年収300万円の美伊さんがご両親とFP相談に

年収300万円の美伊さんは果たしてタワーマンションを買えるのか?年収300万円の美伊さんは果たしてタワーマンションを買えるのか?

両親の勧めもあり、自分のマンションを買ってもいいかなぁと探し始めた美伊さんである。希望のマンションは意外と早く見つかった。それはタワーマンションの低層階で3LDKの73㎡、3680万円。そして、資金計画について相談したいとご両親とともにFP相談へ来られた。

ご相談の主導権は父親である。娘のためなのか、とてもよく勉強されていて、言葉の端々から、娘の将来を案じている様子がうかがえる。端へ座られた母親とともに、仲の良い親子である。聞けば、美伊さんの妹さんがいらっしゃるそうだ。

資金計画のポイントは、少額借入・短期返済

最初に父親が「娘は、年収が少なく300万円くらいしかない」と話し出した時は、「年収300万円でタワーマンション購入?」とドキっとしたが、資金計画はいたって健全であった。

[プランA]
・頭金:2500万円
・借入れ:1180万円

[プランB]
・頭金:2000万円
・借入れ:1680万円

頭金は全額父親からの贈与。美伊さんは、諸費用分を自分の貯金から出すという。返済期間は15年。あまり長いと本人が大変だから、という。父親からの質問は、住宅ローン控除を受けるならば、どちらのプランがお得かというもの。

美伊さんに所得税をいくら払っているのかと尋ねると、10万円くらいとの答え。住民税は?と尋ねるとよくわからない、という。まずは、住宅ローン控除制度が、各年末の借入残高の1%に相当する金額が所得税から還付されること、控除しきれなかった部分は住民税から控除されること、借入残高が減るに従って控除額が減ることなどを説明。

購入月にもよるが、控除額はAプランでは約11万円、Bプランでは約16万円となる。すると父親が、住民税の額にもよるが、Bプランだと無駄がなさそうと言う。なるほどそうかもしれない。が、問題は返済額だ。

美伊さんの毎月返済可能額は?

美伊さんに、毎月どれくらい返済できそうか、と尋ねると、「現在は、実家暮らしなので、検討が付かない」とのこと。そこで、収入と支出、収支(=収入-支出)の把握が重要であるとの話を踏まえ、年収負担率の話で考えていただくこととする。生活に支障のない年収負担率を20~25%だとすると、美伊さんの毎月返済額は、50,000円~62,500円。

検討中マンションの提携ローンの金利0.775%(変動)を利用したとしても、Bプランの場合は、年収が300万円だとすると、98,893円になる。Aプランでも69,460円。変動金利を利用するならば、金利上昇時を想定しておかねばならないし、マンションは毎月の住宅ローン返済に、管理費や修繕積立金の支払いが上乗せされる。美伊さんは大丈夫であろうか。

すると父親から、相続時精算課税制度は2500万円までなのか、という質問を受けた。

父からも母からも受けられる、相続時精算課税制度

住宅取得に係る相続時精算課税制度は、父母から贈与される住宅取得等の資金につき、贈与時は2500万円までを非課税とし、相続発生時に相続財産とあわせて課税される制度である。

父親に質問の意図を聞くと、相続時精算課税制度が2500万円までだと言うので、贈与額を2500万円と決めたが、どうなのかということであった。非課税枠は2500万円だが、2500万円を超えても贈与は可能で、一律20%が課税されると回答。さらに、美伊さんは、母親からも2500万円の贈与を非課税で受けられると話たところ、それまで穏やかに聞いていた母親が、「私が500万円を出せばどうなりますか」と発言。

・頭金:3000万円
・借入れ:680万円
・当初の毎月返済額:40,028円

4万円台という数字には、美伊さんもかなり現実味が出てきたようで、顔が明るくなってきた。他に、毎月返済額を減額するには、総返済額は高くはなるが返済期間を長くする方法があることもお話しする。が、変動金利を視野に入れていることもあり、父親が短期返済にさせてやりたいとのこと。ご両親のたっぷりの愛情を感じる。

相続時精算課税制度と今後の留意点

平成27年以降、相続税が見直しされ、課税対象者が増える予定である。美伊さんの父親が課税対象となる可能性もある。決して、今が非課税だからと、現在のことだけを見ていてはいけないのが、相続時精算課税制度である。相続税の試算もしておいてほしい。

また、何よりも、ご両親の愛情たっぷりの資金援助を受けた美伊さんが、住宅ローンを返済しながら、将来のための貯蓄をし、自分らしいマンションライフを楽しんでほしい。一か月分の家計簿をつけたら、再びお会いすることを約束して相談をおえた。

美伊さんの例が多くの人にあてはまるわけではないが、これまでの相談経験から、親御さんは、子どもが思っている以上に資金援助をしてもいいと考えている。現行制度では、住宅取得資金への贈与については、特例が揃っている。親の相続税対策になる場合もあるので、一度は、親に資金援助のプレゼンをすべきだと考えるが、いかがであろうか。

2013年 12月16日 10時07分