けっして他人事ではない武力攻撃

最近のウクライナ情勢のニュースを見聞きして、心を痛めている人は多いだろう。しかし、突然武力攻撃を受ける事態は、遠い国の話だけではないはずだ。わが国でも、武力攻撃やテロを100%防げるとは断言できない。そのため、万一攻撃などを受けた際にどのように行動すればいいのか、また事前に何を備えておけばいいのかを知っておくことは重要だ。そこで内閣官房は「武力攻撃やテロなどから身を守るために」という行動マニュアルを用意している。その概要を解説しよう。

瞬時に住民へ情報を伝達するJアラート

武力攻撃やテロ行為は、いつ、どこで、どのように発生するのかわからない。それゆえ発生した際は、安全を確保するためにできるだけ早くそれらの情報を把握する必要がある。消防庁では、地方公共団体と連携してJアラート(全国瞬時警報システム)を整備している。これは、弾道ミサイル攻撃のほか、地震や津波などの緊急情報を人工衛星および地上回線を通じて全国の都道府県・市町村等に送信し、瞬時に住民へ伝達するシステムだ。情報は各地域の屋外スピーカーや個別のスマートフォンへのメールなどによって通知される。
特別なサイレン音については、国民保護ポータルサイトでサンプル音を聴くこともできる。

Jアラートからの弾道ミサイル発射などの情報は、各市町村の屋外スピーカーやケーブルテレビ、個々のスマートフォンへのメールなどによって伝えられる(出典:総務省消防庁「平成29年版消防白書」)Jアラートからの弾道ミサイル発射などの情報は、各市町村の屋外スピーカーやケーブルテレビ、個々のスマートフォンへのメールなどによって伝えられる(出典:総務省消防庁「平成29年版消防白書」)

武力攻撃やテロ行為が発生した際に直ちにとるべき行動

「武力攻撃やテロなどから身を守るために」では、武力攻撃やテロ行為が発生し、警報が発令された場合は直ちに以下の行動をとるべきとしている。

1. 屋内にいる場合

・ドアや窓を全部閉める

・ガス、水道、換気扇を止める

・ドア、壁、窓ガラスから離れて座る


2. 屋外にいる場合

・近隣の堅牢な建物や地下街など屋内に避難する

・車を運転している場合は、道路外に停める。やむを得ず道路に置いて避難するときは、キーを付けたまま左端に駐車するなど緊急通行車両の通行の妨害とならないようにする


3. 避難指示が出された場合

行政機関からの避難指示としては、屋内への避難、避難所への避難、市町村や都道府県を越えた遠方への避難などが考えられる。その都度指示に従い落ち着いて行動したい。また、自宅から別の場所へ避難をする場合は、次のことに留意する。

・ガスの元栓を閉め、各コンセントは抜く。ただし、冷蔵庫のコンセントは挿しておく

・頑丈な靴、長ズボン、長袖シャツ、帽子などを着用し、非常持ち出し品を持参する

・運転免許証やパスポートなど身分を証明できるものを携行する

・家の戸締りをする

・近所の人に声をかける

化学剤、生物剤、核物質を用いられた場合の留意点

武力攻撃やテロ行為のなかでも化学剤、生物剤、核物質を用いられた場合は、以下のことに留意したい。

1. 化学剤を用いられた場合

化学剤には、神経剤、びらん剤、血液剤、窒息剤などがある。一般的に風下に拡散し、空気よりも重いサリンなどの神経剤は下をはうように広がる。

●留意点

・口と鼻をハンカチなどで覆いながら、密閉性の高い屋内または風上の高台などに避難する。
・屋内では窓を閉め、目張りによって室内を密閉し、できるだけ窓のない中央の部屋へ移動する。
・汚染された服や腕時計、コンタクトレンズなどは速やかに処分する必要があるが、うかつに脱ぐと汚染した部分が皮膚に触れるおそれがあるので注意が必要。例えば頭からかぶる服を着ていた場合は、ハサミで切り裂いて脱ぎ、ビニール袋で密閉する。その後、石けんで全身をよく洗う。

2. 生物剤が用いられた場合

生物剤とは、人や動物の殺傷などを目的とした病原微生物あるいはその毒素のこと。飲食物や日用品への混入などで人に知られることなく散布することが可能だ。

●留意点

「化学剤を用いられた場合」に準じる。

3. 核物質が用いられた場合

核兵器の被害としては、当初爆発による物質の燃焼、建物の破壊、放射能汚染などがある。その後、放射性降下物(放射性物質を含んだ灰)が拡散、降下することによる放射線被害などが生じる。

●留意点

・閃光や火球が発生した場合は、失明するおそれがあるので見ない
・地下施設やコンクリート建物などへ避難する
・上着を頭からかぶり、口や鼻をハンカチで覆いながら皮膚の露出をできるだけ少なくして爆心地から遠くへ避難する。その際、風下を避けて風向きに対してなるべく垂直方向へ逃げる
・そのほか「化学剤を用いられた場合」に準じる

地震などの自然災害に備えた非常持ち出し品が役立つ

地震などの自然災害に備えて非常持ち出し品をまとめている家庭は少なくないだろう。これらの備蓄品は、武力攻撃やテロが発生した際の避難時にも大いに役立つ。ただし、化学剤などによる攻撃に備えて、肌の露出を少なくする手袋、帽子、ゴーグル、マスク、ハンカチなども用意しておこう。

これらの留意点を実行することや非常持ち出し品をまとめておくことは、それほど難しいことではないはずだ。しかし、人間というものはいざというときに忘れてしまうもの。この機会に忘れないよう「武力攻撃やテロなどから身を守るために」をプリントアウトするなど、行動に移したい。

非常持ち出し品の例。地震などの自然災害時だけでなく武力攻撃を受けた際にも役立つので家族全員分常備しておきたい(出典:内閣府「武力攻撃やテロなどから身を守るために」)非常持ち出し品の例。地震などの自然災害時だけでなく武力攻撃を受けた際にも役立つので家族全員分常備しておきたい(出典:内閣府「武力攻撃やテロなどから身を守るために」)

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