東京都交通局とAirbnbがコラボ。東京さくらトラム沿線の魅力を外国人観光客に伝える
日本政府観光局のデータによると、2018年の訪日外国人は3,119万人。2013年が1,036万人なので、わずか5年でおよそ3倍となった計算だ。最近はリピーターとして来日する旅慣れた外国人が、メジャーなスポットだけでなく、より深く日本を感じられるディープなスポットに興味を持ち、訪れているらしい。
このような外国人が興味を持つような取り組みを、東京都交通局とAirbnbが共同で2019年1月17日から開始。それが、東京さくらトラム(都電荒川線)沿線の暮らしを体験できる「TODEN LIFE TOURISM」だ。沿線で暮らす人々が、その飾らない暮らしや生活文化、遊びなどを外国人観光客に体験してもらうプログラムとなっている。
そこでこのプログラムの内容や誕生の経緯、今後の課題などを東京都交通局の吉岡俊二さんにうかがった。
都営交通のイメージアップと、都電荒川線の愛称決定のPRも兼ねたプロジェクト
ポスターや動画、各種イベントでPRを行うなど、日常の足としてより多くの人に都営交通に親しみを感じてもらうためのイメージアップ戦略を担当している吉岡さん。「TODEN LIFE TOURISM」のプロジェクトは2018年9月にスタートしたという。
「都電荒川線は2017年4月28日から東京さくらトラムという愛称を決定しました。そのPRも兼ねたプロジェクトになります。以前は銀座や渋谷といったメジャーなスポットでの買い物が外国人観光客に人気だったようですが、最近は『ディープな場所を訪れて、より深く日本を知りたい』という方が増えてきました。そこで、外国人観光客に昔ながらの日本の暮らしが今も感じられる、東京さくらトラム沿線をPRしてはどうだろうと考えました」
外国人観光客向けの体験プログラムは民泊仲介サイトAirbnbを通じて提供されている。同社とのコラボは広告代理店の提案だったという。
プロジェクトを担当した吉岡さんが感じる、東京さくらトラムの魅力とは何だろうか?
「やはり路面電車ならではの独特の雰囲気ではないでしょうか。一般的な電車よりも速度が遅く、また目線も地上に近いため、まちの雰囲気を感じやすいと思います。沿線には、東京でありながらどこか懐かしい風景が広がり、日本らしさを感じる暮らしが息づいています。また、さくらトラムの名前の通り、飛鳥山周辺などに咲き誇る桜や、ところどころに咲いているバラの花などの美しさも魅力でしょう」
エリアの魅力を伝える体験プログラムを用意。ホストも随時募集中
「TODEN LIFE TOURISM」の体験プログラムは、2019年3月末の取材時点で7種類。ミニチュア小物や人形制作に用いる材料を使ったカードケースや巾着袋の制作、三味線の演奏体験、ひな人形づくり、小物に手描き友禅を施す体験、お好み焼きやラーメンづくり体験など、日本をより深く知りたいと望む外国人観光客が興味を持ちそうな体験プログラムが用意されている。
「料金設定は各ホストの方にお任せしています。皆さん『儲けよう』というスタンスではなく『日本の文化を伝えたい』というスタンスのため、良心的な料金設定になっているのも特長です」
体験プログラムを提供してもらうホスト探しは、まず荒川区の観光振興課を訪ねて紹介をしてもらい、皆さんに個別に打診をしたという。
「本業の合間に体験プログラムを開催してくださっている方がほとんどですから、大変お忙しい中『面白そう』『自分たちの事業をもっと広く知ってもらいたい』と協力してくださったホストの方々に感謝しています。ホストは随時募集中で、北区や豊島区にも協力を要請しているところです」
さくらトラム沿線は魅力の宝庫。ホストとしてその魅力を伝えて欲しい
今後の課題として「ホストやプログラムの増加」と「外国人へのPR」、さらに「インターネットやパソコンを使わずに参加できるシステム構築の必要性」などを挙げる吉岡さん。
「最重要課題は、体験プログラムを提供してくださるホストの方とプログラムの数を増やすこと。もっともっと沿線の生活文化を知っていただき、よりバラエティに富んだ体験を外国人の方に楽しんでいただきたいと考えています。国内ではなく海外向けになりますが、PR活動も今以上に行っていきたいですね」
ホストにはそれぞれ本業があるため、特に仕事の繁忙期などゲストとホストの時間的なマッチングが難しいことも課題のひとつ。また、現状では体験プログラムは1ヶ月先までしか予約ができないため、ゲストがより参加しやすいように、もう少し先まで予約ができるようにしたいとも話す。
体験プログラムのホストは随時募集を行っている。東京さくらトラム沿線の方へのメッセージをうかがった。
「外国人の方とコミュニケーションが上手に取れるか心配される方もいらっしゃると思いますが、現在ホストとしてご協力いただいている皆様も片言の英語やボディランゲージなどで楽しく体験プログラムを提供してくださっています。『外国人との交流がとても楽しい』『皆さん興味を持って来てくださっているので、思っていた以上にコミュニケーションが成り立つ』などとの感想が聞かれます。
登録料金はかかりませんので、沿線の魅力を発信することに興味のある方はぜひ試しに登録してはいかがでしょうか。例えば『飲み屋巡り』とか『市場体験』など、モノづくりなどに限らず、興味のあることで結構です。ホストとして外国人と触れ合ってみませんか」と吉岡さん。
より深く日本を知りたいと考える外国人にぴったりと言える「TODEN LIFE TOURISM」。沿線の方は東京さくらトラムエリアの知られざる奥深い魅力を発信する立場から、ホストとして参加してみてはいかがだろう。
■TODEN LIFE TOURISM
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/01/17/13.html
■PROJECT TOEI(東京都交通局ホームページ)
https://project-toei.jp/
公開日:






