木工所からスタートしたカリモク家具
愛知県・東浦町に本社を構えるカリモク家具株式会社。1940(昭和15)年に初代が愛知県刈谷市に木工所を開いたのが始まりだ。木製部品を受注する中で培ってきた技術を生かし、1962(昭和37)年から自社で家具の生産・販売を開始。今では国内外に知られる木製家具メーカーとなった。
製造はアイテムごとに分けられ、知多郡東浦町内にある5工場と、岐阜県にある2工場で行われている。そのうち最も歴史が古い、東浦町にある総張工場を見学させてもらえることになった。ここでは主に革張りのソファが作られている。
座り心地を研究した自社製ウレタンフォーム
ソファは、デザイン性とゆったりとくつろげることが求められる。カリモクでは座り心地を追求し、ソファのクッション材となるモールドウレタンフォームを自社で生産している。
ウレタンフォームには大きく分けて、スラブウレタンフォームとモールドウレタンフォームがある。スラブウレタンフォームは一度に大きく作り、そこから用途に合うサイズにカットしていく。型のフタはせずに自然に発泡させるため、全体が均質な素材になる。一方、モールドウレタンフォームは型を作って、発泡液を流し込んで成形。型のフタを閉じて成形発泡させることで、複雑な形状を作り出すことができ、オリジナルの発泡液により高い耐久性を実現している。
カリモクの主力商品は、快適な座り心地を目指し、自社製モールドウレタンフォームを採用。これまでの研究で、製造には温度管理が大切ということが分かり、徹底した温度管理の元で生産している。
発泡ロボットラインでは型自体を温めて発泡。ロボットには発泡液の種類と注入量、注入経路とそのスピードがプログラムされており、快適な座り心地を実現するためにさまざまな工夫がされている。
熟練の技術が必要な木材加工と、木をより美しくする塗装
ソファのひじ掛けや脚などの木材は、NCルーターと呼ばれるコンピューター制御の機械で加工。とはいえ、木地調整は手作業が必要で、熟練の技術が必要になる。コンピューターの最先端技術を導入しつつ、受け継いできた人の技術も加えて仕上げているのだ。
木製家具国内生産トップを誇るカリモクは、製造工場とは別にグループ会社として資材工場もある。そこで木材を家具に適した材料に仕上げ、総張工場をはじめとする製造工場で家具に仕上げていく。一貫したものづくりで、より高品質な家具を目指しているという。
塗装は、7~8もの工程がある。まずは生地着色と拭き取りの工程から始まる。透明感がある塗料で木目を際立たせつつ、木材の個体差を違和感がないようにする。
それから塗膜を作る下塗り、中塗りとし、塗料によって毛羽立った表面を滑らかにする磨き、製品全体として塗装色を整える着色、仕上げの上塗りと続く。
カリモクでは木材料の個体差や、工場間のばらつきを補うために、塗装色の標準見本板が設定されている。塗装の各工程ではこの見本板を確認しながら作業している。
座り心地や見た目の美しさに関係する天然革は、細やかな管理を行う
木材と共に、ソファの表面を覆う革も重要な素材である。天然の革は保湿性・通気性のよさや伸びる特性のため、肌あたりがいい。それが座り心地に関係してくる。
国内外から仕入れた牛革は、大きさや形をスキャンして登録し、バーコードで管理。その革データは、後の裁断工程で活用される。
合わせて、天然ものならではの傷の状態などを人の目で一つ一つチェックしていく。例えば、首のシワ、血筋といわれる血管の痕、差し毛グラブといわれる体を守るための太く固い毛の痕や虫刺され痕など。腹部は柔らかく伸びやすい特性もある。
そういったところを確認後、5つの基準に分けられる。革の良さが際立ち、最もソファのいい部位に使用したいPゾーン、ノーマルなAゾーン、そして多少傷のあるB、C、Dゾーンという具合だ。
Cゾーンは、隠れて見えにくい部分に当たるようにする。Dゾーンは商品には使えないところとなるが、1枚の革を大切に、できるだけ使い込めるように考慮する。
8割がオーダー品! 効率を考えられた裁断、縫製工程
