変動金利はメガバンクの横並びが崩れ、固定金利も低下基調に
欧米を中心にコロナワクチン接種の広がりによる経済回復への期待が高まる一方、日本でもようやく接種の動きが全国的に進み始めてきた。コロナ禍で打撃を受けた経済活動の正常化が課題になるなか、足下の住宅ローン金利に変化はあるのか、2021年6月時点の動きと今後の見通しを探った。
主要な銀行の直近の金利動向を見ると、まず変動金利は一部を除いて膠着状態が続いている。そんななか、4月に金利の引き下げ幅を見直したのがみずほ銀行だ。同行ではネット住宅ローンのローン取扱手数料型の最大引き下げ幅を、それまでの2.0%から2.1%に拡大した。これにより、基準金利は2.475%のまま変わらないものの、最優遇金利が0.475%から0.375%に引き下げられている。この金利は主要銀行では最低水準となるものだ。これまでほぼ横並びで推移してきたメガバンクの変動金利の一角が崩れた形だが、今のところ追随する動きは見られない。
10年固定金利は4月に金利を引き上げた銀行が目立ったが、5月以降は引き下げに転じている。例えばりそな銀行は4月に金利を0.05%引き上げ、最優遇金利が0.695%になったが、5月には0.05%引き下げて0.645%に戻っている。また、みずほ銀行も4月に基準金利を0.05%引き上げたが、変動金利と同様に引き下げ幅を0.1%拡大したため、最優遇金利は0.05%下がって0.65%となった。同行では5月にも10年固定金利を0.05%引き下げており、現状の最優遇金利は0.60%と三井住友信託銀行に次ぐ低水準だ。
このところ低下基調となっているのが35年固定金利だ。フラット35最低金利は4月に0.02%アップしたが、その後は2ヶ月連続で0.01%ずつ下がっている。また住信SBIネット銀行や三井住友銀行のように3ヶ月連続で下がったケースもある。
4月以降は長期金利が低下に転じるも高止まり気味
短期金利の指標となる無担保コール翌日物金利は日銀がマイナス金利政策を導入した2016年2月以来、マイナス圏での推移となっており、大きな変動はない。そのため短期金利に連動する住宅ローン変動金利も各銀行の店頭表示金利(基準金利と呼ぶ銀行もある)は2%台で横ばいとなっている。実際の貸出金利は各行の金利引き下げ競争により徐々に下がってきており、この4月にはメガバンクの一角であるみずほ銀行が0.3%台を打ち出したことは前述のとおりだ。
一方、長期金利は2019年後半の米中貿易摩擦の激化や2020年に入ってからの新型コロナウイルス感染拡大などで大きく下げる場面があったが、2020年4月以降は10年物国債の金利が0%近辺で落ち着いた動きになっていた。長期金利が上昇に転じたのは、米国でバイデン政権が発足するとともに、同政権による財政拡大やワクチン接種の広がりによる景気回復への期待が膨らんだ2021年1月からだ。米国では物価上昇に伴うインフレ懸念も加わって3月下旬にかけて長期金利(10年国債金利)が一時1.7%を超えたが、その後は徐々に低下し、6月上旬には1.4%台まで下がっている。日本の長期金利も連動して2月下旬に0.15%まで上昇したが、その後は低下基調だ。
こうした長期金利の動きを受け、4月以降は住宅ローンの10年固定金利や35年固定金利を引き下げる銀行が目立つ。ただし2020年と比べると長期金利がやや高止まりとなっている分、住宅ローン金利も0.05%〜0.1%程度高めの水準となっている。
米国のインフレ懸念で金利が上昇すれば日本の金利にも影響!?
2020年に入って上昇トレンドとなった長期金利が、春先以降は日米とも下げ基調に転じたのは、米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀がともに現状の金融緩和を維持する姿勢を崩していないことが背景にある。中央銀行が市場から国債を大量に買い入れることで債券相場が高止まりし、長期金利が低水準を維持する構図だ。景気回復を期待した投資家が債券市場から株式市場へ資金をシフトしたとしても、中央銀行が金融緩和を続ける状況下では長期金利の上昇は限られる。
ただし、米国では景気回復や財政出動に伴うインフレ懸念が広がり、長期金利が上昇しやすい状態であることに変わりはない。同国の5月の消費者物価上昇率は前年同月比5.0%と高水準になっており、経済活動の再開に伴う在庫不足や人手不足でインフレ圧力が強まっている現状が浮き彫りになった。一方で日本ではワクチン接種の遅れから経済活動の停滞が長引くとの見方が多く、長期金利が反転上昇する動きは今のところ見られない。
FRBのパウエル議長は現在の物価上昇をコロナ禍による一時的な要因によるものとしており、金融緩和を縮小する考えは示していない。だが、景気回復が予想を上回る強さとなれば物価や金利が上昇に向かい、いずれテーパリング(量的緩和の縮小)が議論されるとの見方も少なくない。日本では消費者物価指数の下落が続いているが、米国で金利が上昇すれば日本の長期金利も影響を受けるだろう。低下傾向となっている日本の住宅ローン金利だが、今後しばらくは上昇に転じやすい状態が続きそうだ。
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