世界の主要都市に比べ国際線の就航先が少ない羽田空港
現在の日本は人口減や少子高齢化の時代に突入し、今後の経済や社会の維持・発展には諸外国との結びつきが欠かせない。このような背景から政府は外国人観光客の誘致に力を入れている。その結果2015年の同観光客は1,973万7,000人に達し、2020年に2,000万人という政府目標をほぼ前倒し達成した。
しかし、肝心の国の玄関口となる東京の空港(羽田、成田)は、世界の主要都市に比べ国際線の就航先が少ない。ロンドンの343都市、パリの270都市に対し、東京は92都市だ。
2020年の東京五輪開催、さらなる外国人観光客の誘致、首都圏の国際競争力強化、そして国内線と国際線の連係強化。政府はこれらのために羽田空港の国際線増便は欠かせないとしている。しかし、すでに24時間稼働している羽田空港。従来と同じように東京湾上空を経路とし、海側から到着・出発とする方法では、1時間当たりの発着回数は現行の80回から82回までしか増やせない。そこで現在検討が進んでいるのが都心上空を飛行機が往来する新飛行ルートの運用だ。
2020年の東京五輪開催まで発着回数を約9万9000回に
今まで都心上空の飛行が実現できなかった理由は、ルート下に住宅などの建物が多いことはもちろん、このエリアが通称「横田空域」と呼ばれる制約があったことも大きい。これは東京都、神奈川県、埼玉県、栃木県、群馬県、新潟県、山梨県、静岡県、長野県の1都8県という広大な空域の航空管制が在日米軍の横田基地によって行われているというもの。民間航空機がこの空域を飛行するには、一便ごとに許可を申請しなければならないため、実質飛行できない状態だった。ところが2008年9月からの横田空域削減に伴い、羽田空港から西方面への出発機の新ルートの設定が可能になった。そこで政府は羽田空港のルートや滑走路の利用方法を見直すことで、現在の年間約6万回の発着回数を2020年の東京五輪開催までに1.7倍の約9万9000回にしたいとしている。
気になるのは「騒音」「落下物」「地価の下落」
ここで課題となるのが、新ルートの下で暮らす人々の生活だ。主なものとしては騒音、落下物、地価の下落といったところだろう。これらに対し管轄する国土交通省は次のような対策を示している。
【騒音】
航空機の騒音レベルは高度や機種によって異なる。着陸時の1000フィート(305m)でのレベルは80dB前後(窓を開けた地下鉄の車内と同等)。対策としては静音設計の航空機の利用料金を安くする、新ルートの運用時間を制限する、一定の地域の住宅に対し防音サッシやエアコンの設置工事を行うことなどを検討している。また、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(騒防法)」により、緩衝緑地帯の整備や土地の買い入れ、建物の移転補償、学校や病院などの防音工事の助成なども行う。
【落下物】
航空機からの落下物としてはネジ、ボルトなどの部品や氷塊などがある。氷塊の落下は航空機に飲料水や手洗い後の水を空中で放出するためだ。通常は水蒸気となるが凍結防止用ヒーターの故障などにより氷塊となり、落下することもあり得る。たとえば、成田空港周辺において過去10年間で18件の落下物が確認されている。このような落下物に対し国土交通省は、継続的なマニュアルの見直しといった着実な対策、落下物があった場合の速やかな調査・分析、その結果をもとにした対策、航空会社やメーカーに対する厳しい監督などを行っている。また、万一落下物があったときは該当航空会社が特定できなくても賠償することになっている。
【地価の下落】
騒音が発生し、少ないながらも落下物の可能性があるとなれば地価の下落を心配する人もいるだろう。しかし、国土交通省によると地価は、騒音や落下物の可能性だけではなく人口の増減や土地の利用計画など様々な要素によって決定するので、新ルートとの直接的な因果関係を見出すことは難しい、としている。場合によっては羽田空港の利便性が上がることで周辺地域の地価が上がることもあり得るというのだ。したがって、今のところ地価の下落に対する救済措置は検討されていない。
施設の整備やルートの確定はもう少し先
このように利便性の向上を期待できる一方で、周辺住民にとっては心配事もある羽田空港の新ルート運用。実は今年(2016年)のはじめに住民との話し合いは終了し、その結果を考慮した修正案「羽田空港機能強化に係る環境影響等に配慮した方策」も7月に公表されている。今後は、3年ほどかけて離着陸時の誘導アンテナなど設備の整備を行う。とはいえ、最終的なルートに関してはまだ確定しておらず、たとえば大田区では区長から国土交通省航空局長へ飛行経路および高度設定の見直し等の要望が出されている。
機能強化方策の進捗状況については、今後も引き続き、関係自治体に情報提供を行うとしており、機能強化方策の実現に向け、ホームページや特設電話窓口の活用、市民窓口の設置などさまざまな手法を組み合わせた総合的なコミュニケーションを進めという。また、新たに騒音測定局を設置すること等により、新飛行経路の騒音影響に関する監視および情報提供を行っていく。
2020年までに運用がはじまる羽田空港の新ルート。利便性の向上はもちろんだが、周辺住民の理解を十分得たうえで運用してほしい。
なお、くわしい状況の確認や意見の受付は下記サイトで行っている。
「羽田空港のこれから」
http://www.mlit.go.jp/koku/haneda/