チェックを終え、データ化された革は、裁断機へ。コンピューターで管理されており、バーコードを読み込めばソファに必要な部位の型が革に投影され、カットされていく。
現在、カリモクでは8割がオーダー品。同じデザインのソファでも、サイズや革の種類、色、また樹種や塗装色までもがオーダーができるようになっているため、個別対応が必要となる。その分、デジタル化が効率を補っている。
なお、2~3割ほど布製のソファも製作している。
裁断された革は、1台のソファに必要な分を、ファスナーなどの小物も合わせてひとまとめにセッティングされる。このセットを、約300台のミシンが用意されており、28のラインに分かれて縫う作業が行われる。流れ作業ではなく、1ライン約2名のスタッフが1台分を仕上げている。
縫製の前には、“革スキ”という作業も行われる。だいたいの革は厚さ1.7ミリ~1.8ミリあり、それを縫い代で重ね合わせるとかなりの厚さになってしまう。縫製のしにくさに加え、そのまま縫うと凸凹感が出てしまって見た目が悪くなるので、重なる部分にあたるところを専用工具で革を削って薄くする。
ソファを形作る内部フレームを組み立て、張り工程を経て完成!
次は木枠の加工と組立へ。木枠とはソファの内部フレームのこと。いよいよソファの形が見えてくるところだ。
まず、ひじ掛け部分などの加工にも使われていた機械、NCルーターを用いて、合板などのパネル素材から木枠用の部品を切り抜く。それらの部品を、ソファのデザインに合わせてつくられた治具(じぐ)と呼ばれる器具を使いながら組み立て、接合部に接着剤を付けて仕上げていく。
そして座面のSバネ、フェルトなどの下張り材を取り付ける。
それから、クッションや革を張り付ける最終の張り工程。これまでの工程では最先端の機械も導入しながら行われてきたが、ここでは職人の手仕事が重要に。ウレタンの角と縫製された革の角を合わせるといった、複雑な形状の部分も美しく仕上げるには、熟練の技術が必要になる。椅子張り技能士という国家資格を持った職人が、腕力と指先の繊細な感覚を駆使して仕上げていくそうだ。
そして、飾木や脚などを取り付け、最終的な検査をして出荷となる。総張工場では1日に約250台のソファが完成する。
カリモク家具のソファは、修理して長く使う愛用者も多い
カリモクでは、修理依頼も多く、年間約800台を手がけるという。古いものだと型紙がなくなっているデザインもあり、その分、費用も高くなる。それでも慣れ親しんできたソファを使っていきたいと、修理依頼が相次ぐそうだ。
工場見学を通して感じたのは、最初から最後まで、本当に細やかな配慮がされているということ。耐久性、座り心地、見映え…国産家具メーカーとしての誇りで真摯に向き合っている。研究や試験によって長く使えるようにし、木材資源の有効活用といった環境にやさしい取組みも。そういったことが愛着のある家具となり、顧客を魅了し続けるのだと思った。
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総張工場のオフィス部分は、老朽化に伴い建て替えが行われ、2019年に新しくなった。ライブショールームを兼ねたオフィスには、自社製品が置かれている。オフィス仕様のソファやテーブル、照明まで、こだわったインテリアがそろう。建築事務所や、オフィスの新築・改築を検討している人の見学を受け付けている。
総張工場の見学は、大ナゴヤツアーズでも実施されたことがある。今後、新型コロナウイルス感染症の影響が少なくなれば、再開予定とのこと。再開の折には、ソファの購入を検討している人ばかりでなく、ものづくりの面白さを間近に見られる機会としてもおすすめだ。
取材協力:カリモク家具株式会社 https://www.karimoku.co.jp/
※大ナゴヤツアーズ https://dai-nagoyatours.jp/
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