2017年4月より建築物の省エネ適合判定が義務化
資源が乏しい日本。特に東日本大震災以降は省エネ対策が喫緊の課題となっている。また、日本におけるエネルギー消費量の内訳を見た場合、産業と運輸の消費量は減少しているものの、建築物だけは増加しており、全体の3分の1を占めている。そのような中でも、建築物部門の消費量は増加傾向にあり、対策強化が必要不可欠な状況だ。
そこで2017年4月、建築物の省エネ性能の向上を図るため、建築物省エネ法に基づく省エネ適合判定(省エネ適判)が義務化され、本格的に動き出した。
従来の「省エネ法」から変更された大きな点の一つとして、2000m2以上の大規模な非住宅建築物(特定建築物)に対する適合義務が挙げられる。特定建築物を新築したり改築する際、現在の「省エネ法」では「届出義務」に留まっていたが、今回の「建築物省エネ法」では、建築物エネルギー消費性能適合性判定(省エネ適合性判定)、いわゆる「省エネ適判」が必要となるのだ。
今回は、4月に施行された建築物省エネ法の規制措置について紹介したい。
一定規模以上の建築物は省エネ基準に適合していないと建てられない
建築物省エネ法の内容は、大きく分けて"規制措置"と"誘導措置"に分けられる。今回の省エネ適判は、前者に含まれるものだ。
適合義務では、平成28年省エネ基準の適合が義務づけられ、所管行政庁などによる適合判定通知書がないと建築確認申請の確認済証が交付されない。建築確認申請とは、建物を建てる建築主が所管行政庁や民間の指定確認検査機関へ確認申請書を提出し、建築基準法などに建物が適合しているか確認する制度だ。この際に交付される確認済証がないと工事を着工することはできない。つまり、2017年4月以降、一定規模以上の建築物は、平成28年省エネ基準に適合していないと新築や増改築できなくなったというわけだ。
300m2未満の住宅にも努力義務
一定規模未満の建築物にも制約はある。非住宅で床面積が300m2以上2000m2未満のものと、住宅で300m2以上のものには届け出義務が生じる。これらの規模の建築物は、着工の21日前までに所管行政庁へ省エネ性能を届けなければならない。その内容によっては指示や命令を受けることになる。
非住宅、住宅問わず床面積が300m2未満の建築物は、平成28年省エネ基準の適合に対して努力義務となっている。ただし、年間150戸以上供給する住宅事業者(住宅トップランナー)に対しては必要と認める場合、勧告、命令もある。
平成28年省エネ基準とは、2つの基準で建物の省エネ性能を評価する制度だ。1つは窓や外壁などの外皮性能(断熱性能など)の評価。もう一つは太陽光発電システムやエアコンといった設備機器による一次エネルギー消費量の評価。どちらも一定基準を上回ることで、省エネ適合判定をクリアできることになる。
これを機会に省エネ住宅の積極的な検討を
地球環境にやさしく、快適に暮らせ、しかも光熱費の削減にもつながる省エネな建築物。誰もが望むものだろう。しかし、建築費などの問題ですぐ普及するものではない。
そこで建築物省エネ法では、2つの誘導措置を講じている。1つは容積率特例。省エネ性能向上のための設備について通常の容積率を越える部分は不算入とする。つまり、省エネ適合判定をクリアする建物は、通常よりも広く建てることができる可能性がある。
もう一つは省エネに関する表示制度だ。住宅、非住宅問わず省エネ適合判定をクリアした建物は、基準適合認定のマークなどを表示することが認められる。
今現在、一般的な住宅(300m2未満)に省エネ適判の適合義務はない。しかし、このような認定マークがあれば売却や賃貸時のメリットとなるはずだ。
さらに、国は2020年以降の住宅における義務化も検討している。地球温暖化の影響が目立つようになった昨今。省エネ対策はけっして他人事ではない。また、住宅においても省エネ適判の適合が義務化されれば、どこの建築依頼先で建てた家でも、快適で省エネなものになる。私たち消費者側も、これを機会に省エネな家を積極的に検討するべきではないだろうか。
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