千客万来施設とは
千客万来施設とは、豊洲市場の6街区にできる商業施設のことである。豊洲市場の本体施設と連携し、豊洲ならではの活気や賑わいを生み出すための施設だ。商業施設と温泉、ホテルを備えた施設であり、2024年2月1日にオープンが予定されている。
場所は「江東区豊洲六丁目」で、ゆりかもめ市場前駅の西側に近接する立地にある。市場前駅からペデストリアンデッキを歩き、豊洲市場へ入る手前に設けられる施設となっている。
東京都では、「築地特有の貴重な財産であるにぎわいを継承・発展させるとともに、市場本体施設と連携し、豊洲ならではの活気やにぎわいを生み出す」ことを目的に千客万来施設を整備するものとしている。施設全体のコンセプトは「豊洲江戸前市場」であり、食を起点に日本の文化を発信することが基本理念だ。
民間事業者によって営業される施設であり、50年間の事業用定期借地権方式で土地が貸し出される計画となっている。施設を運営する民間事業者は、神奈川県小田原市に本社を持ち、全国に温浴施設を展開する万葉倶楽部株式会社だ。
計画施設の概要
千客万来施設は、商業棟と温泉・ホテル棟の2棟から構成され、ゆりかもめ市場前駅からペデストリアンデッキで接続する計画となっている。
(1)商業棟
商業棟は、江戸の街並みを再現したオープンモールで飲食店や物販店舗が入り、市場に隣接する立地を活かした新鮮な食材も販売される予定だ。
商業棟の魅力は、なんといっても建物の外観にある。御影石や淡路島の「いぶし瓦」等の伝統的な建築素材や、多摩産材などを採用した木造建築によって、江戸の風情と古い街並みが再現された建物となる予定だ。商業棟は、地上3階建て地下1階、建物の延床面積が14,690.63平米の計画だ。
万葉倶楽部株式会社は、JR小田原駅東口で「ミナカ小田原」という江戸情緒あふれる商業施設を展開しているが、千客万来施設もミナカ小田原と似た雰囲気になるのではないかと期待される。ちなみにミナカ小田原は、2021年にグッドデザイン賞を受賞している。
(2)温泉・ホテル棟
温泉・ホテル棟は、地上9階建て地下1階、建物の延床面積が19,095.73平米の施設だ。商業棟は江戸風情溢れる低層の建物であるが、温泉・ホテル棟は近代的な高層建築物となっている。
屋上の展望デッキには足湯が設置されており、豊洲の景観を一望できる展望足湯庭園が2ヶ所設けられる計画となっている。温泉施設は、露天風呂とサウナ、岩盤浴、エステ・マッサージが備わっており、温泉の湯は箱根・湯河原温泉から専用トレーラーで運ばれる予定だ。温泉・ホテル棟内には、全天候型のイベントスペースが設けられており、キッチンスタジオや道具市を配置して食の情報を発信できるようになっている。
これまでの経緯
千客万来施設のような賑わいを創出する施設は、早い段階から計画されていたが、実現に至るまでは決して順調な道のりではなかった。
千客万来施設の運営事業者は万葉倶楽部株式会社となっているが、実は2014年に大和ハウス工業株式会社と株式会社喜代村(すしざんまいの会社)が運営事業者に決まっていた時期があった。当初の施設コンセプトも首都圏最大級の温浴施設であるため、万葉倶楽部株式会社の計画と重複する部分はある。しかしながら、当時はお台場にある「大江戸温泉物語」との競合が懸念されたことを理由に、2015年に大和ハウス工業株式会社と株式会社喜台村が運営事業者を辞退するに至っている。
その後、2015年に運営事業者の再公募が行われ、2016年に万葉倶楽部株式会社が運営事業者に決定した。ただし、2016年には豊洲市場への移転計画自体が延期されている。
さらに直近では、新型コロナウイルスや建築コスト上昇の影響で設計を一部縮小する等の変更が行われたため、開業予定が2023年春から2024年2月(約10ヶ月の遅れ)へと変更された。紆余曲折はあったものの、多くの人の努力の結果、なんとか実現にこぎ着けた形となっている。
なお、豊洲市場では千客万来施設に向けて、2019年より豊洲市場内の敷地を使って賑わいの創出活動を継続している。2020年1月からは、5街区に「江戸前場下町」という仮設施設を建て、飲食店や物販店舗の経営がなされている。豊洲市場における飲食店や物販店舗の実績は積み上がっていることから、既に豊洲市場の一定数のファンは存在しており、千客万来施設は好スタートを切れるものと予想される。
