「男女共同参画社会」時代の共働き世帯

日本は先進諸国の中でも、特に女性の社会的地位に課題があるといわれている。
政府はそういった背景もあり、「男女共同参画社会」の実現への取組みを進めている。男女共同参画社会基本法第2条によると「男女共同参画社会とは、“男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会”」と記載されている。

女性の社会的地位についてはまだまだ課題があるといわれる日本。しかし、女性の社会進出は進んでおり、年々共働き世帯は増えている。内閣府男女共同参画局の「令和4年版 男女共同参画白書」によると、1985年では専業主婦世帯936万世帯に対し共働き世帯数は718万世帯だったが、2021年では専業主婦世帯458万世帯に対し共働き世帯は1,177万世帯となっている。もはや共働きは特別なことではない。

2021年の「雇用者の共働き世帯」は、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」の2倍以上となる(内閣府男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」より)2021年の「雇用者の共働き世帯」は、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」の2倍以上となる(内閣府男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」より)

共働き世帯が増えることは、出産・子育てなどにもサポートが必要となり多くの課題がある。忘れがちではあるが、実は日々の暮らしを円滑に行うための家事についても大きな課題がある。かつてのように主婦が専業として家事を行うことができず、夫婦双方の協力が欠かせなくなる。特にここ数年のコロナ禍により、リモートワークなども進み、家で過ごす時間が増えると家事もおのずと増えているのだ。

家事の軽減方法や分担方法については、さまざまな解決方法がいわれているが、住まいから家事の課題に向き合った例がある。大和ハウス工業の「家事シェアハウス」だ。
今回、「家事シェアハウス」の考えを採り入れたひとつ、東京都八王子市にある「まちなかジーヴォみなみ野シティ (分譲住宅)」を訪問し、この企画を推進している大和ハウス工業株式会社 住宅事業本部 マーケティング室 ブランド戦略グループの多田さんにお話を伺った。

2021年の「雇用者の共働き世帯」は、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」の2倍以上となる(内閣府男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」より)「まちなかジーヴォみなみ野シティ」

「名もなき家事」が家事負担の隠れたストレス

大和ハウス工業が「家事シェアハウス」を開発したのは2014年、場所は富山であった。
富山県が位置する北陸は、昔から共働き率の高い地域である。「家事シェアハウス」は、富山支店で「共働きをしながら、一向に減らない家事負担をなんとかしたい」という女性社員のプロジェクトチームにより、企画・商品化された。その後、2016年に中日本に展開、2017年から全国に販売を拡大した。また、2021年には東京都府中市において全戸に「家事シェアハウス」を採用した戸建住宅団地「家事シェアタウン」の販売を開始。2023年には、「家事シェアタウン」を全国で本格展開することとなった。

さて「家事シェアハウス」とはどういったものなのだろうか。その背景には「名もなき家事」の存在があるという。
「家事……というと、掃除・洗濯・料理を思い浮かべますが、私たちが快適に暮らすためには名前のついている家事だけでなく、細かい様々な“名もなき家事”の存在があるのです」と多田さんはいう。

「大和ハウス工業が実施した意識調査では、家事分担の割合の意識に妻と夫で差がありました。夫の回答では「夫3割:妻7割」がトップであるにもかかわらず、妻の回答では「夫1割:妻9割」がトップという結果だったのです。
例えば、夫が“ゴミ捨てをやっている”といっても、単にゴミ袋をもってゴミ置き場においていくことを指すのですが、実はその前に家中のゴミを集めて、分別をし、新しいゴミ袋をセットして…と細かい作業が必要となります。トイレットペーパーを替えたり、シャンプーやリンスの詰め替えをしたり、買ってきたものを決められた場所にしまったり、新聞紙や雑誌をまとめたり、段ボールを畳んだり…など、暮らしの中には名前の付けられない“名もなき家事”が多く存在しています。そして、実際は、名もなき家事の存在に気が付いた妻が、多くの家事を担う結果となっていたのです」

