ローン残高の0.7%を所得税額等から控除する制度
ローンを利用して住まいを購入するのなら、必ず知っておきたい住宅ローン減税。これは、住宅ローンを利用して住宅の新築・取得・増改築をした場合、最大13年間にわたって各年末のローン残高の0.7%を所得税額等から控除する制度だ。所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から控除する(上限9万7,500円)。政府は同制度を「中間層による良質な住宅の取得の促進による住宅投資の喚起を通じて、新型コロナで落ち込んだ経済の回復を図るとともに、環境性能等の優れた住宅の普及拡大を推進するための措置」としている。
住まいを手に入れる人にとって大変ありがたい制度だが、これから新築住宅を購入する予定の人は注意しなければならないことがある。それは2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で住宅ローン減税を受ける場合、省エネ性能が必須要件になるということだ。そこで、住宅ローン減税の概要とともに、省エネ性能の必須要件について解説しよう。
高性能でエコな住宅ほど借入限度額は高くなる
住宅ローン減税が適用される借入額の上限は決まっており、下記のように高性能でエコな住宅ほど限度額は高くなる。
新築住宅・買取再販の借入限度額
●長期優良住宅・低炭素住宅(認定住宅)の場合
2022年~2023年:5,000万円(年は入居年、以下同)
2024年~2025年:4,500万円
●ZEH水準省エネ住宅の場合
2022年~2023年:4,500万円
2024年~2025年:3,500万円
●省エネ基準適合住宅の場合
2022年~2023年:4,000万円
2024年~2025年:3,000万円
●その他の住宅の場合
2022年~2023年:3,000万円
2024年~2025年:0円(2023年までに新築の建築確認がされている場合は2,000万円)
買取再販とは、不動産会社などが買い取ってリフォームした後に販売する中古住宅のことだ。ただし、住宅ローン減税で買取再販物件とみなされるには、新築後10年以上経過しているなどの要件を満たす必要がある。
中古住宅の借入限度額
●長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の場合
2022年~2025年:3,000万円
●その他の住宅の場合
2022年~2025年:2,000万円
最大の控除期間は新築住宅・買取再販の場合は原則13年、中古住宅は10年だ。したがって、最大控除合計額は、例えば認定住宅の場合、5,000万円(借入限度額)×0.7%で年間35万円、それが13年で、合計455万円ということになる。
おもな要件(省エネ基準以外)
住宅ローン減税を受けるためのおもな要件には、以下のようなものがある。
床面積要件
床面積が50m2以上
※ただし、新築の場合は2023年までに建築確認がされていて合計所得金額が1,000万円以下ならば40m2以上となる
所得要件
合計所得金額が2,000万円以下
※ただし、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で40m2以上50m2未満の場合、合計所得金額は1,000万円以下となる
居住要件
住宅の引渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に居住すること
ローン返済期間要件
10年以上
中古住宅の要件
1982年1月1日以後に建築されたもの、または、地震に対する安全性に係る基準に適合するもの
買取再販の要件
新築後10年以上経過している、宅地建物取引業者が住宅を取得してからリフォーム工事を行って再販売するまでの期間が2年以内等
2024年1月以降は省エネ基準以上適合の証明書を提出
さて、前述のように新築住宅の場合、2024年1月以降に建築確認を受けたものは、省エネ基準以上の性能がなければ住宅ローン減税は受けられない。具体的には以下のいずれかの性能を求められることになる。
長期優良住宅(認定住宅)
長期にわたり良好な状態で使用するための措置が構造と設備に講じられた優良な住宅。所管行政庁に申請することで認定される。
低炭素住宅(認定住宅)
二酸化炭素の排出を抑えるための対策が講じられた住宅。所管行政庁に申請することで認定される。
ZEH水準省エネ住宅
ZEH基準、つまり日本住宅性能表示基準の断熱等級5かつ一次エネ等級6の性能を有する住宅。なお、太陽光発電システムは必須ではない。
省エネ基準適合住宅
日本住宅性能表示基準の断熱等級4以上かつ一次エネ等級4以上の性能を有する住宅。
住宅性能のレベルは、下から上へと高くなる。したがって、最低でも省エネ基準に適合していないと住宅ローン減税を受けることができなくなるというわけだ。
まずは建築依頼先等に相談を
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅は、住宅ローン減税の申請時に省エネ基準以上適合の証明書を提出しなければならない。証明書は下記のいずれかになる。
・建設住宅性能評価書(登録住宅性能評価機関のみが発行)
・住宅省エネルギー性能証明書(登録住宅評価機関等のほか建築士も発行可能)
これらの評価書の取得は、注文住宅であれば設計段階で建築依頼先へ相談すれば代行してくれるはずだ。分譲住宅の場合は、原則すでに取得済みの物件を選ぶことになる。また、住宅性能を上げれば上げるほど、建築費も上がる。費用対効果やどの程度の性能を求めるかを明確にするには、やはり建築依頼先等に相談すればいいだろう。
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