地域の消防・防災を担う消防団
夏から秋にかけて日本は災害の季節だ。大雨や台風が毎年のように各地を襲い、川の氾濫や洪水などが起こっている。こうした自然災害のときや、火災現場などで活躍する一般の人たちがいる。消防署員に交じって、同じような服装で活動する、消防団員たちだ。
古くから地域防災の担い手として活動している消防団組織は、全国各地にある。彼らの活動は、非常時・平時合わせて幅広い場面に及び、災害の多い近年は、消防団の重要性も高くなってきている。しかし少子高齢化が進む社会にあって、消防団も例外ではなく団員数は減少を続けている。知っているようで知らない消防団。その組織や役割、抱える問題について調べてみた。
江戸時代から続く、消防団の歴史。消防署員との違いとは?
消防団の始まりは、 江戸時代にさかのぼる。人家が密集する江戸の町では火事が頻発していたため、8代将軍徳川吉宗の命によって、江戸南町奉行・大岡越前が町火消(まちびけし) をつくった。武家の火消しは旗本や譜代大名らが担い、町屋の火消しは町人によって行うものとされ、これが現在の消防団の起源といわれている。
現在も、多くの市町村に消防団は存在し、それぞれの地域住民によって組織されているという点も、江戸時代の町火消から変わっていない。
一方、市町村の行政には、消防本部や消防署がある。公務員によって組織された消防組織と、住民組織である消防団が存在しているのは、消防組織法が関係している。同法第9条に「市町村は、その消防事務を処理するため、次に掲げる機関の全部又は一部を設けなければならない。一、消防本部 二、消防署 三、消防団」とされているためだ。
この法律によって消防組織は、公務員による消防組織と、住民で組織される消防団が併存しているのだ。
住民組織といえども、消防団員は非常勤特別職の地方公務員とされており、年間一定の金額(年額報酬の平均額は、2021年4月時点で3万1,072円)が報酬として支給されるほか、災害や訓練に出場した場合には、手当てが支給される。
災害時だけでなく平時も地域密着で幅広く活動。そのための教育や訓練も
消防団の役割を簡潔に言えば、地域密着で消防活動や防災活動を行うことだ。火災が起きた際、いちはやく現場にかけつけることができるのは、消防団が地域住民による組織だからこそ。そして、多くの人が持つ消防団の活動イメージも、ここにあるのではないだろうか。
その活動範囲は火災現場だけでなく、彼らはさまざまな災害現場にもかけつける。地震や台風、近年増加している豪雨災害などの被災地では救助活動や負傷者の応急処置、避難誘導、警戒巡視、後方支援など、幅広い役割を担っている。彼らの活動は非常時だけではなく、日常で起こる迷子や行方不明者の捜索なども含まれる。
非常時の初動の迅速さにおいても、地域住人からなる消防団の存在は心強く、消防団の存在意義は何といっても地理的に地域を熟知している点や、地域の住民とのつながりの中で生まれる緻密な情報網に大きなメリットがあるといえる。
消防団員は非常時に備え、段階や機能に応じて定められた教育訓練を受け、さらには机上の教育だけでなく、ポンプ操法の技術向上や、消火・防災訓練などの実技訓練も日頃から受けている。新年の季語にもなっている、出初式(でぞめしき)の勇壮な放水シーンを見たことがある人もいると思うが、その行事にも消防署員とともに消防団員も参加する。出初式には、訓練された技術の披露とともに、住民への防火・防災意識を広める目的があり、その役割を果たしている。
平時において地域の家庭などを訪問したり、年末に各地で見られる歳末特別警戒による巡回なども防火・防災への啓蒙活動の一環である。
いかがだろうか。非常時・平時ともに、実にさまざまな活動を行っていることが、ここに挙げただけでも感じられるだろう。消防本部や消防署とも連携しながら、地域住人による組織の特性を生かして地域の安全を守る。それが消防団の役割だ。
消防団の現状。歴史ある組織だからこそ、現代に合わせた見直しも
このように、地域の安全確保に欠かせない消防団。近年ますます自然災害が増加し、その役割の重要性も高まっている。しかし団員数は減少を続け、歯止めがきかない状況だ。
2021年に行われた「消防団の組織概要等に関する調査(令和3年度)」によると、全国市町村での消防団員数は約80万5,000人。前年比で約1万3,000人減少しているという。また、3年連続で1万人以上減少しているとも報告されている。
地方においては都市部への人口流出問題や都市部以上に少子高齢の影響が大きいこともあり、団員を確保するのが難しくなってきている。進学や就職をきっかけに若年層が地元を離れるケースも多く、減少のみならず団員構成が高齢層中心になっていることも大きな課題だ。
では人口が集中する都市部なら団員を確保できるのかといえば、そうではない。近隣や地域社会とのつながりをほとんど持たない人も多い都市部では、地域活動への意識も比較的薄い。それだけではない、非常時のみならず、平時にも就業後や週末の休日に拘束される消防団活動に、会社員として働く人たちが都合を合わせにくいこともネックにもなっている。
消防団活動がもともとほかに職業を持ちながらの活動であることが前提とはいえ、友人や家族とのプライベートな時間の確保などに困難が生じると、意欲だけで務めるには無理が生じてしまう。商業や農業など自営業者が多い時代には、時間的に自由が利く彼らに依存できた部分もあったが、現代の特に都市部においては、団員によるボランティア精神のみに依存するには、組織や体制に無理が生じてきているのではないだろうか。
総務省消防庁は、団員が減少し続けている現状から「消防団員の処遇の改善や広報の拡充等を図っていく」としている(2022年1月「消防団の組織概要等に関する調査の結果について」より)。歴史ある消防団だからこそ、何より人々の生活の安全を守る地域防災の担い手としての役割が今後も増大するであろう現状では、その組織や体制について見直していく点は大いにありそうだ。
18歳以上であれば、学生も入団可能
総務省消防庁が発表した、2021年の「消防白書」には、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化」として、地域防災の中核組織としてその存在を明記している。
白書では消防団員数の減少、高齢化、若年団員数の減少などの課題を上げながら、被雇用者の消防団員、女性消防団員、学生消防団員、機能別消防団員の4分野では団員が増加傾向にあるとしている(機能別消防団員とは基本団員のみでは人員不足が生じるような大規模災害に限り出動する「大規模災害団員」や、高齢者宅訪問等の火災予防、広報活動等のみに従事する団員などをいう)。加えて、危機的状況にある団員数を改善するために、「消防団員の処遇等に関する検討会」の開催を経て、報酬等の処遇改善策、消防団への理解の促進、幅広い住民の入団促進へ向けての提言をまとめた。
つまり、消防団員の減少に伴って、職業も年齢も従来とは変わりつつある消防団において、今後も地域防災のうえで、重要な組織として維持していくためには、団員の処遇の改善をはじめ改善の手を加えながら、その募集や告知に関しても、ネットを活用するなど現代に合った変革が必要と、指摘している。
消防団について、その歴史や役割から、現状抱える問題点改善の方向などをレポートしてきた。この先も災害大国であり続ける日本において、住民の手による防災は今後もますますその重要度が増す。地域防災の重要な役割を果たす地域コミュニティのなかでも、訓練され専門性の高い消防団はその代表といえる。新しい住まいを見つけて、新しい街で暮らしを始めようとする場面があったら、一度、地域の消防団を訪ねて、その活動を知ってみるのもいいかもしれない。
消防団を通して、街を知り、人を知り、自然を知るということもあるかもしれない。
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