家事負担の比率/夫・妻</br>実施時期:2017年4月15日~16日 調査方法:インターネット調査 調査対象:20~40代で同居のお子さまをお持ちの共働き夫婦家事負担の比率/夫・妻
実施時期:2017年4月15日~16日 調査方法:インターネット調査 調査対象:20~40代で同居のお子さまをお持ちの共働き夫婦
家事負担の比率/夫・妻</br>実施時期:2017年4月15日~16日 調査方法:インターネット調査 調査対象:20~40代で同居のお子さまをお持ちの共働き夫婦家の中には「名もなき家事」がいっぱいある

「だからといって、名もなき家事を細かく書き出して分担を決める…といったことで解決できるのか、というとそうではありません。うまくいく場合もあるでしょうけれど、一度分担を決めてしまうと“分担したのにやってくれない”、“できていないことを指摘してしまう”などかえってストレスになってしまうこともあるのです。
大切なのは、まずそういった細々としたことが生活を整えるのに必要だ、ということを家族みんなが意識することです。そしてもうひとつは、家族で話し合うこと。家族とはいえ、個人個人で家事の意識レベルが違います。高いレベルを設定するのではなく、まずは家族の意識が違うことを認識して、みんなが負担にならないレベルについて話し合うことも必要です。家事は“家の事”と書きますが、それは“家族ごと”だと思います。『家事シェアハウス』はそういった家族ごとをスムーズに行えるように工夫をした住まいを目指して開発されました」と、多田さん。

家族ごとである家の中を整え、暮らしを快適に過ごすためのサポートができる住まいが「家事シェアハウス」だという。

家事負担の比率/夫・妻</br>実施時期:2017年4月15日~16日 調査方法:インターネット調査 調査対象:20~40代で同居のお子さまをお持ちの共働き夫婦お話を伺った大和ハウス工業株式会社 住宅事業本部 マーケティング室 ブランド戦略グループの多田綾子さん

「家事シェアハウス」の特徴は「自分で自分のことができる」サポート

名もなき家事を含めた「家の事」をスムーズに進めるためには、まずは「意識をすること」「話し合うこと」が大切だということだが、分担ではなく家族みんなが参加する形が理想だと多田さんはいう。そのため、まずは「自分のことは自分でする」のが家事シェアの第一歩としている。

「家事シェアハウス」には、気にしなければ散らかってしまいがちな家族の行動を意識して、自分のことは自分でできるような工夫がされている。例えば学校や仕事から帰ってきて、コートやカバン、子供たちのスポーツ用具などをリビングやダイニングに置きっぱなしとならないように、玄関には個別の荷物を収納できる「自分専用カタヅケロッカー」が備え付けられている。

個別に使うから、物の管理と出し入れがスムーズになる「自分専用カタヅケロッカー」個別に使うから、物の管理と出し入れがスムーズになる「自分専用カタヅケロッカー」

玄関からの動線は、すぐに洗面所に通じているが、そこにも工夫がされている。部屋着に着替えて、脱いだ上着をかけられ、靴下やシャツを洗濯カゴに入れられるような「ファミリーユーティリティー」を設置。そのあと手を洗い、うがいをしてリビングに行けるように動線設計されている。
キッチン横のマルチスペースにはゴミ箱をスッキリ収納できる「キッチン横マルチスペース」もある。あとで2階にあがったときに持っていきたいものを階段に置きっぱなしにしないように階段横の壁にも「階段ポケット」という棚が設けられている。
また、冷蔵庫の扉に貼りがちだったり、ダイニングのテーブルに置きっぱなしになりやすいお知らせや請求書などの紙類は扉付きの「お便り紙蔵庫」にすっきりと収納。“どこにいったかしら”とならないように散らかる紙類に居場所をつくっている。

個別に使うから、物の管理と出し入れがスムーズになる「自分専用カタヅケロッカー」テーブルの上などに置いてしまい、散らかりがちな紙類。取っておきたいチラシやお知らせをストックできる「お便り紙蔵庫」

