所有者不明土地の現状

所有者不明土地とは、「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡が付かない土地」のことである。

2018年(平成30年)版土地白書によると、2016年度(平成28年度)地籍調査に基づくと全国の所有者不明土地は約410万haとなっており、九州本島(約367万ha)を超える水準と推計されている。

https://www.mlit.go.jp/common/001238041.pdf

また、同土地白書では、所有者不明土地をこのまま放置し続ければ2040年には全国の所有者不明土地は約720万haに達し、北海道本島(約780万ha)に迫る水準にまで増加するとしている。所有者不明土地は、相続登記や住所変更登記がなされていないことが主な発生原因と指摘されている。

所有者不明土地は公共事業や災害復旧の支障となっているのが現状であり、国を挙げて解消していかなければならない課題となっている。

所有者不明土地は今後も増加することが予想されており対策が急務だ所有者不明土地は今後も増加することが予想されており対策が急務だ

課題とこれまでの取組み

所有者不明土地に関して2019年から法制審議会によって本格的な議論がなされてきた。法制審議会で議論されてきた所有者不明土地の課題は以下の3つである。

・予防(所有者不明土地を今後発生させないための方策)
・利用(既に発生している所有者不明土地を有効に利用するための方策)
・解消(既に発生している所有者不明土地を解消するための方策)

法制審議会の議論を経て、2021年4月28日に所有者不明土地に関する以下の3つの関連法案が公布されている。

・不動産登記法の改正
・民法の改正
・相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)の新設

一般的に所有者不明土地の関連法は、上記の「不動産登記法」と「民法」、「相続土地国庫帰属法」の3つを指すことが多い。所有者不明土地の関連法に関する新制度は、2023年から2024年にかけて始まっていく予定である。

また、所有者不明土地の関連法に先がけて2018年11月15日に「所有者不明土地の利用と円滑化等に関する特別措置法」が制定されている。特別措置法に関しては既に運用されており、2022年11月1日からは新たに改正された特別措置法も施行された状況である。

所有者不明土地対策の全体像

所有者不明土地の関連法は、予防と利用、解消の3つを目的としてそれぞれ新しい制度が設けられている。

(1)予防

所有者不明土地の予防は、主に「相続登記および住所変更登記の義務化」と「相続土地国庫帰属制度」の2つによって今後の発生を防ぐ対策が図られている。

相続登記および住所変更登記の義務化

相続登記および住所変更登記の義務化に関しては、不動産登記法の改正で行われている。相続登記は2022年11月時点では義務化されていないが、2024年4月1日より義務化される予定である。

義務化された以降は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権の取得をしたことを知った日から3年以内」に登記しなければならない。また、相続登記は義務化前に既に発生している相続に関しても義務化の対象となっている。
罰則も存在し、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは「10万円以下」の過料が定められている。
相続登記がついに義務化。 いつから始まる? 期限はいつまで? 制度を解説
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01224/

住所変更登記に関しては、2026年4月までに施行される予定だ。

相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度に関しては、新設された相続土地国庫帰属法による新たな制度である。相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日から始まる予定となっている。

相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得した一定の要件を満たす土地に関し、国に土地を渡すことができる制度だ。従来からある相続放棄では必要な資産も不要な資産も全て放棄しなければならなかったが、相続土地国庫帰属制度なら不要な土地だけを国庫に帰属させることができるため、画期的な制度といえる。

ただし、帰属させることができる土地は、「建物等がないこと」や「権利関係に争いがないこと」等の一定の要件を満たす必要があり、要件のハードルは高い。また、国庫に土地を帰属させるには10年分の土地管理費相当額も納めなければいけないこととなっている。

相続土地国庫帰属制度とは? いつから始まる? 制度や要件を解説
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01352/

(2)利用

所有者不明土地は、主に「共有制度の見直し」と「財産管理制度の見直し」、「相隣関係規定の見直し」の3つによって利用を促進する対策が図られている。3つの利用対策は2023年4月1日より施行される民法によって実現される予定だ。

共有制度の見直し

共有制度の見直しとは、一部の共有者が不明となっている土地について他の共有者によって円滑に共有地が利用できる制度である。
裁判所の関与の下、不明共有者等に対して公告等の手続きを行えば、残りの共有者が同意することで共有地の処分や利用ができるという新しい制度である。

