暮らしに屋外空間を取り込むことが日常になる?

在宅勤務が一般化するなどライフスタイルの変化がみられる中、自宅で多くの時間を過ごす方も増えてきている。家での時間が長くなると、わが家の居心地や使い勝手をより高めたい、という声も多く聞かれる。ワークスペースの充実はもちろんだが、家族の時間を楽しむため、子どもと触れ合うスペースとして、また、仕事中の気分転換の場として、室内だけでなく屋外空間を有効活用したい、という要望もあるようだ。

一戸建ての場合、庭を利用することも考えられるが、都市部では敷地が狭かったり密集地であることも多く、積極的に利用することが難しい場合もある。また、最近では、2階リビングの住まいも多くみられ、庭とは異なる屋外空間としてベランダやバルコニーを有効活用するケースも増えてきている。

一般的に、ベランダとは外に張り出した屋根のあるスペースのことで、バルコニーは、屋根のない開放的なスペースのこと。構造躯体や造作としてプランニングされるケース、エクステリア建材として商品化されたものを取り入れるケースがある。バルコニーやベランダ用の手すりなどの商品を揃えるメーカー2社に、最近の傾向やプランニングのポイントなどを聞いた。

(上)ワークスペースに接してバルコニーやベランダを設けることで、屋外空間もワークスペースの延長として気分転換の場として利用できる。床のアルミ製採光デッキ材は下の階に光を導くことも可能。[ルシアス バルコニー 柱建式 横格子] YKK AP    (下)都市住宅ではベランダを有効活用したい。細部までこだわった木目調による天然木の美しさを再現したベランダ手すり。[ベランダ手すり/モダンパネル ゆらぎ横面材] LIXIL (上)ワークスペースに接してバルコニーやベランダを設けることで、屋外空間もワークスペースの延長として気分転換の場として利用できる。床のアルミ製採光デッキ材は下の階に光を導くことも可能。[ルシアス バルコニー 柱建式 横格子] YKK AP    (下)都市住宅ではベランダを有効活用したい。細部までこだわった木目調による天然木の美しさを再現したベランダ手すり。[ベランダ手すり/モダンパネル ゆらぎ横面材] LIXIL 

カフェスペースやガーデニング、「ベランピング」など使い方はさまざま

プランニングにもよるが、バルコニーやベランダ空間の利用方法として、まず思い浮かぶのは洗濯物干し場かもしれない。しかし、最近では、実用性だけでなく暮らしを豊かにするスペースとして、積極的に活用するケースも多くみられる。

LIXILエクステリア事業部 エクステリア商品開発部 第一商品開発室 商品グループの岩谷一史さんは、バルコニーやベランダの利用方法として、もうひとつのリビングのように、「家族でランチやお茶・お酒を飲むなどして過ごしたり、ガーデニングや読書など、趣味の時間を快適に過ごせるような提案をしています。また、最近は在宅テレワークのほっと一息つきたい場所としての活用も注目されています」と話す。

また、YKK APエクステリア本部 エクステリア商品企画部 ウォール・窓エクステリア商品企画室 室長の藤田康人さんは、新しい使い方として、ベランダでキャンプ気分を楽しむベランピング(※)を挙げる。「小型のテントを張る本格的なものから、食事をしたり、テーブルとイスを置いてくつろぎのひと時を過ごすなど、『ベランピング』の楽しみ方もさまざまです」。家族とのふれあいの場、気軽なアウトドア体験の場として利用したいと考える方も増えてきているようだ。

※べランピング/ベランダとグランピングを合わせた造語

(上)木目を生かしたデザインの手すりで心地のよいバルコニー空間を。[ベランダ手すり/モダンパネル ゆらぎ横面材]  LIXIL  (下)風や光を取り入れながら視線をほどよく遮るスクリーンを用いることで快適さはアップする。 [ルシアス スクリーン バルコニー施工例] YKK AP(上)木目を生かしたデザインの手すりで心地のよいバルコニー空間を。[ベランダ手すり/モダンパネル ゆらぎ横面材]  LIXIL  (下)風や光を取り入れながら視線をほどよく遮るスクリーンを用いることで快適さはアップする。 [ルシアス スクリーン バルコニー施工例] YKK AP

