昨年に引き続き2回目の開催となるエコハウス・アワード

東京・浜松町のアジュール竹芝で開催された「エコハウスアワード2017」の表彰式。表彰式と併せて、パッシブ・ジャパン設立7周年記念大会、基調講演として産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター 櫻井啓一郎氏による再生可能エネルギーの動向が語られた東京・浜松町のアジュール竹芝で開催された「エコハウスアワード2017」の表彰式。表彰式と併せて、パッシブ・ジャパン設立7周年記念大会、基調講演として産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター 櫻井啓一郎氏による再生可能エネルギーの動向が語られた

地球温暖化や資源の有効活用を背景に、住宅の省エネと快適性の両立は重要なテーマの一つである。
増え続ける家庭のエネルギー消費量に対し、2017年4月1日からは「建築物省エネ法」が施行され、2020年までには住宅を含む全ての新築の建築物において、省エネ基準の適合の義務化が予定されている。
とはいえ、日本の住宅性能は他の先進国と比べて遅れをとっている。2012年の国土交通省の公表データによると、既存住宅5,760万戸のうち、1999年に制定された「次世代省エネ基準」の基準を満たす住宅は5%に留まっている。さらに、オイルショック後の1980年に制定された「省エネ法」の基準さえ満たしていない住宅においては、39%も存在しているのだ。

国内では既に、低炭素住宅やZEH(ネットゼロエネルギーハウス)など、一定の省エネ水準を満たす住宅が登場しているが、「次世代省エネ基準」の3倍近い断熱性を有し、躯体性能の基準が世界で最も高いといわれるのが「パッシブハウス」である。パッシブハウスは、1991年にドイツのパッシブハウス研究所で確立された省エネ基準で、年間の暖房負荷と冷房負荷がそれぞれ15kWh/m2以下を満たす住宅を指す。
現在、日本で唯一ドイツのパッシブハウス研究所が窓口となっている「一般社団法人パッシブハウス・ジャパン」が主催する「エコハウス・アワード」の表彰式が、昨年に引き続き2017年3月17日に開催された。
省エネルギーで、快適性やデザイン性を備えた住宅を表彰する同アワードには、一次審査を通過した17作品がノミネートされ、ウェブ投票、イベント当日の一般投票と審査員による結果が発表された。

最優秀賞は中国地方初のパッシブハウス「倉敷の家」

今回、最優秀賞には、倉敷木材株式会社(岡山県)が設計・施工した「倉敷の家」が選ばれた。同住宅は、中国地方初のパッシブハウス認定住宅として2016年11月に完成。特徴は、海外の高額な設備ではなく、国産標準仕様の樹脂サッシや換気システム、グラスウール断熱材などで構成されている点だ。建物の暖まりやすさを示す年間暖房負荷は、8.03kWh/m2と、パッシブハウスの燃費基準の条件である15kWh/m2以下を実現している。

審査員の一人であるパッシブハウス・ジャパン代表理事の森みわ氏は、「倉敷の家」の選定理由について、2つのポイントを挙げた。
「これまでパッシブハウスというと、断熱性の高い木製輸入サッシなど高額な部材に頼ってしまいがちでしたが、倉敷の家は、何一つ力ずくの部分がない。非常にシンプルで"誰にでもどこでも買えるパッシブハウス"という姿勢を貫かれており、今後、パッシブハウスを普及させていこうとする中で、次に続いていく人に勇気を与える存在になるのではと思いました。
もう一点、断熱などの高性能化によってコタツなどの季節家電や冬用の寝具などが不要になることを見越し、引越す前の家よりもあえて小さくしている点にも注目しました。"家は大きい方がいい"と、広さを求める施主様も少なくない中、ライフスタイルの変化を先読みしてプランニングされた点は素晴らしいと思いました。」

現在、この住宅に家族と共に暮らし、建築にも携わった倉敷木材株式会社 営業課長の福本邦重氏は、
「エントリーされている他の作品と比べても、何か特別なものを使っていたり、挑戦的なことをしているかと言われるとそうではありません。限られたコストの中、自分の家を建てるにあたり考えたことは、"中国地方で初となるパッシブハウスを建てたい"ということでした。現在は、朝起きてからも薄着で過ごせるようになり、友達が多く遊びにくるなど暮らしに変化が現れています。本当に建てて良かった」と語る。

なお、その他の部門賞は以下の通り。
■パッシブハウスゾーン優秀賞:「大間の家」(愛媛県松前町)
 設計者:キーアーキテクツ 施工者:アーキテクト工房pure
■パッシブハウス・ジャパン推奨ゾーン優秀賞:「Real ZEH 能代の家」(秋田県能代市)
 設計者:西方里見 施工者:池田建築店
■地域トップランナー基準優秀賞:「国見ヶ丘の家」(宮城県仙台市)
 設計者:菊池佳晴 施工者:キクチ