財産管理制度の見直し

財産管理制度の見直しとは、所有者が不明な土地や建物に対し、裁判所が管理人を選任できるという新しい制度である。
例えば、土地が適切に管理されていないことで不利益を被る隣地の所有者は、利害関係人として裁判所に管理を命ずる処分を申し立てることができる。
選任された管理人は裁判所の許可があれば売却も可能となるといった制度だ。

隣関係規定の見直し

相隣関係規定の見直しとは、隣地が所有者不明土地であるか否かに関わらず、隣地所有者には越境した枝の切除やライフラインの設置、測量のための立ち入り等を行う一定の権利を認めたものである。
対象地の隣地が所有者不明土地であることで、対象地の利用が阻害されることを是正する制度となっている。

出典:法務省 相続登記義務化周知のパンフレット<br>
https://www.moj.go.jp/content/001382091.pdf出典:法務省 相続登記義務化周知のパンフレット
https://www.moj.go.jp/content/001382091.pdf

(3)解消

所有者不明土地は、主に「共有持分の取得制度」によって解消を促進する対策が図られている。解消対策も2023年4月1日より施行される民法によって行われる。

新しい民法では、複数人で共有している不動産において、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所に申し立てることにより共有持分を取得できる制度が新設される。

買取金額は裁判所が決定し、当該金額を供託所に供託することで共有持分を取得できるという仕組みだ。判明している所有者が所有者不明部分を買い取ることができれば、所有者不明の状態は解消されることになる。

所有者不明土地法の改正とガイドライン

所有者不明土地には「所有者不明土地の利用と円滑化等に関する特別措置法(特別措置法)」も存在する。特別措置法は、簡単にいうと所有者不明土地を地域に役立つ土地として利用できる制度を定めた法律である。特別措置法では、地域に役立つ事業のことを「地域福利増進事業」と名付けている。

特別措置法は2018年11月15日に制定された法律であるが、制度を強化する目的で2022年5月9日に改正が行われている。改正された特別措置法は、2022年11月1日に施行されている。

改正特別措置法では、主に「利用の円滑化の促進」や「管理の適正化」、「推進体制の強化」の3点が改訂された。

利用の円滑化の促進に関しては、地域福利増進事業の拡大が図られている。従来、地域福利増進事業は公園や道路、災害時の仮設住宅等であったが、備蓄倉庫や再生可能エネルギー発電設備としても利用できるようになった。また、土地の使用上限期間も10年から20年に拡大されている。

地域福利増進事業に関しては、「地域福利増進事業ガイドライン」にて定義や手続きの流れ等の詳細が定められている。

管理の適正化に関しては、市町村長による勧告・命令・代執行制度が創設された。勧告・命令・代執行制度を設けることで、確知所有者(判明している所有者のこと)に対して自発的な管理を促すことを目的としている。勧告・命令・代執行の判断基準に関しては、「所有者不明土地の管理の適正化のための措置に関するガイドライン」にて詳細が定められている。

推進体制の強化とは、市町村が対策計画の作成や対策協議会の設置が可能となった制度だ。市町村は必要に応じて国土交通省の職員の派遣も要請できるようになっており、対策を推進しやすくなっている。

改正所有者不明土地法に関するガイドライン等を公表~改正所有者不明土地法が施行されます~
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo02_hh_000001_00049.html

今後の予定

各法律の今後の予定をまとめると以下の通りである。

予防策

不動産登記法:相続登記の義務化 2024年4月1日~
不動産登記法:住所変更登記の義務化 2026年4月までに施行
相続土地国庫帰属制度 2023年4月27日~

利用策

民法:共有制度の見直し 2023年4月1日~
民法:財産管理制度の見直し 2023年4月1日~
民法:相隣関係規定の見直し 2023年4月1日~
特別措置法:利用の円滑化の促進等 2022年11月1日~

解消策

民法:不明共有者持分の取得等 2023年4月1日~

なお、今後は老朽化マンションにおいても管理の円滑化を図るための法整備が行われる予定となっている。老朽化マンションに関しては2023年から法制審議会で検討される見込みとなっており、将来は所有者不明マンション等にも対策が行われる見込みだ。

所有者不明土地問題 対策推進の工程表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai10/kouteihyou.pdf

今後老朽化したマンションも急増することが予想されており、所有者不明の対策が進められる今後老朽化したマンションも急増することが予想されており、所有者不明の対策が進められる

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