利
素材となる廃プラを粉砕し5ミリほどの粒にした後、顔料や蓄光剤を混ぜ、射出成型機に投入。230℃の熱で溶かしドロドロになったものを金型に射出。30秒ほど冷やせば、廃プラを90%配合した防犯砂利「REPLAS STONE」の完成となる。
「一般に販売されている防犯砂利は発泡素材でできており、2年ほどで小さくなったり粉々になったりして防犯対策としての音が鳴らなくなります。そのため、定期的に石の入れ替えが必要ですが、『REPLAS STONE』の場合、耐久性が高く割れにくいのが特長。取り換えの必要はほぼありません。石より軽く設置が楽なこと、水に沈むため雨に流されにくいというメリットもあります」と甲村さん。
蓄光タイプの「REPLAS STONE」の場合、太陽光、蛍光灯、LEDなどの光を吸収。暗くなると発光し、20分程度明るく光り、60分で1/4程度になり少しずつ暗くなっていく。発光力は半永久的だそう。単なる防犯砂利としてだけでなく、ガーデニングや夜間のライトアップ、アクアリウムの夜光観賞用などに利用できるという。
侵入盗の対策に防犯砂利が有効として、豊川警察署と協働で防犯砂利を推進するイベントも開催。
「『REPLAS STONE』の展示をしながら、市民の防犯意識を高めるというイベントをやっていくなかで警察署長から、窓からの侵入盗に対する防犯対策についての相談がありました。そこで新たに開発したのが廃プラで作った補助錠『LEGLOCK』です」(甲村さん)
ブロックをくさび代わりに。廃プラでできた窓用補助錠「LEG LOCK」
「LEG LOCK」の素材は、パワーウインドウを作る時に出る廃プラ。ブロックの勾配部分でサッシの間にくさびを打つような構造で、一般的な成人男性が思い切り力を込めても開かないようにできている。
工具は不要、両面テープで簡単に接着できるうえ、ブロックの位置を変更するだけで窓の開く間隔を自由に調整できるというもの。
「幼児やペットの転落が心配で窓を開けられない」、「補助錠を付けたいけれど工具を使うのがめんどう」、「少しの外出時くらいは窓を開けて換気しておきたい」という人に向けた補助錠となっている。
新商品のクラウドファンディングを行うサイトMakuake(マクアケ)にてプロジェクトを公開したところ、公開から10時間で目標金額を達成。最終的に、527人のサポーターが商品を購入し、応募購入額はなんと1,000%を達成。想定以上の反響に甲村さんたちも驚いたそうだ。
廃プラ×自然素材で壁タイルを商品化
麻繊維25%にプラスチックが75%の配合でつくられている「LETILE麻」、「LETILE麻MIX」。2.5センチ角と2.5センチ×10センチのブロックを好きなように組み合わせることができる(筆者撮影)「REPLAS STONE」、「LEG LOCK」と防犯対策グッズのほかに、麻繊維とトウモロコシの成分を廃プラに混ぜて作った壁タイル「LETILE(レティル)」も開発した。
麻繊維は25%、トウモロコシ成分は50%、それぞれ廃プラと配合。自然由来のバイオプラスチックのナチュラルな風合いが魅力だ。壁のサイズに合わせて台紙を切り、好みのパターンでブロックをはめ込むだけ。両面テープで壁に接着するので賃貸でも使用できる手軽さが好評だという。
「何とか廃プラに新しい価値を見いだしたい」という想いが形になっていく。
国内の廃プラ総排出量は824万トン。リサイクル率は87%というが・・・
一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」よりRPF※1 RefusePaper&Plastic Fuel(マテリアルリサイクルが困難な古紙と廃プラスチック類を原料とした高カロリーの固形燃料)
RDF※2 RefuseDerived Fuel(生ごみや可燃ごみや廃プラスチックなどからつくられる固形燃料)
ところで、国内で廃棄されるプラスチックの現状はどうなっているのだろうか。
2021年時点で日本国内で出る廃プラの総排出量は、一般・産業廃プラ合わせておよそ824万トン(※1)。そのうち87%がリサイクルされ、残りの13%は焼却または埋め立てられている。
一見するとリサイクル率が高そうに見えるが、実はこのリサイクル率は世界とずれているという指摘もある。
廃プラのリサイクル方法は3つ。
