LCPとは? BCPとの違い
東京都LCP住宅のLCPとは、「Life Continuity Performance」の略で、災害発生時の居住継続性能を表す。具体的には、地震が発生した際の停電時でも水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の非常用電源の確保されている物件や、防災マニュアルや防災訓練・備蓄等によって自宅での生活を継続しやすい物件のことを指す。
防災に関連した類似の言葉として、BCPという用語もある。BCPとは、「Business Continuity Plan」の略であり、災害のような緊急事態が発生したときでも企業が事業を継続できるようにするための計画のことである。また、防災に関連してBCPと似たLCPという言葉もあり、こちらは「Life Continuity Plan」の略。BCPの生活版の仕組みと考えると分かりやすい。
防災の観点から、LCPもBCPも災害に備える点は共通であるが、LCPが「生活継続計画」や「居住継続性能」の意味合いであるのに対し、BCPが「事業者の事業継続の計画」を表している点が異なる。
LCP(居住継続性能)はBCPよりも浸透しておらず、現状では東京都や一部のハウスメーカーが使用している状況に留まっている。LCPといえば「液晶ポリマー」を指すことが多く、「生活継続計画」、または「居住継続性能」を表す用語としてはこれから少しずつ認知されていくものと思われる。
東京都LCP住宅の制度概要
東京都では、「東京都LCP住宅」という独自の制度を設けている。東京都LCP住宅とは、災害時でも自宅での生活を継続しやすい「共同住宅」のことを指す。一戸建ては対象外であり、マンションのような共同住宅であれば分譲または賃貸に関わらず東京都LCP住宅の対象となりうる。マンションのような共同住宅では、災害時に停電が発生するとエレベーターの運転が停止し、ポンプが作動しなくなることで水が供給されないといった特有の問題が生じる。
マンションは停電時に生活の継続が困難となりやすいことから、居住継続性能を客観的に示せる指標があると買主や借主が安心して物件を選びやすくなるといえる。そこで、東京都では居住継続性能を備えた物件の登録制度を設けることで、誰でも物件の居住継続性能を知ることができるようにしたのだ。
東京都LCP住宅に登録された物件は、東京都のホームページで公開される。売主または貸主は災害に強い物件であることをアピールでき、買主または借主は住まい選びの参考にすることができるというメリットがある。
登録基準
東京都LCP住宅は、「耐震性」と「ハード対策」、「ソフト対策」の3つの要件が主な登録基準となっている。
東京都LCP住宅の登録基準
(1)耐震性
耐震性は、新耐震基準に適合している物件が対象となる。新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けている建物のことを指す。新耐震基準の建物であれば、数十年に一度遭遇する震度5程度に対してはほとんど損傷せず、数百年に一度遭遇する震度6強~7程度に対しても建物が倒壊しないとされている。一方で、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けている建物は旧耐震基準と呼ばれる。旧耐震基準の建物であっても耐震診断または耐震改修により新耐震基準への適合が認められる物件も存在する。
東京都LCP住宅では、耐震診断や耐震改修によって新耐震基準に適合していることが証明できる物件も対象となっている。
そのため、東京都LCP住宅であれば、建築年次に関わらず全ての物件が新耐震基準に適合しているということになる。
(2)ハード対策
ハード対策としては、停電時に水の供給および1基以上のエレベーターの運転を同時もしくは交互に行える電力供給が可能な非常用電源設備が設置されていることが要件となる。非常用電源設備は、自家発電設備や、太陽光発電システムおよび蓄電池、コージェネレーションシステム(廃熱等も利用するシステム)等の供給設備が想定されている。一般的に5階超の高層マンションは、電動の給水ポンプ設備が備わっている物件が多い。
