最高層の高さ90m、エリア史上初のタワーマンションがなぜ旭川に?
北海道第二の都市・旭川市。その中心部にある、JR旭川駅から延びる歩行者専用道路「平和通買物公園」にはかつて、商店に加えて大型商業施設が立ち並んだ。週末ともなると買い物客でごった返し、肩と肩が触れ合うほどのにぎわいを見せた。それも2000年代には大型施設が次々と姿を消し、今では空きテナントも少なくない。
さびしくなったまちなかの風景を一変させるのでは。そんな期待を集めているのが、旭川では史上初となるタワーマンション「プレミスト旭川ザ・タワー」だ。完成予定は2025年3月。151戸が入り、地下1階、地上25階建てで、高さは市内で最高層となる90mを誇る。
一極集中が進む札幌市ならタワーマンションは珍しくないが、道内の地方都市では例は少なく、「日本最北のタワマン」ということもあって、存在感が際立ちそうだ。なぜ旭川が選ばれたのか、どんなニーズをつかんだのか。事業主体の大和ハウス工業株式会社で販売責任者を務める渡邊さんに聞いた。
大都市ではポピュラーなタワーマンション、地方での商機は?
札幌ではタワーマンションが林立し、北海道新幹線の札幌延伸などを見据えて複数の大規模開発プロジェクトが進んでいる。大和ハウス工業も札幌でタワーマンション建設を手がけているが、渡邊さんによると、旭川に暮らす経営者らが札幌の物件を購入したり、「旭川にもタワーマンションが欲しい」と望んだりしていた。
他社が帯広市や釧路市でタワーマンションを建設した例もあり、大和ハウス工業は富裕層らの一定の需要を見込み、旭川への進出を決めた。渡邊さんは「地方都市では競合しにくいという利点があります。その上、富裕層も満足できるレベルのものが『エリア史上初』でできれば、将来にわたり大きな価値になると考えられました」と言う。
過密傾向の札幌など大都市に比べ、地方都市では出店余地が大きい。また旭川市のように利便性が高い地域で中心市街地の空洞化が進んでいれば、再開発の気運が高まり、好条件の事業用地を発掘できるチャンスもある。
渡邊さんは「地方ではまとまった土地が入手しやすく、今回のように駅前の好立地で最初に最上級グレードのマンションができれば、今後もそれを超えるものができにくいと考えられます。ここで高額物件が成功すれば、他の地域でも応用できる可能性があります」と展望する。
雪国の中心部にある集合住宅が、富裕層のニーズにマッチした
旭川の人たちを驚かせた1つは販売価格で、最上階の一室は3億5,000万円。抽選になり、その倍率は8倍という人気となった。オーナーズラウンジやゲストルーム、スカイビューラウンジには、ハイクオリティで知られる地元の旭川家具を採用する。渡邊さんによると、旭川市内のマンションでは珍しいホテルライクなラグジュアリー感を演出した。
2023年7月時点で問合せは1,200件を超えている。医師や経営者らの関心が高く、メインの顧客層は50代以上のシニア夫婦で、投資ではなく居住目的がほとんどという。旭川エリアの場合、郊外の一戸建ては雪の処理や維持管理が負担になり、車も欠かせないことが多いため、生活利便性の高い中心部のマンションは注目されている。
販売当初は地元向けに告知していたため近隣からの問合せがメインだったが、東京や大阪からの移住や、セカンドハウスとしてのニーズもあるという。渡邊さんは「旭川は札幌より混雑せず余裕があり、自然も多く、必要十分な都市機能がある点も評価が高いのでしょう」と推測する。販売価格は3,630万円からで、札幌のような大都市よりは低く設定している。
かつての活気を失った「買物公園」。撤退した商業施設の跡地を再生
旭川駅から320m、徒歩4分という一等地にできることもあり、新たなランドマークになりそうなプレミスト旭川ザ・タワー。2014年に閉館したファッション複合ビルの跡地が再生されるため、市民にとっては馴染み深い場所でもある。
また、まちなか活性化ともリンクする拠点として、街並みとの調和や地域性を重視しているのも特徴だ。旭川らしい「白い雪景色の中に建つ、煉瓦造の建物」をイメージし、低層部の外壁面にはレンガ調のタイルを取り入れた。さらに、平和通買物公園の景観に合わせて同系色を採用した。
平和通買物公園は、日本で初めての恒久的な歩行者専用道路として1972年に誕生した。旭川駅から約1kmにわたって連なり、プレミスト旭川ザ・タワーは、そのほぼ玄関口に位置する。旭川市によると、買物公園の歩行者の通行量は1979年に1日あたり約36万人だったが、2022年は約8万人にまで減っている。通りには多くの商店が並んだほか、かつては「西武旭川店」(2016年閉店)や「丸井今井旭川店」(2009年閉店)があったことで中心市街地の求心力を高めていた。これら百貨店以外にも大型商業施設が相次いで閉鎖または閉鎖予定で、地元では衰退に拍車がかかることが懸念されている。
そんな中、プレミスト旭川ザ・タワーはこれまでにない居住施設となるため、中心市街地に与えるインパクトが注目されている。
あえて「居住施設」を選択した大和ハウス工業。投資の呼び水としての期待も
旭川市が策定した「中心市街地活性化基本計画」は、2000年度から一貫して「まちなかに住む」ことを目標に掲げている。
市地域振興課の箕浦剛課長補佐は「全国的に中心市街地は人口減少や高齢化に直面しています。さまざまな機能がコンパクトに集積したまちづくり、中心市街地に住みやすい生活空間をつくることが求められています。タワーマンションで一定の人口集積ができると同計画の狙いにも合致し、活性化に大きく寄与します」と期待する。
プレミスト旭川ザ・タワーの建設計画では、屋内に「公開空地」として公共スペースが設けられ、旭川駅前のバス停の待合所などとして利用される。市は「空きビルや低未利用地が増えつつあり、民間活力を生かした再開発等を連鎖的に実施し、都市機能や居住を誘導し、土地の高度利用促進と恒常的な賑わい創出を図っていく」ことを狙い、国とともに補助した。
事業範囲が広い大和ハウスグループとしては、今回の案件では複数の選択肢があったが、「街の風景を変える」という目的もあって居住施設を選んだ。
旭川初のタワーマンションに、不動産関係者は投資熱の高まりを期待。市には中心市街地での居住施設の建設についての相談や情報が寄せられているほか、大和ハウス工業側にも、同業他社から問合せがあり、旭川のまちなか再開発への関心は小さくなさそうだ。
渡邊さんは「プレミスト旭川ザ・タワーがトリガーになり、旭川にも第二・第三のタワマンができることで、駅前を起点にまち全体ににぎわいをもたらすことができるかもしれません」と言う。