居心地のよい空間とするためには、室内とのつながりに配慮

わが家にとって、居心地のいいバルコニーやベランダをプランニングするためには、まず、誰が、いつ、どのように使い、過ごしたいのか、目的や使用方法をイメージすること。その上で、住まい全体で検討することが大切だ。特に室内空間とのつながりには十分に配慮したい。たとえば、リビングやダイニングと一体化するように設けることで、くつろぎや食事など多様な使い方が可能。個室や子ども室とつなげれば、遊びや趣味の空間として利用することもできる。バルコニーやベランダを介して個室へ行き来できれば、コミュニケーションの場ともなるだろう。

どのようなプランとする場合でも、室内外のつながりが生まれるような工夫が必要だ。たとえば、LIXILの岩谷さんは、「段差がなくフラットのままつながることができる窓サッシを選ぶことで一体感が生まれます」とアドバイスする。窓が見えなくなる全開口のサッシ、1枚ガラスの大開口スライディング窓などであれば、外とのつながりを感じることができるだろう。

また、「床材を居室のフローリングカラーと同系色を選ぶことで室内とバルコニーの連続性が高まります。段差や凹凸のないノンレールサッシと合わせて、2階居室からフラットにバルコニーとつなぐ納まりが可能なバルコニー商品もあります」とYKK APの藤田さんは話す。

室内と行き来しやすく、開放的なバルコニーやベランダを作るためは、開け放すことができるスタイルの窓、床の段差の解消、床素材の連続性などがポイントになる。

(上)ベランダやバルコニー空間へ段差無くフラットのままつながることが出来る。[ワイドウィン サイドスライドHKK] LIXIL  (下)下枠ノンレールサッシとの組合せで、2階居室からバルコニーへフラットにつなぐことができる。[ルシアスバルコニー] YKK AP(上)ベランダやバルコニー空間へ段差無くフラットのままつながることが出来る。[ワイドウィン サイドスライドHKK] LIXIL  (下)下枠ノンレールサッシとの組合せで、2階居室からバルコニーへフラットにつなぐことができる。[ルシアスバルコニー] YKK AP

シェードやオーニングなど、日差しを遮る工夫を

ベランダやバルコニーは、南面に設置されているケースも多いため、快適に過ごすためには夏場の強い日差しを遮ることも重要なポイントだ。最近では、日本で昔から用いられている簾(すだれ)やよしずのような機能を持つ、外付けシェード(スクリーン)やオーニングなどの商品も充実してきている。

YKK APの藤田さんは「外付けシェードは、窓に対して垂直に遮蔽もできますが、バルコニーの手すりとつないで斜めに設置する事が可能です」と話す。斜めに設置されたスクリーン下に生まれる日陰スペースであれば、心地よく過ごすことができるだろう。

また、「オーニングは、リモコンでの開閉、オプションではセンサーで開閉することも可能。室内に居ながらも日差しをコントロールする事ができるので使い勝手もいいでしょう。近年、東京では気温30度を超える日が55日もあり、熱中症対策としても外付けシェードやオーニングは必須アイテムです」とLIXILの岩谷さん。

省エネルギーが叫ばれる中、外付けシェード(スクリーン)は室内温度の上昇を抑え、エアコンなどの電気使用量を低減することにもつながるため注目のアイテムだろう。視線を遮ることができるのもメリットだ。また、水平にせりだすオーニングは直射日光を調整することもでき、雨よけのため防水加工が施されているタイプもある。バルコニーやベランダの使用方法に合わせ、適するタイプを取り入れたい。

(左上)手すりに引っ掛けるだけで快適な空間が生まれる。[スタイルシェード] (左下)季節や時間に合わせて日差しを遮ることができる。[オーニング(彩風)] LIXIL  (右上)さまざまな住宅に合わせやすいカラーの洋風すだれ。バルコニーだけでなく1階にも。[アウターシェード] (右下)日差しを遮るとともに、カラフルな生地を選べば、外観に洋風のアクセントにもなる。[パラソリア] YKK AP(左上)手すりに引っ掛けるだけで快適な空間が生まれる。[スタイルシェード] (左下)季節や時間に合わせて日差しを遮ることができる。[オーニング(彩風)] LIXIL  (右上)さまざまな住宅に合わせやすいカラーの洋風すだれ。バルコニーだけでなく1階にも。[アウターシェード] (右下)日差しを遮るとともに、カラフルな生地を選べば、外観に洋風のアクセントにもなる。[パラソリア] YKK AP