次のステップは、家族で「情報シェア」し「家事参加」をすること

次のステップとして、多田さんは、「家事のプロセスと現状を家族内で共有する“情報シェア”が大切」だという。
「細々とした“名もなき家事”をみんなで認識をしたら、次は家事のプロセスを理解することが大切です。そして、今そのプロセスを含めた現状がどうなっているのかの情報シェアをすることが必要です」

例えば、買い物を例にとると、トイレットペーパーのストックをチェックして少なくなってきたら補充をするということをみんなが意識し、情報共有するということだ。情報シェアにはボードを活用することも有効だという。例えば、情報シェアボードには“トイレットペーパー在庫が少し。今週末には買う”などメモをしておくのだ。気が付いた人が情報ボードにメモをし、それを家族で共有する、というわけ。

そして、また次のステップは「みんなで家事参加を習慣にする」こと。先のトイレットペーパーもついでのある家族が買って補充をし、情報ボードに「買っておいたよ」などと伝える。洗濯や掃除、料理についても積極的に家事参加をしていくとおのずとそれぞれの負担が減るのだという。

「家事シェアハウスはその考え方で動線や収納の場所を考えています。小さい子どもでも自分のことができるように工夫したプランやリビングやキッチンにさらにわかりやすい収納を加えたプランなど、プランはいくつかありますが、いずれも家事シェアハウスには、情報を共有し、自分のことは自分で行い、積極的に家事参加ができるような工夫がされています」という。

家族で情報をシェアする「情報シェアボード」家族で情報をシェアする「情報シェアボード」

「家事シェアハウス」の考えられた動線はコロナ禍でも活躍

実は「家事シェアハウス」の考え方は、コロナ禍の新しい生活様式にも当てはまる部分が多い。
「家に帰ったら、上着を個人ロッカーに入れて、すぐに洗面所に入り、部屋着に着替えてシャツや靴下を洗濯物入れに入れる。実は、外からのホコリや花粉、ウィルスをもちこまない動線と同じなのです。
また、コロナ禍をきっかけにリモートワークも進んだことから、ますます家で家族と過ごす時間が長くなり、家事シェアの重要さは増しているといえると思います」と多田さんはいう。

帰宅後のウィルス対策やキッチン横やリビングにちょっとしたテレワークの場所をつくったりと住まいで工夫をすることは、毎日のちょっとした行動に差がでてくる。家事シェアの動線の考え方はWithコロナの時代の暮らしにも合うようだ。

家事シェア動線の一例。①自分専用カタヅケロッカー ②ファミリーユーティリティ ③キッチン横マルチスペース ④お便り紙蔵庫 ⑤自分専用ボックス ⑦ビューティクローゼット家事シェア動線の一例。①自分専用カタヅケロッカー ②ファミリーユーティリティ ③キッチン横マルチスペース ④お便り紙蔵庫 ⑤自分専用ボックス ⑦ビューティクローゼット

さて、富山県で始まった「家事シェアハウス」も9年目をむかえる。実際にこのプランに住んだ方の感想はどうだったのだろうか。

「家事シェアハウスに入居後一か月のオーナー様にアンケートをとったところ約9割が“散らかりにくくなった”とお答えになっています。また約8割が“家族が自然に片付けるようになった”と答えています。なにより9割近くの方が“心の負担が減った”と答えていただいたのは嬉しいですね」

家事のことを家族みんなで考えることは、暮らしの快適さを考えることだ。特に小さなことの積み重ねで家族の誰かに負担がかかっていた“名もなき家事”を意識すること、自分のことは自分で行うこと、さらに情報を共有して、家事にみんなが参加していくことは、イコール暮らしのクオリティをあげていくことなのだ、と認識したい。

■取材協力
大和ハウス工業株式会社 
「家事シェアハウス」 https://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/kajishare/

■参考資料
内閣府男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」

ホームズ君

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