1つ目は、廃プラを溶かし、そのままプラスチック原料として新しい製品を作る「マテリアルリサイクル」、2つ目は廃プラを科学的に処理し、別の資源として再利用する「ケミカルリサイクル」、もう1つは「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」ができないものを燃やし、その熱エネルギーを回収して利用するという「サーマルリサイクル」という方法だ。
処理方法別のリサイクル率を見ると「マテリアルリサイクル」は21%、「ケミカルリサイクル」は4%、「サーマルリサイクル」は62%。
この3つの処理法をトータルして廃プラのリサイクル率を87%としている。
しかし、日本でいう「サーマルリサイクル」は、海外では単なる熱回収とみなされ、リサイクルの概念ではくくられていない。つまり、海外と比較して日本の廃プラリサイクル率が高いとは言えないのが現状だ。
2050年には120億トンが埋立・投棄。海洋プラごみが魚の量を上回る予測も
環境省の発表(※2)によると1950年以降生産されたプラスチックは83億トンを超え、63億トンがゴミとして廃棄されたとしている。現状のペースでは2050年までに120億トン以上のプラスチックが埋立・自然投棄されるとの予測も出ている。
これまで日本で出た廃プラはリサイクル原料として中国などの海外に輸出されてきたが、2017年には中国が輸入禁止を発表。次いでタイも2018年に輸入規制を強化。ベトナムは2025年までに輸入禁止措置を行うとしている。行き場を失った廃プラをどうするのかという問題はさらに深刻化している。
国内で出た廃プラは国内で処理するという努力が、一層求められていくだろう。
また、不適切な管理により海洋に投棄された廃プラ「海洋プラスチックごみ」が自然界に大きなダメージを与えていることも周知のとおり。世界全体では、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しているとの報告もある。このままでは2050年には、海洋プラごみの量が魚の量を超えるという試算も出ており、喫緊の課題となっている(※3)。
自社の廃プラゼロへ。新商品の開発も進む
2022年6月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行された。
これまでも取り組んできたリデュース・リユース・リサイクルの3Rに、プラスチック製品を紙やバイオマスプラスチックなどの再生素材や再生可能資源に切り替えるRenewable(リニューアブル)を加え、促進する方針を示している。
資源循環は簡単なことではないが、プラセスでは「REPLAS STONE」や「LEG LOCK」、「LETILE」を開発・製品化し社内の廃プラを循環させることに成功した。
「うちだけがんばっても大した量にはならないとは思いますが、それでも月に200キロ出ていた廃プラはゼロになり、年間で2.4トンの削減にはなっています。クリスマスツリーを作る企画の際は、自社の廃プラだけでは足りなくなってしまったので、他社の廃プラを買い取って製作していました」と甲村さん。
「PLASESS LAB」で現在新しく取り組んでいるのは、観葉植物などの鉢に飾るマルチングの製作。コロナ禍で大量に作られた飛沫防止のアクリル板が、回収され行き場を失っているという。これらを引き取って活用しようというもの。「やっかいもの扱いされている廃プラを、人に喜ばれるものへと変えていきたい」と甲村さんは話していた。
チーム発足から3年目。「まだまだ小さな取組み」としながらも「自分たちの挑戦がほかの企業にも広がっていったらいい」と展望を語ってくれた。
懸念事項が山積みの廃プラ問題に、今後どう向き合っていくのか。取組みを見守るだけでなく、私たちも自分ごととして捉えていかなくてはいけないだろう。
(※1)一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」より
(※2)環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況<第3回資料集>」より
(※3)環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」より
【参照】
一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」
【取材協力・写真提供】
株式会社プラセス
https://www.plasess.com/
PLASESS LAB
https://replas-stone.plasess.co.jp/

















