2008年から始まった、パソナグループの淡路島の地方創生
「淡路島西海岸」をご存じだろうか。「淡路島西海岸」とは、兵庫県淡路島の西海岸沿いのエリアのことだ。自然体験型のアニメパーク「ニジゲンノモリ」や「HELLO KITTY SHOW BOX」、淡路島産の旬の食材を楽しめる滞在型レストラン「Auberge フレンチの森」や劇場とレストランが併設された「青海波」など、島を旅するために必要な“遊・食・文化”を提供する全14施設(※1)が点在している。淡路島は、兵庫県の南部にある瀬戸内海で最大の島。本州とは明石海峡大橋で、四国とは大鳴門橋で結ばれておりアクセスの利便性が高い。
これらは地方創生の一貫として、パソナグループが中心となって進めている。アニメや地産地消の料理など魅力のあるコンテンツで、家族連れから日本に興味のある海外旅行客まで、さまざまな客層を呼び込み、淡路島へ観光の道を生み出そうとするものだ。近年大手飲食店グループも淡路島への出店も続いており、淡路島の観光スポットエリアになっている。
総合人材サービスの大手パソナグループが、淡路島で地方創生の取り組みをスタートしたのは2008年。それ以降、これらの施設を自社運営という形態で次々に展開することで、島内に人材を誘致し、雇用を生み出している。また2020年には、本社機能の一部を兵庫県淡路島に移転。広報部やHR本部、財務経理部や経営企画部などの本社業務の移転を進めています。さらに2023年までに1,200名分の業務を移転する計画で、2025年までに1万人の雇用創出を数値目標に掲げている。
淡路島での地方創生の最初の拠点となる「のじまスコーラ」が、今年で10年目を迎える。2008年から現在に至るまで、どのように地方創生が進んできたのか、また今後どのような展望を見据えているのかを株式会社パソナグループ関西・淡路 広報部・諏訪ほのかさんに伺った。
※1:2022年8月現在
農業の6次産業化と地域交流の拠点「のじまスコーラ」
1995年に起きた阪神淡路大震災で、淡路島は大きな被害を受けた。パソナグループ初の施設となる複合型施設「のじまスコーラ」は、その野島断層の近くに位置する、廃校になっていた野島小学校をリノベーションしたものだ。
小学校はきれいなまま残されていたため、既存の造りや設備をほぼそのまま活用。教室はそれぞれ、1階はのじまベーカリー、物産マルシェと淡路島で採れた食材を生かしたカフェ、2階にはイタリアンレストラン、3階はバーベキュースペースやワークショップ・イベント用スペースに生まれ変わった。
6次産業化の拠点として動き出した「のじまスコーラ」。パソナグループの取り組みとして2008年から始まった独立就農を目指す農業人材を育成する「パソナチャレンジファーム」プロジェクトや、2011年から始まった若い芸術家や音楽家が農業と芸術活動を兼業する「半農半芸」という新しい働き方を提案する「ここから村」プロジェクトメンバーが連携。施設内のマルシェや飲食店で使われる食材は、淡路島にある自社農園チャレンジファームで育て、レストランの立ち上げは「ここから村」プロジェクトのメンバーが中心となった。
今年で10年目を迎える「のじまスコーラ」。阪神淡路大震災の地域復興のシンボルでありながらも、淡路島の地域資源を外に発信する島内外の人が集まる、パソナグループの象徴的な場所に育っている。
淡路島に雇用をつくる、観光拠点やプロジェクトの運営
これらのプロジェクトはどのように生まれ、進められているのだろうか。
「パソナグループには、社会の問題点を解決するという理念があります。その時その時の社会課題を解決しながら、雇用を生み出していくことをプロジェクトの軸に据えています」
例えば、多様なジャンルの料理が楽しめる集合型のレストラン施設「淡路島シェフガーデン」は、2020年のコロナ禍に誕生した。明石海峡と大阪湾を眺められる屋外テラスで、コロナ禍で影響を受けた料理人や、有名店での修業を経て自店舗を望む若手などが、全国から27人集まった。料理人たちが支払うのは、1区画家賃9万円と光熱費のみ。飲食店やシェフの支援として、店舗と調理設備などはパソナグループが用意した。出店を機に料理人たちは淡路島に移住。テイクアウトして屋外で食事が食べられるとして、コロナ禍には地域の人にも重宝されたという。
文化的なプロジェクトによる雇用が多く発生していることも特徴的だ。「音楽島プロジェクト」は、仕事と音楽活動を両立できる場を提供することで、芸術活動を長く続けていくための土台を支えている。仕事と音楽活動のダブルキャリアを実践して、互いに協働・協奏することで音楽による地域活性を目指している。地方をエンターテイメントで創生するために始まった活動「ONE STEP」は、年に1回行われる淡路島の歴史や文化を題材につくりあげるオリジナルショーとして、2011年から続いている。和太鼓などは有志のパソナ社員による演奏だ。
雇用をつくることは、どの地方でも課題に挙がる問題のひとつ。観光拠点や文化的プロジェクトが進めば、島外の社員は島に移住する。島内に雇用が生まれるだけでなく、実際に住むことで地域の魅力を体感し、文化芸術を通して、島の魅力を外に発信していくという流れがつくられている。
働きやすい環境が、地域創生につながる
パソナグループの充実した社内制度も、多くのプロジェクトに貢献しているようだ。近年働き方を選べる範囲も広がっており、例えば、週4日は自分の担当の仕事、週1日はパソナグループ内の別事業、という選択もできるそうだ(契約形態によって異なる)。また、社内起業がしやすい風土もある。社内制度に「チャレンジの日」が年に1回あり、自分事業や業務改善などの提案ができる。承認された企画は、会社からの支援を受けてスタートする。前職での美容師技術を生かし、社内用の美容院を立ち上げた社員もいるそうだ。ここで生まれた企画が、淡路島西海岸での観光施設や新規プロジェクトにつながることも多い。
保育所やインターナショナルスクール併設のオフィス「パソナファミリーオフィス」も2020年にオープン。併設のAwaji Island International Schoolとも連携し、3歳児から小学生までの保育・学童保育を行っている。オフィスの下に保育所があるという環境は、働く子育て世代にとってはありがたいだろう。またひとり親が淡路島で正社員として働きやすい制度「ひとり親支援プロジェクト」には、家具付き社宅の提供や社食制度が充実している。現に、パソナグループの全社員数の女性の割合は約6割(2022年8月現在)を占めている。
「生き生きとした人が集まることで、新しいプロジェクトが生まれ、それが雇用再生につながっています。私たちは淡路島を、夢を持った人が集まってくる場所にしたいと考えています。今は、2025年に控えた大阪での国際博覧会出展に向けて動いています。今後生まれていくプロジェクトに関しては、健康やウエルネスなどの項目が新たに追加されました。旅行代理店などを通して得た近年の海外旅行客の需要も加味して、需要のある施設開発を展開していく予定です」
1人ひとりに合わせた柔軟な雇用形態が、地域を豊かにしていくのかもしれない。社員たちの淡路島での活動が、少しずつ島全体に染み出していく。淡路島のひとつの文化として定着するまで、その道のりを見守りたい。
取材協力:のじまスコーラ
https://nojima-scuola.com/
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