給水ポンプを利用しているマンションは、停電時に水道やトイレが利用できないといった問題が生じる。停電時における給水ポンプ機能の確保は、ハード対策の一つの要件となっている。また、エレベーターに関しては、マンションの居住者全員が利用できることが要件となっている。
例えば、エレベーターが高層用と低層用に分かれている場合には、高層用のみだけが稼働しても登録要件は満たさない。交互運転であっても高層用と低層用の両方が稼働することが必要とされている。
(3)ソフト対策
ソフト対策としては、「防災マニュアルを策定していること」が必須事項として要件となっている。防災マニュアルの形式やページ数は問われていないが、災害時の自宅での生活継続をしやすくするための防災活動が記載されたマニュアルが登録基準の対象である。また、選択事項として「年1回以上の防災訓練の実施」や、「3日分程度の飲料水・食料の備蓄」、「応急用資器材の確保」、「災害時の連絡体制の整備」のうちいずれか一つに取り組んでいることも要件となっている。
登録の流れと防災対応力のレベル
東京都LCP住宅に登録するには、登録要件を満たした物件の住宅所有者が東京都に申請を行う必要がある。その後、東京都が要件を確認し、登録が認められれば住宅所有者に通知がなされ、登録ステッカーが配布されるという流れだ。
登録ステッカーでは、星の数で3段階の物件の防災対応力が表されるようになっている。星の数と防災対応力の関係は以下の通りである。
一つ星:ソフト対策、またはハード対策(稼働計画日数3日未満)のいずれか1つのみ
二つ星:ハード対策(稼働計画日数3日以上)のみ、またはソフト対策とハード対策(稼働計画日数3日未満)の両方を実施
三つ星:ソフト対策とハード対策(稼働計画日数3日以上)の両方を実施
登録されている物件の特徴
東京都LCP住宅として登録されている物件は、2022年7月末の調査時点において6件のみとなっている。防災対応力としては、三つ星が3物件、二つ星が3物件となっており、6件全ての物件で電力供給のハード対策は3日以上である。
また、分譲と賃貸の割合は、分譲が3物件、賃貸が3物件となっており、今のところ分譲も賃貸も同じ比率で存在する。3物件の分譲マンションの戸数は「524戸」、「324戸」、「1,078戸」となっており、大型物件が多いという特徴がある。3物件の賃貸マンションの戸数も「253戸」、「150戸」、「27戸」であり、3物件中2物件が大型物件となっている。
東京都LCP住宅の登録事例
東京都LCP住宅に登録されている物件の一つに中央区晴海2丁目にある「パークタワー晴海」がある。東京メトロ有楽町線の月島駅から徒歩12分にある総戸数1,078戸、地上48階のタワーマンションだ。
東京都LCP住宅情報登録簿によれば、災害時の稼働される給水ポンプは8基、エレベーターは9基となっている。稼働日数は3日で、防災マニュアルも策定済みであり、防災対応力は「三つ星」である。
パークタワー晴海では、2階に備蓄倉庫が設けられており、飲料水も食料も3日分が備蓄されている。救急箱は44セット、パック毛布は66枚、ウェットティッシュは259個が備わっていることも公開されており、災害対策が十分に備わっていることもわかる。パークタワー晴海は2019年に竣工した物件であり、災害対策としては最先端のレベルが備わっている物件といえる。
これから新築のタワーマンションを購入する際は、災害発生時の居住継続性能を見極める上で一つの目安としてみるのもいいだろう。
災害に強い物件選びのポイント
東京都LCP住宅は2022年7月末時点では6件しかないことから、実質的には滅多にお目にかかれない物件となっている。買主や借主が興味を持った物件であっても、「東京都LCP住宅ではない物件」である可能性はかなり高い。
ただし、実際には東京都LCP住宅に相当する物件は相応に存在するものと考えられる。
そこで、災害に強い物件を選ぶには、自分で売主または不動産会社に非常用発電装置の有無を確認することがポイントとなる。非常用発電設備の稼働日数が3日以上であれば、それだけで少なくとも二つ星の東京都LCP住宅の要件は満たしていることになる。
特にタワーマンションを購入する人は、停電時に高層階への移動が困難になりやすいため、停電対策がどのようになっているかは確認しておきたい。耐震性と、非常用発電設備の「有無」と「稼働日数」の2つは確認しておくことをおすすめする。








