中古マンション価格は上昇傾向
コロナ禍においても中古マンションの価格は上昇し続けている。公益財団法人東日本不動産流通機構の首都圏不動産流通市場の動向(2020年)によれば、首都圏の中古マンション、中古一戸建て、土地(100~200m2)の2019年に対する成約価格の比率は以下のようになっている。
【2019年に対する2020年の価格比率】
中古マンション +4.6%
中古戸建て ▲0.2%
土地(100~200 m2) ▲3.0%
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2020.pdf
新型コロナウイルスの影響は2020年当初から始まったため、2019年と2020年を比較するとコロナ禍の前後の値動きを比較できることになる。2019年と2020年を比較すると、中古一戸建てと土地については2019年から価格が下がる結果となった。
一方で、中古マンションは+4.6%であり、中古マンションだけはコロナ禍の中でも価格が上昇している。中古マンションは一戸建てや土地とは異なる値動きを見せているのだ。では、なぜマンションだけがコロナ禍でも価格上昇が続いているのであろうか。
次章から中古マンション価格が上昇している理由について解説する。
理由1.新築マンション価格が高いから
中古マンション価格が高いことの直接的な原因は、新築マンションの価格が高いからという理由が挙げられる。
中古マンション市場の値動きは、新築マンション市場の値動きと基本的に一致している。中古マンション市場は、新築マンションを検討したものの、予算が合わずに中古マンションも選択肢に入れた人たちが流れ込んでくることが多い。そのため、新築マンションが高くなると中古マンションも連動して高くなる。
日本人の多くは比較的新築物件を好む。まずは新築物件から検討し、価格などの理由から新築を断念した人たちが中古市場に一定数流れてくる。そのため、新築市場が安いのに中古市場だけ高騰しているということはなく、中古マンションの高騰の背景には必ず新築マンションの高騰があるのだ。
株式会社不動産経済研究所の「首都圏マンション市場動向(2020年まとめ)」
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/448/s2020.pdf
によると、首都圏における新築マンションの2019年に対する平均価格の比率は+1.7%(m2単価は+5.2%)と上昇している。
新築マンション高騰の背景
コロナ禍でも新築マンションの高騰が続いた理由は主に2つある。
1つ目は、新築マンションの価格は土地仕入れの時期から2~3年のタイムラグがあり、予定していた販売価格から簡単には下げられないといった背景がある。マンション建設は、まずデベロッパーがマンション用地を仕入れることから始める。デベロッパーが買うことのできる用地の価格は、販売価格から逆算して決定される。実際の販売に至るまでは設計期間や工事期間を要するため、用地の仕入れから2~3年経過した後になる。
つまり、デベロッパーは、2~3年後の販売価格を想定して用地の仕入れを行っていることになる。2020年に分譲されたマンションは、2017年~2018年あたりに仕込まれた土地が多いため、2020年のコロナ禍はもちろん想定されていない。デベロッパーとしては、安易にマンション価格を下げてしまうと赤字になってしまうことから、当初の予定通りの価格で売却しなければならなくなる。その結果、コロナ禍であっても価格を下げることはできなかったのだ。
2つ目としては、価格を維持するために供給量の調整がなされたことが背景にある。
株式会社不動産経済研究所の「首都圏マンション市場動向(2020年まとめ)」https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/448/s2020.pdf
によると、首都圏における新築マンションの供給量は2019年から2020年にかけて▲12.8%も減っている。
デベロッパーが、コロナ禍におけるマンション価格の値崩れを恐れて供給量を絞ったのだ。なぜ2~3年前に仕込んだ分譲マンションの供給量を調整できるのかというと、デベロッパーは1つのマンションの分譲期を分けることで供給量の調整が可能だからだ。昨今のマンション販売では、第1期分譲、第2期分譲、第3期分譲といった形で販売時期を複数回に分けることが多い。分譲期を分けているのは建物が未完成だからではなく、デベロッパーの戦略的な供給量の調整によるものとなっている。
2020年は、デベロッパーの供給量の調整が功を奏したことで新築マンションの価格が上昇したことになる。
理由2.投資目的や相続税対策目的の購入も一部ある