期待されること
千客万来施設ができれば、以下のようなことが期待される。
(1)訪日外国人観光客の増加
千客万来施設は、日本文化を感じることができる商業棟が整備されるため、訪日外国人環境客の増加が期待される。もともと、豊洲に移転する前の築地市場は外国人観光客に人気のスポットであったことから、豊洲市場は観光資源としてのポテンシャルは十分に高い。温泉・ホテル棟に宿泊施設ができることで、早朝からマグロの競りを見に行くこともしやすくなる。豊洲市場は午前中の早い時間に訪れないと市場の雰囲気を楽しめないため、近くにホテルができることは観光客の増加に大きく寄与する。
外国人観光客は、2022年の終盤あたりから円安も手伝い急速に回復している状況にある。2024年2月に千客万来施設がオープンすれば、ちょうど外国人観光客の回復トレンドを捉えることもでき、オープン当初から高稼働で営業できる可能性もあると思われる。
(2)観光客の滞在時間の増加
千客万来施設ができれば、国内外の観光客の豊洲市場周辺における滞在時間が伸びることが期待される。滞在時間が伸びると食事や買い物をする機会も増えるため、豊洲市場周辺に与える経済効果は大きくなる。現状、豊洲市場には市場施設しかない点が観光資源としては、若干弱い。もともとの築地市場には、場外には飲食店が建ち並び、近くに築地本願寺もあるため、観光客が周辺を回遊して食事や買い物を楽しめる環境があった。
現在の豊洲市場のように市場しかない環境だと、午前中の早い時間に行かないと見どころが減ってしまい、午後からは十分に楽しめない街となってしまう。千客万来施設のようないつでも楽しめる施設があれば、午前中に市場、午後に温泉といった観光もできるようになる。
(3)鉄道延伸計画との相乗効果
豊洲市場周辺では2つの鉄道の延伸が計画されており、相乗効果も期待される。2つの延伸計画とは、「東京メトロ有楽町線の分岐線」と「都心部・臨海地域地下鉄」である。
東京メトロ有楽町線の分岐線
1つ目の東京メトロ有楽町線の分岐線とは、東京メトロ有楽町線の豊洲駅から都営新宿線の住吉駅までの延伸計画を指す。現在の東西に並走している有楽町線と東西線、都営新宿線の3路線を南北に貫く形でつなげる計画だ。東京メトロ有楽町線の分岐線は、2030年半ば頃の開業が予定されている。
現段階で豊洲市場へ訪れるには、有楽町線の豊洲駅からゆりかもめの豊洲駅に乗り換えて市場前駅に行く方法がある。有楽町線の豊洲駅は豊洲市場へ向かう起点であり、豊洲駅へのアクセスが向上すれば豊洲市場への観光客もさらに増える可能性がある。分岐線は、東西線や都営新宿線からも人を引き込めるようになるため、豊洲市場へは首都圏の広範囲からアクセスがしやすくなる。
東京メトロ有楽町線が分岐線を延伸。新しい豊洲~住吉区間の概要とは
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都心部・臨海地域地下鉄
2つ目の都心部・臨海地域地下鉄とは、JR東京駅から有明・東京ビッグサイトへ通じる地下鉄計画のことだ。こちらはさらに直接的な効果があり、千客万来施設の目の前辺りに「豊洲市場駅」ができる予定である。都心部・臨海地域地下鉄は、2040年までに開業することが目標となっている。
東京と有明をつなぐ新線が開通予定。臨海地域地下鉄の概要と新駅の位置とは?
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都心部・臨海地域地下鉄は、単にJR東京駅から有明・東京ビッグサイトを結ぶだけではなく、JR東京駅からはつくばエクスプレスへ、有明・東京ビッグサイトからは羽田空港へとつながることが計画されている。
つくばエクスプレスと接続すれば茨城方面からのアクセスが良くなり、羽田空港と接続すれば日本全国および世界中からのアクセスが向上することになる。豊洲市場はこれから交通網が充実していくエリアにあり、千客万来施設を足掛かりに観光拠点としても発展していくことが期待される。
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