プライバシーの確保や安全性も考慮。1階への配慮や防犯面に注意

心地よく過ごすためには、プライバシーの確保も重要だ。バルコニーやベランダの位置や大きさなど周辺環境に配慮してプランニングすることは基本だが、近隣からの視線など気にせず過ごすことができるように、前述の外付けスクリーン(シェード)を設置したり、高さのある手すり部分の面材などを取り入れるのもいいだろう。

幼いお子さんがいる場合は、転落防止など安全面への配慮も忘れずに検討したい。手すりの高さや隙間の間隔などは法律で定められているが、 YKK APの藤田さんは「手すりからの乗り越えにくくするため、手すりの高さを1,200mm以上のタイプ、手すりの格子間隙間を90mm以下のタイプを追加し、お選びいただけます。また、隙間調整材をオプション設定した商品なども揃えています」と話す。家族構成によっては、商品を選ぶ際に確認しておきたいポイントだろう。もちろん、日頃の暮らしの中でも、「バルコニーやベランダにテーブルや椅子などを置くと、それが足掛かりとなり、子どもの落下へとつながる可能性もあるので注意が必要です。幼いお子さんのいるご家庭の場合は、使用した後は放置せず、屋内などに収納するようにしましょう」と藤田さんはアドバイスする。

また、プランニングの際には、防犯面も注意しておきたい。侵入者が上ってくることができないようなつくりとすることは基本だが、「2階のバルコニー・ベランダ空間に侵入者が発生した場合、外からすぐに発見できるような透過性のある面材パネルもおすすめです」とLIXILの岩谷さん。人を感知するセンサー付きの照明の設置を検討してもいいだろう。

その他、忘れがちなのがバルコニーの設置によって妨げられる1階居室への採光だ。LIXILの岩谷さんは、「採光がとれなくなる場合は、スノコ状の床を選ぶことで1階への光を確保することができます。また、最近では、室内の換気を意識される方が増えていますが、スノコ形状であれば、ベランダバルコニー空間の空気だまりを排除し、より効率的に空気を循環させることも可能です」と話す。

バルコニーやベランダをリフォームする際には、設置条件に合わせて検討すること。後付けで設置可能なリフォーム向けの商品も揃っているので、バルコニーやベランダの使用目的に合わせてプランニングしたい。

エクステリア商品としての売れ筋デザインは、YKK APの藤田さんによると、「重厚感あるデザインで、格子の間から日の光や風も取り入れることもできる横格子。玄関ドアや門扉、フェンスなどとトータルコーディネートが出来る木目調も人気です」。 また、LIXILの岩谷さんは、「天然木に由来した木目を際立たせたデザインが注目されています。機能的な点では、風と光は通し、視線を遮るルーバータイプの面材が人気です」と話す。

バルコニーやベランダは、間取りプランはもちろん外観デザインにも大きく関わるので、単体で考えるのではなく、用いるアイテムなどを含め全体のバランスを考慮したい。外まわりの建材アイテムとコーディネートできるシリーズなども揃っているので、ショールームなどで確認することも大切だ。

取材協力/ LIXIL  YKK AP

(左上)「子どものベランダからの転落防止のための手すりの安全対策」で推奨する仕様に対して対応可能。[ルシアス バルコニー」(柱建式) たて格子隙間90mmと後付手すり仕様] (左下)手すりやフェンス、玄関扉などのカラーや同じテイストのデザインを取り入れ、統一感のある外観に。[ルシアスシリーズ] YKK AP  (右上)アルミ床+床化粧材で準防火地域・22条地域対応。タイルタイプなど床材も揃う。[ビューステージSスタイル「ジョーブ床」] (右下)スリット状の床材であれば、暗くなりがちな階下へも明るい光を導くことができる。[ビューステージSスタイル「スリット床」] LIXIL(左上)「子どものベランダからの転落防止のための手すりの安全対策」で推奨する仕様に対して対応可能。[ルシアス バルコニー」(柱建式) たて格子隙間90mmと後付手すり仕様] (左下)手すりやフェンス、玄関扉などのカラーや同じテイストのデザインを取り入れ、統一感のある外観に。[ルシアスシリーズ] YKK AP  (右上)アルミ床+床化粧材で準防火地域・22条地域対応。タイルタイプなど床材も揃う。[ビューステージSスタイル「ジョーブ床」] (右下)スリット状の床材であれば、暗くなりがちな階下へも明るい光を導くことができる。[ビューステージSスタイル「スリット床」] LIXIL

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