マンションには、実需以外の購入目的があるという理由も挙げられる。例えば、タワーマンションの上層階などは投資目的や相続税対策目的で購入する人も多く、タワーマンションでは一番価格の高い最上階から売却されていくことがよくある。
タワーマンションの上層階は、投資家にとっては値上がり益が見込みやすいという理由で人気があり、資産家にとっては相続税対策になるという理由で人気がある。
マンションには実需以外の需要も一部に存在するため、コロナ禍であってもマンション価格が堅調に推移した結果となったのだ。
理由3.マンションは二次取得者にも人気がある
一戸建てと異なるマンションの特徴としては、マンションには二次取得者も多いという点が挙げられる。二次取得者とは2回目以降の住宅の取得者のことである。国土交通省によると、注文住宅や分譲一戸建て住宅、分譲マンションの一次取得者(1回目の取得者のこと)の割合は、以下のようになっている。
【一次取得者の割合】
注文住宅 80.3%
分譲戸建て住宅 82.4%
分譲マンション 78.4%
出典:国土交通省「令和元年度住宅市場動向調査」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001348002.pdf
注文住宅や分譲一戸建て住宅は1回目の取得者の割合が8割を超えているが、分譲マンションは8割を下回っている。そのため、分譲マンションは2回目または3回目の二次取得者の割合がほかより多いということになる。二次取得者は世帯収入の高い富裕層が多いため、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的なダメージを受けた人が少ないと思われる。
マンションは富裕層である二次取得者にも販売できたことも、高い価格を維持できた一つの要因となったのだ。
理由4.コロナ禍で売り控える人が増えたから
中古マンションはコロナ禍で売り控える人が増えたことも、値段が上がった理由である。
公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2020.pdf
によれば、首都圏における中古マンションの新規登録件数(売り出した物件の数のこと)は、2019年と比較すると2020年は11.3%も減っている。2020年は2019年と比較すると、1割以上の人が不動産を売り控えたということになる。不動産を売り控えた理由としては、緊急事態宣言で外出自粛が奨励されたことが大きい。
1回目の緊急事態宣言の解除後も、「今売っても高く売れないだろう」と考える消費者心理が働き、全体的に売り控える動きが見られた。新築マンションに加えて、中古マンションの供給量も抑えられたことから、品薄状態になり価格が上がったといえる。
理由5.郊外の需要も増えているから
郊外の需要も増えていることも、中古マンションの価格を上げた原因と考えられる。新型コロナウイルスによって感染症対策としてリモートワークが普及したことから、広い家を求めて郊外に移り住む人たちの需要が増加した。首都圏の地域別の2019年に対する2020年の中古マンション価格の上昇率は以下の通りである。
東京都区部 5.3%
東京多摩地区 8.0%
埼玉県 2.7%
千葉県 3.9%
神奈川県(横浜川崎) 3.4%
神奈川県(横浜川崎以外) 4.9%
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2020.pdf
上昇率は、東京多摩地区や神奈川県(横浜川崎以外)、千葉県等の郊外で高い値を示している。2020年は郊外の物件も例年以上に上昇したことから、中古マンション市場全体の価格を押し上げる結果となった。
一戸建ても含めて全体が早くも回復基調にある
2020年末では一戸建ては不調に終わったが、2021年4月時点では一戸建ても含めて中古住宅市場は早くも回復基調にある。
2021年4月時点では、首都圏の中古一戸建て(成約価格)は6ヶ月連続で前年同月比を上回っている。中古マンション(成約m2単価)は12ヶ月連続で前年同月比を上回っている状況だ。
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報Market Watch2021年4月度」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202104_summary.pdf
一戸建ては6ヶ月連続で価格上昇がみられることから、既に回復基調にあると考えられる。2021年は、中古マンションだけでなく中古一戸建ての価格も上昇していくだろう。
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