使いやすいワークスペースとは? 神戸市灘区の一戸建てのリノベーション物件を見てきた

理想は地方移住してリモートワークがメインの生活がしたい。でも出勤や打合せのために、会社や営業先に週に数回は都市部に出なければいけないというのが現実ではないだろうか。働き方改革が進む中、移住とまではいかないまでもwebを活用してのビジネスや副業など、多様な働き方が近年増えてきているのは事実だ。

これらの需要に応える、株式会社アートアンドクラフトのリノベーション物件が、2021年7月に兵庫県神戸市灘区に誕生した。リノベーションの先駆けであるアートアンドクラフトが展開する「クラフトシリーズ」は、都心部の一軒家や小さなビルの中古物件を活用したリノベーションで、規制概念に囚われないプランで都市生活の豊かさを提案するものだ。

物件の外観。J R東海道線「六甲道駅」から徒歩約10分の場所にある。写真提供:アートアンドクラフト物件の外観。J R東海道線「六甲道駅」から徒歩約10分の場所にある。写真提供:アートアンドクラフト

「クラフトハウス六甲道」の特徴は、3階建て・屋上付きの延床面積81.13m2というミニマルな物件に、新しい働き方に対応した職住一体の要素が、しっかりと組み込まれているところだ。「クラフトシリーズ」としては、約10年ぶりの一戸建て物件となる。

「クラフトシリーズ」のターゲットである、二人暮らしや小さな子どものいる世帯を想定した時の購入価格や物件の広さを鑑みると、ちょうどいいサイズの都市部の一戸建て物件はそう多くはない。都市部の一戸建てのひとつのモデルケースを提示したいと、3年前から阪神間で探していたが、コロナ禍の2020年にやっと出会えた物件なのだそう。

生活空間と切り離された、1階のワークスペース

アートアンドクラフト取締役副社長の松下文子さんアートアンドクラフト取締役副社長の松下文子さん

「間取りのアイデアは、昨年からのステイホームの中で生まれました。既存の住まいに在宅ワークのスペースをどう入れ込むのがいいかをテーマにした物件です。自分自身が、自宅でのリモートワークを数ヶ月実践したことで気づいた、こうあったらいいのにな、がいろいろ詰め込まれています」と企画を担当した、アートアンドクラフト・取締役副社長の松下文子さんは話す。

通り沿いのドアを開けると、ワークスペースは1階にある。上がり框までの玄関部分は広い土間になっており、長いカウンターが通路とワークスペースを切り分けている。カウンターは、備え付けの仕事用のデスクだ。そしてカウンターの奥にある余白スペースにテーブルを置けば、来客対応や仕事の打ち合わせにも使える。

「広い空間やリビングの中に、ワークスペースを組み込むというプランは見てきたのですが、実際に自分がリモートワークをしてみると、生活空間とは区別されていたほうがいいなと感じたのです」

イメージしたのは、「離れ(ハナレ)」。ワークスペースに行くまでにはカウンターをぐるりと回る必要がある。あえてつくったこの時間は、生活から仕事に向かうための気持ちの切り替えのための時間。住まいの中で、生活のスペースとワークスペースを切り離すだけでなく、気持ちを切り替えて仕事に取り組みやすい環境にもなっている。また、リモートワークで必須になるオンラインミーティングの際に、生活音が聞こえてしまうこともない。個室を求める需要もユーザーからあるが、住まいの中に個室を追加する余裕がないケースも多い。思い切って、1階をまるごとワークスペースにしてしまうというのは新しい発想だ。個人事業主などの場合、そのまま事務所やショップとして使うこともできそうだ。

アートアンドクラフト取締役副社長の松下文子さん広いカウンターは、収納や本棚づかいなど多機能。手洗い場もあるため、コーヒーなどのドリンクも提供できる
アートアンドクラフト取締役副社長の松下文子さん角を使えるので、広々。パソコン作業や書類を広げての作業もしやすい

2、3階で日常、屋上は非日常

階段を上がると、2階は風呂と寝室のフロア。洗面台が置かれる脱衣所は、実は混雑しがちだという問題点があった。脱衣所という空間そのものをなくすことで開放感を生み出しただけでなく、洗面台を通路に配置することで、脱衣所での混雑を解消し、洗面台をインテリアとして魅せる楽しみも作った。3階は、リビングとダイニングのフロア。ランドリースペースとダイニングキッチンを隣接させることで、家事動線を効率化している。

寝室までの廊下沿いに用意された洗面台寝室までの廊下沿いに用意された洗面台
寝室までの廊下沿いに用意された洗面台洗面台の並びにトイレ、後ろ側にバススペース。写真提供:アートアンドクラフト

神戸に住む魅力のひとつに、山と海の近さがよく挙げられる。「クラフトハウス六甲道」の屋上からは、六甲山と神戸の街並みが、どちらも望むことができる。日常から少し離れた余暇を過ごすのにも最適だろう。

「屋上を含めて4層に重なる物件の特徴を、最大限に生かしました。間口が狭いため、開放感を出せるよう、階段の位置や目線の高さ、仕切りの調整などの工夫を細部に施しています。素材や色を変えることで、壁や仕切りがなくても緩やかに空間を区切っています」

寝室までの廊下沿いに用意された洗面台屋上スペース。リノベーションは施さず、そのまま活用している。写真提供:アートアンドクラフト

リノベーションで、マニアックなこだわりを実現したい

都市部で暮らしながら、住まいにもこだわりたい。ただ、都市部は物件が密集し、土地価格そのものが高いため、十分なスペースを確保することが予算的に難しいという問題もある。「だからこそ、都市部では特に、リノベーションを提案したいです」

築年数が古い建物だと、一部の物件では現行の法律に適合しない「既存不適格建築物」となる可能性が出てくる。建て替えの場合、現行の基準に合わせる必要が出てくるため、床面積が減ってしまい、購入時よりも使える間取りが狭くなるというデメリットもある。リノベーションの場合、既存の建物の基本的な部分を残して改築を行うのでその心配もなく、コストや予算も抑えられる。

「今後、働き方の多様化に伴って、住まいに求められることも変化すると思います。どんな空間が必要かは、人によって異なります。自分の求める住まいについて、もっとマニアックになっていい。十人十色の住まい方を、リノベーションで実現したいです。建物に合わせるのではなく、暮らしに合わせて建物や間取りをつくることが、家づくりのスタンダードになればいいですね」

「クラフトハウス六甲道」
https://www.a-crafts-event.com/craftshouse

1階の「ハナレ」スペースは、さまざまな使い方が想像できる。写真提供:アートアンドクラフト1階の「ハナレ」スペースは、さまざまな使い方が想像できる。写真提供:アートアンドクラフト