(写真上)最優秀賞を授賞した「倉敷の家」外観。国産標準仕様の樹脂サッシや換気システムで構成することによって、坪単価83万円で、年間暖房負荷8.03kWh/m2aという、パッシブハウス認定取得を目指せるレベルを実現した<BR />
(写真下左)受賞の喜びを語る倉敷木材株式会社 営業課長の福本邦重氏 (写真下中央、下右)「倉敷の家」の内観。30坪のコンパクトな建物ではあるものの、内と外が一体感によって開放感が高いつくりになっている(写真上)最優秀賞を授賞した「倉敷の家」外観。国産標準仕様の樹脂サッシや換気システムで構成することによって、坪単価83万円で、年間暖房負荷8.03kWh/m2aという、パッシブハウス認定取得を目指せるレベルを実現した
(写真下左)受賞の喜びを語る倉敷木材株式会社 営業課長の福本邦重氏 (写真下中央、下右)「倉敷の家」の内観。30坪のコンパクトな建物ではあるものの、内と外が一体感によって開放感が高いつくりになっている

リノベーション賞は入母屋建物の「稲沢の家」

リノベーション賞を受賞したのが、「稲沢の家」(設計者:株式会社Eeeworks 施工者:有限会社モリケン)だ。
愛知県稲沢市にある入母屋造りの木造2階建ての建物を、間仕切りの変更や断熱改修、躯体の劣化対策、耐震改修するなど大掛かりな改修となった。施主の「日本家屋らしい感じだけでなく、モダンな住まいを。もちろん暖かく」という要望に対し、太鼓梁や小屋組みをこのまま天井内に隠していまうのはもったいないと、2階の小屋組みを露出する仕上げを実現したプランとなった。

ゲスト審査員として選考にあたったLIFULL HOME'S 総研所長 島原万丈氏は、
「最初にこの素晴らしい建物のビジュアルを見たとき、本当にリノベーションでやったのかと信じられませんでした。今、このような広く立派な住宅が次々と壊されている現状があります。広い敷地を分割して売却するケース、そして古い家が住みにくいという理由で受け継いだ方が壊してしまうケースが多いわけです。国内でもトップクラスの住宅性能まで引き上げ、しかもこの家屋や庭園などの風情も残すことできるという、いいことづくめな作品だと思います。こうした作品が世に出てくることは、エコハウスの業界にとって良い傾向だと思っています」と語った。

またSNSでの人気投票を集めたウェブ人気賞には、以前、LIFULL HOME'S PRESSでも取材した「暮らしかた冒険家 札幌の家」(棟晶株式会社)が受賞した。(※「断熱気密リノベーションを施し、オフグリッド化に向けさらに進化した「暮らしかた冒険家 札幌の家」)

その他の特別賞は以下の通り。
■意匠賞:「葉山・傾斜地の家」(神奈川県三浦郡葉山町)
 設計者:有限会社エイチ・ツー・オーデザインアソシエイツ 施工者: 大同工業株式会社

(写真上)建築地の周囲は、築25年前後の立派な入母屋造りの建物が多い地域だという。建物と同様に立派な日本庭園にも手を加え、取り込みたいところを見極め、テラスとの間仕切りには全面引込みサッシを引き込んでいる<BR />
(写真下左、下中央)太鼓梁や小屋組みを露出する仕上げに (写真下右)設計を担当した株式会社Eee works 日下洋介氏(写真上)建築地の周囲は、築25年前後の立派な入母屋造りの建物が多い地域だという。建物と同様に立派な日本庭園にも手を加え、取り込みたいところを見極め、テラスとの間仕切りには全面引込みサッシを引き込んでいる
(写真下左、下中央)太鼓梁や小屋組みを露出する仕上げに (写真下右)設計を担当した株式会社Eee works 日下洋介氏

「省エネ性」が家づくり、家選びの一つの基準になる日も?

総評として、建築家で東北芸術工科大学教授の竹内昌義氏は、
「今後、日本の家づくりはエネルギー問題抜きでは考えられません。住宅に対するエネルギーの意識が拡がる中、ノミネート作品を見て、"確実に進歩すること"が大切だと感じました。エコハウスを多く普及させることや技術的な挑戦をする姿勢など、進歩の形にも様々な方法が多くあります。ただ、その根本にあるのは、"いかに日本のエネルギー消費を減らして快適に暮らすか"というシンプルな問いです。大賞の『倉敷の家』のように、どうやったらパッシブハウス基準を国産の設備で実現できるのかを突き詰める姿勢、探究心が大切だと改めて感じました」と語る。

住宅の省エネを考える上で、単に"住宅のエネルギーをゼロにすること"だけが目的ではない。太陽光発電などの機器に依存しながら省エネを維持させるだけでなく、まずは断熱性などの建物の基本性能をいかに引き上げるか、そして日射熱や自然風などの自然エネルギーをいかに最大限に取り込むかという、"家づくり"の基本に改めて着目することの重要性を改めて認識させられた表彰式だった。

「エコハウス・アワード2017」受賞作品
http://award.passivehouse-japan.org/2017/results/

「一般社団法人パッシブハウス・ジャパン」
http://passivehouse-japan.org/

前列がエコハウス・アワード2017の受賞者、後列が審査員一同。昨年と比べて、より全体性能が高い作品が集まったエコハウス・アワード2017。今回から、省エネ性能や意匠性に加え、施工価格の提示によるコストパフォーマンスも評価の対象となった前列がエコハウス・アワード2017の受賞者、後列が審査員一同。昨年と比べて、より全体性能が高い作品が集まったエコハウス・アワード2017。今回から、省エネ性能や意匠性に加え、施工価格の提示によるコストパフォーマンスも評価の対象となった

2017年 05月13日 11時00分