5年ぶりに待機児童数が増加

1995年に国が初めて発表してから20年以上経っても、一向にゼロになる気配のない待機児童数。今年(2016年)2月に『保育園落ちた日本死ね!!!』と追い詰められた気持ちを綴ったブログが話題になったことは記憶に新しいだろう。

厚生労働省の調べによると2015年4月の待機児童数は2万3,167人で5年ぶりに増加した。ちなみに同10月は4万5,315人。10月の方が多い理由は、例年4月以降も育児休暇明けなどによる保育の申し込みが行われるが、保育の受け皿拡大の多くが4月に向けて行われるので、年度途中の申し込みは入園できないケースが増えるからだ。

4万5,315人という数はけっして少なくない。ところが実際にはこれよりも数倍以上の待機児童が存在するという声が多い。なぜなら、国のいう待機児童数には、「認可保育所」に入所できなくて「認可外保育所」に入所した人数はカウントされないからだ。認可外とは、施設の広さや保育士等の職員数と言った認可基準をクリアできないなどの施設だ。つまり、本当は認可保育所に通いたいのに、それができないので仕方なく認可外に通っているケースなどは待機児童数に入らないのだ。厚生労働省が公表するデータを集計すると、潜在的な待機児童の数はわかっているだけでも約6万人となる。

2015年4月の待機児童数は5年ぶりに増加した。しかし、潜在的な待機児童数はこの数倍以上(出典:厚生労働省)2015年4月の待機児童数は5年ぶりに増加した。しかし、潜在的な待機児童数はこの数倍以上(出典:厚生労働省)

働く女性の増加に追いつけない保育施設数

では、少子化が問題となる日本で、なぜ待機児童数が減らないのか。様々な要因があるがひとつの理由としては女性の社会進出があげられる。長引く不況で夫の収入がなかなか増えない一方で、子どもの教育費は年々増えるという社会事情もありそうだ。また、1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性が働きやすくなり、仕事に誇りを持つなどで結婚・出産後も職場を離れたくない人が増えていることも大きいだろう。

内閣府男女共同参画局のデータを見ると、共働き世帯の数は1997年に片働き世帯の数を抜き、2015年は片働き世帯が687万世帯に対し、共働き世帯は1,114万世帯となっている。また、子育て世代である30~34歳の女性の労働力人口比率は、2000年は57.1%だったが、2015年には71.2%に増加している。現在は働く母親が当たり前の時代。そのため、子どもの総数が減っても、保育施設に入りたい数は増え続けているわけだ。

日本の共働き世帯の数は1997年(平成9年)に片働き世帯の数を抜き、2015年(平成27年)は片働き世帯が687万世帯に対し、共働き世帯は1,114万世帯となっている(出典:内閣府男女共同参加局)日本の共働き世帯の数は1997年(平成9年)に片働き世帯の数を抜き、2015年(平成27年)は片働き世帯が687万世帯に対し、共働き世帯は1,114万世帯となっている(出典:内閣府男女共同参加局)

約40万人分の保育の受け皿を確保する「待機児童解消加速化プラン」

働く母親が増える一方で、なかなか増えない保育所。そこで政府は、2013年4月から「待機児童解消加速化プラン」をスタートさせた。これは以下の実現を目指すものだ。

・2013年~14年度を「緊急集中取組期間」として約20万人分の保育施設を集中的に整備できるよう、国として万全な支援を用意。

・2015年~19年度を「取組加速期間」として更に整備を進め、上記と合わせて、潜在的なニーズを含め、約40万人分の保育の受け皿を確保。

・保育ニーズのピークを迎える2017度末までに待機児童解消(ゼロ)を目指す。

具体的な取り組みとして以下の「5本の柱」を打ち出している。

1. 賃貸方式や国有地も活用した保育所整備
保育所建築の際にネックとなりがちなのが建設地の確保。特に待機児童が集中している都市部には保育所を作る土地が不足している。そこで国有地を活用したり、賃貸でも保育所を設置できるよう援助する。

2. 保育を支える保育士の確保
保育所の不足と同時に、そこで働く保育士の不足も深刻化している。理由のひとつとして仕事のハードさに対し、給与が低いことがあげられるようだ。そこで処遇の改善や認可外保育施設などで働く無資格者の保育士資格の取得を支援する。

3. 小規模保育事業の支援
確保できる土地の面積が狭くても保育所の運営がしやすいように0-3歳未満児を対象とした、定員が6人以上19人以下の少人数で行う小規模保育事業の運営費などを支援する。

4. 認可保育所を目指す認可外保育所の支援
認可保育所に移行する意欲がある認可外保育所の運営費、移転費、改修費などを支援し、5年間で認可保育所に移行できるように計画。

5. 事業所内保育所の支援
企業などの事業所内に設ける保育施設は、従来自社従業員の子どもが5割以上いることが条件だった。それを1人以上に緩和する。

厚生労働省は、これらの施策に関して今まで行ってきたこととの違いを「受け皿確保など相当高い数値目標を掲げ、それに応じた財源を確保した」とコメントしている。また、内容としては、2013年5月に「待機児童ゼロ」を宣言した神奈川県横浜市が行ったことを参考にしているという。

約31万人の受け皿を用意しても減らない待機児童

政府は「待機児童解消加速化プラン」によって、2013年から2015年の3年間で保育の受け皿は約31万4,000人分増えたとしている。おそらく目標である2017度の40万人分の保育の受け皿確保は達成するだろう。

ところが実際には最初に述べたように待機児童数は一向に減る気配がない。同プランなどによって認可保育所にいくらか入りやすくなったために、今まであきらめていた潜在的なニーズが顕在化してきたからだろう。つまり、待機児童問題は国が考えているよりも、さらに深刻だということだ。今後は現状の正確な把握と同時に、今まで以上の手厚い施策を期待したい。

「待機児童解消加速化プラン」によって保育の受け皿は約31万4,000人分増えた。ところが実際には待機児童数は一向に減る気配がない。待機児童問題は国が考えているよりも、さらに深刻だ(写真はイメージ)「待機児童解消加速化プラン」によって保育の受け皿は約31万4,000人分増えた。ところが実際には待機児童数は一向に減る気配がない。待機児童問題は国が考えているよりも、さらに深刻だ(写真はイメージ)

2016年 10月13日 11時06分